僕はお化けのチョビ。
ちょっと怖がりなお化けだ。
暗がりも怖いし、人の悲鳴も怖い。
なのに、肝試しに来た子たちに遭遇し、チョビは以前気絶したことがある。
その時は、仲間の機転で助かった。
だけど、お化けとしては、致命的だ。
それを心配しているんだと分かる。
最近は特に、大忙しだ。
何でも、世界中の人がネットって言うので繋がっているらしく、大勢の人が最近は、家に来るのだ。
招待もしていないのに。
来るなら、菓子折り一つでも、持って来いって、言うんだ。
菓子折りもってきたら良いのかよって気分ですね。
でも、それを言うと皆に笑われます。
でも、あいつ等本当に酷いんだ。
だって、本当に寝れる時間もあったもんじゃない。
しかも、来たら来たらで五月蠅いこと、五月蠅いこと。
入れ替わり、立ち替わり来るものだから、休む時間もない。
しかもところ構わず、写真を撮るから、たまったもんじゃない。
ちょっとは、遠慮して欲しいね。
まだまだ、お化けとしては、僕は新米だ。
10年前は、もっと静かだったのにと思うチョビだった。
何で、ネットなんかで繋がるんだろう。
砂遊びや、木登りの方が楽しいのに。
何が、面白いのか、チョビには分からない。
そんな、チョビのところにお化けのお兄さんである、ムーが遊びに来た。
「よ、最近、人間が我が物顔で、肝試しやってるだろう?」
「うん」
「長老たちと話し合った結果、ちょっと脅かしてやれってさ」
「誰が?」
「お前が」
それを聞いて、チョビは嫌がる。
「何で僕なんだよ。ムーも僕に付き合ってよ」
「ダメ、これはお前の恐がりをちょっとでも、直そうって言う、長老様のお達しだ」
「僕、一人なんて怖いよ」
ムーは、半泣き状態。
「頑張れチョビ」
「無理だよ」
ムーは、笑います。
「大丈夫! 俺が守ってやる、お前のことは」
「本当?」
そして、脅かしに出たチョビは、やっぱり怖くて泣きます。
でも、泣いても、ムーは出て来ない。
ムーの嘘つき。
グループで肝試しに来ていた少年、彰人が言います。
「どうしたの?」
「怖い」
「怖いの?」
「うん」
チョビは頷きます。
「何が、君お化けだよね?」
「うん」
「じゃあ、何が怖いの?」
「人間」
不思議そうに聞きます。
「人間が? なぜ?」
「無理だって、そいつは怖がりだからね」
ムーは何処からか笑いながら言う。
「君は誰?」
「そいつの兄貴分だ」
「ああ、彼より臆病者の」
「何だと」
「だって、君全部解決してから出てきたじゃん。だから、臆病者は君だね。彼よりも」
「何だと」
怒ってムーはプリプリと口をつぐむ。
「あらま、怒っちゃった」
「それはそうだよ」
「それよりも、人に何もしちゃいけないよ」
「でもでも、人は僕らを祓おうとするもの。僕らは、何もしてないのに」
「でも、人間を脅しちゃダメだ。逆効果だよ」
「そうなの?」
「そうだよ。人間は、何もしなきゃ、忘れる。そして、飽きる」
「その間は、ごめん。我慢してくれ」
「分かった、ありがとう、彰人」
そして、彰人の言うように、時間は掛かったが、人間は飽きた。
「本当に、ありがとう」
「いや、僕も人間に混じって遊べて楽しかったよ」
「えっ?」
そう言って、彰人は消える。
「うわ~」
ムーは悲鳴を上げる。
そう、ムーは気付いてなかったが、彰人はお化けだったのです。
ムーの悲鳴を聞いて、彰人は笑います。
「まだまだだよ、新人君」