8.【小説】 「走れエイト!」
◉ 「走れエイト!」8
稽古中だったみたいだが
二人は奥に座っている師範に会った。
「こちらにどうぞ!」
違う男が
今度は丁寧な感じで二人を呼んだ。
師範が口を開いた。
「ただで返したら申し訳ないので
稽古でもするつもりで
対戦してってもらおうか?」
テイのいい嫌がらせだ。
いや虐待だった!
「衛登 稽古をつけてもらえ。」
雅人はこれを待っていた。
《衛登には申し訳ないが
ある程度ケガをすれば
岳野原道場はひどいという話になり
こちらに生徒が流れてくる。》
雅人は岳野原道場の稽古内容を
前もって知っていて
衛登に
少々のケガをさせるつもりだった。
そこまでの考えは
ある程度良かったのだが・・・。
衛登は中央に出た。
岳野原道場からは
大柄な生徒が出て来た。
お互いに礼をしたが
勝負は一瞬で決まった。
「エイッ。」
と岳野原の生徒が付いてきたが
「ギャ。」
と言って
衛登の右回し蹴り一発で
崩れ落ちた。
これを見た雅人は驚いた。
少しは出来ると思ったが
これは尋常な強さではない
とビックリした。
それからは岳野原の生徒が
次から次へと出て来た。
衛登はだいたい一発で
向かってくる相手を
肘打ち 横蹴り 前蹴り 裏拳などで
あっという間に倒していった。
「ゴメンナサイ。
軽くやったつもりだったけど
あまりに弱くて
制御出来なかった。」
衛登は
イヤミを言ったつもりは無かったが
結果的にイヤミになってしまった。
〜つづく〜