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18TRIP 夕班メインストーリー感想


 読んだので感想を書き留めておく。

 ・プロローグ
 ・夕班メインストーリー
 ・夕班区長ノベル(1話~2話)

 までしか読んでいないので、見当違いのことを言っているかもしれませんが…。

本編感想

 夕方って、切ない感じがするから、なんとなく好きな気がする…と思って夕班から読んだ。あと、友達の推しが北片來人さんと百目鬼潜さんなので。

 夕班のストーリーは予想通り切なくってままならなかったけど、愛と希望に溢れていた。
 人間が人間を信じたい、愛したいと願う姿勢をたっぷりと見せつけられた気がする。

 このストーリーのテーマはきっと「愛」であるし、「持てる者と持たざる者」かもしれない。
 一見優しく見える來人が、実は冷たい。これは序盤から潜が叫んでいたことだったけれど、読者である私は「そんなわけがない」「何か誤解があるはずだ」と思ってしまっていた。きっと、潜が奇抜な装いの大犯罪者だから信用できていなかったのだ。だって、潜は国家転覆罪で収容されているんだぞ…。(そんな男をアイドルとして偶像化するのって、大丈夫か!?という疑問は不粋なので言わない。)
 Aパートの來人は優しく寛大で、少しスピっている点も個性があって好ましい青年であった。それでも生行や潜からは何やら複雑な感情を向けられていて、何やらそこまで言われる理由があるらしいということだけを察していた。

 Aパートで明かされる來人の秘密は、愛憎を引き起こすのに相応しいほどショッキングだ。
 でも生行は來人のために車を飛ばすし、彼のためならなんでもしてしまうと語る。口では酷い言葉を來人に向ける生行は、正真正銘來人を愛している。それでも來人はその愛を返せない。だから顔が曇る。
 アンドロイドの幾成でさえ、オーナーを愛している。ちぃは愛を渇望しているからこそ、ファンのことを愛し愛されている。太緒は両親から歪な愛を向けられて育った、しかしちぃと弟の試し行動の真意をきちんと理解できる健全さがある。
 來人からしたら自分以外のメンバーが愛に溢れているように見えるのだと思うとやるせない。読者から見れば、來人が人に愛される理由もきちんと分かるので。
 カゲロウは夜を知らないが、夜が在ることは事実だ。それと同じことで、來人は愛を知らないけども、彼が人に与えた愛は絶対に在る。
 潜は來人が人を愛せないことを海辺で知った(っぽい)のだが、じゃあ彼は來人が自分を忘れてしまったことを恨んでこんなに執着していたのだろうか。区長ノベルを早く解放したい。

 Bパートで來人が揺らぎ、キャラクターの掘り下げが行われた。
 これを見ていると、それでも來人って「持っている者」だよなあと思う。
 28歳で死ぬ運命はもちろんデカすぎるけど、優しい弟がいて(この時代の太緒には居ない)、愛してくれる家族がいて(他のメンバーには居ない)、まっすぐ自分に執着してくれる人間もいて。

 まだ謎が多いな…。潜の区長ノベルが気になっている。幼い頃に「神様」と称した來人と似ている男をまた「神様」と称しているように見えるし、昔の潜は今のsexy boyと程遠い純真な少年だし、北片家に近づけと言われていたのも気になるし…。

 なんか色々つらつら書いたけども、夕班のメインストーリーすごく良かったよー。
 途中來人に裏切られたような気がして心がズキズキしたけど、太緒が乱れないでいてくれたからこちらも安心できたし。ちぃと太緒が「おままごと」って言われてたからかなり不安だったけどかわゆい試し行動で済んだし。本当に可愛かったな、太緒とちぃは。最初ちぃのこと全く信用できてなかったんだけど知れば知るほど素直な男の子で、俺がちぃを守護る…涙となってしまった。
 あと幾成は良すぎた。
 綺麗な日本語が本当に好きなのですが、幾成パートはそのオンパレードで死ぬかと思った。

 その中でもこのセリフが狂おしいほど好きで…。
 幾成のプロフィールを見ると、体重がぴったり100kgなんですよね。アンドロイドって体重もキリがいいんだなあなんて思ったけれど、それって人間ではないってことだもんな…と…。
 自分が本当の息子になれなかった劣等感を魂の重さで表すのが本当に好きすぎて頭が狂いそうになった。
 愛せない來人と愛を知る幾成の対比が綺麗すぎる。
 (全然関係ないけど、生行と生成の名前がすごい似てるのって何か関係あるのかな?流石にないか)

 潜もなあ、何もわからないけど難儀だよな…。
 最初はやけにsexyな男出てきたな…と思ってたけど中盤は來人の心理を的確に言い当てるメンタリストになり、終盤はいじらしいかわい子ちゃんで。
 潜って幼い頃の姿見るに根は優しい子なんだろうな。じゃなかったら來人の近くに戻ってこないだろうし、生行を助けないだろうし。
 潜は來人をもっと深くまで壊したい、それは自分に弱みを見せてほしいということだ。來人の今の状況が歪だと思っているからこそ一度壊して正常に戻そうとしている。きっと潜はこれからも來人の隣で彼の綻びを探していくのだろう、結果的に來人の1番の理解者になっていくのでは…。 

 來人がコンスタンティノープルを欲しがったメフメトに自分を重ねたり、27Clubというスラングを知っていたり愛の詩を誦じられるのは、來人なりにたくさん愛を学んで理解しようとした結果だと思う。たくさんのものをインプットして、それが活きているのかは分からないが、北片來人という人物が勤勉な人だということはわかった。

 主人公のボイスが良かったな。
 男主人公を選んだのでそっちの話になりますが、ずっと優しくてどこか泣きそうな声が心地よかった。感情移入しやすかった、すごく良かった。

 最後に。
 來人が愛をこき下ろしている時、この一節を思い出した。

 いったい日本に於いて、この「愛」という字をやたらに何にでもくっつけて、そうしてそれをどこやら文化的な高尚なものみたいな概念にでっち上げる傾きがあるようで(後略)

太宰治『チャンス』

 來人と同じ主張だ。
 きっと愛は高尚ではない。
 でも、ここで太宰が言っているのは恋愛の話だ。「愛」についてはこうも語っている。

「愛」は困難な事業である。それは、「神」にのみ特有の感情かも知れない。人間が人間を「愛する」というのは、なみなみならぬ事である。容易なわざではないのである。

太宰治『チャンス』

 作中でも、愛の種類は恋愛だけでないと語られている。
 本来、愛は困難だ。
 來人が苦しむのも無理はない。容易に発生する性愛を取り除いたところにある「愛」とは、神でないとうまく扱えないのだという。これから、來人は神になるのか?

 とにかく頑張れ!
 主任はみんなのことを応援している。

本当の蛇足

 これ以降はお気持ち蛇足なので読まなくてもいいです。

 18TRIPのシナリオライターが好きだ。
 好きなゲームのシナリオを書いてくれていた人だからだ。
 エイトリがリリースされた時、シナリオライターがその人だと知った時。心がひしゃげて死んでしまいそうなほど苦しかった。
 人がエイトリを楽しんでいるのを見て、勝手に泣いていた。

 素敵なストーリーを読んでいる時、好きな言葉が飛び出るたびに心臓が潰えそうになった。

 でも、読み終わった今は、エイトリはエイトリだ、という当たり前のことに気付けた気がする。いや、本当はもっと昔から気づいていたんだけれど。
 私が縋っているあのゲームとは、別物なのだ。
 エイトリが出たからあのゲームが無くなってしまったのだとか、エイトリは「仲間」だとか、そういう変な意識は間違いだ。

 別物だ。
 もう大丈夫だ、変な色眼鏡を付けずにこのコンテンツを楽しんでいける。きっと、多分、おそらく。

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