青天の霹靂58(会社のパーティーで2)
「はぁん、従業員はそうかもな。でも、てめぇの御内にも同じことが言えるかな?」
従業員の前に廉夏が連れて来られる。
「お前ら粋がっていられるのも、今だけだ」
廉夏の頬をナイフで叩く。
普通の女の子は普通ここで脅えるものだろう。
ただ、廉夏は違かった。
「何それで、脅しているの?」
そう言われ、犯人は廉夏の頬を叩く。
さらに、犯人はナイフで脅すように、ブラウスのボタンを一個ずつ切り落とす。
「まだるっこしいわね。やるならさっさとやりなさいよ」
そう言われ、男は激高する。
「何だと、貴様。やってやるよ」
みんなの前でブラウスのボタンを全部切れ、ブラウスも剥ぎ取られる。
ブラを皆の前で晒す。
すると、女性社員の何人かは、泣く。
「ほら、脅えろよ」
「それは、無理な相談よ。私は京極グループの総帥の孫よ。そんな、恥ずかしいことしないわ」
凛として言うと、男の方が引いた。
その瞬間、冬眞が廉夏を自分の方に引っ張り自分のスーツを肩から掛ける。
それに、ハッとしたように廉夏が、顔をあげる。
「頑張りましたね。格好良かったですよ」
「怖かったよ」
その時、廉の口から血が滴り落ちる。
「廉さん」
冬眞が叫ぶ。
廉は冬眞に言う。
「来るな。冬眞、お前は自分の仕事をまっとうしろ」
「いい加減にせんか。儂に怨みがあるなら、直接儂に晴らせば良い。それとも、今の社長に怨みがあるのか、貴様らは?」
そう聞かれ、犯人達は戸惑う。
「違いますね。私は彼らを全く知りませんから。たぶん、怨恨の線は消して良いでしょう。残るは愉快犯ですね」
「だが、儂に恨みを持つ者は少なくないぞ」
「そちらも、調査済みです」
たぶん、廉のことだ。そっちはくまなく調査したことだろう。
そして、危ない者は秘密裏に排除(いや、金で解決したのかもしれない)してきたのだろう。
豪造氏にも内緒で。
仕事が早い。
フッと冬眞は笑う。
「愉快犯なら、目的は金か、それはいくらじゃ」
豪造氏が聞く。
「話が早いね、じいさんは」
犯人達がそう言ったことで、彼らは豪造を知らないことが分かる。
「要求額はいくらだ?」
廉が言う。
「人質1人につき、そうだな? 50万円か?」
「安い。安過ぎる」
廉が怒ったように言う。
犯人達は戸惑ったように言う。
「じゃあ、いくらなら?」
「せめてその4倍ぐらいは要求しろ。言っただろ? 彼らは安くないと」
廉の言葉に犯人達は驚く。
「だが、今人質となっている人数は」
「約200名足らずか? 約4億円か? 京極を甘く見ないでもらおうか? たかが4億の金で京極は揺らいだりしない」
「マジかよ」
「ただし、気を付けろよ。もう、京極の関連グループには行けないと思い知れ。それで楽しめると良いな」
犯人達は青くなる。
だって、犯人達は、この先日本で平穏に暮らして行くこと事態がまず無理だ。
だいたい京極が何にでも関わっている。
なのに、日本で京極と関わっていないとこで、生活するなど、まず無理だ。
そこに、警察が突入してくる。
犯人達は大人しかった。
それに、廉は笑って、唇を嘗める。
「廉兄、大丈夫?」
「ああ、たいしたことはない。まぁ、少し切れているみたいだが」
警察に彼らは項垂れて、連れられて行く。
廉は手の甲で口をぬぐう。
その甲に血がつく。
「あいつら遠慮なくやりやがって」
冬眞は心配そうに、言う。
「でも、本当に大丈夫ですか?」
「平気だ」
「でも、医者には行って下さいね」
「冬眞は心配症だな」
「当たり前です。廉さんは京極グループになくてはならない人ですからね」
「なんか、それも確かに?」
「でしょ? たぶん、お気に入りのグループに廉夏ちゃんもなると思いますよ」
ニコニコと冬眞が言う。
「うん。面白そう。見たいな」
「一緒に見ましょう」
「だが、本当ならお前が次ぐ地位だぞ」
「僕のことなら良いんです。あなたはそのせいで運命まで、狂わされた。それは、息子の僕が詫びます。これから廉さんに仕えることで、返して行きます」
冬眞の言葉を聞いて、廉は目頭を押さえる。
「お前年下のくせに生意気だな? 俺の立てたプランを壊すとは」
「廉さんが立てたプランって、どんなプランだったんですか?」
「新たな会社を起こして、京極と競わせようと思っていた」
冬眞はフッと笑うと言う。
「それは、諦めて下さい。なんせここには廉さんに心酔している者が多い。京極を二分にしたいなら、止めませんが、僕は二分に何かしたくありません。廉さんが京極を導いて下さい」
「参ったね」
頭を掻きながら、廉は笑う。
「じゃあ、お前も手伝えよ」
「はい」
こうして、終わった。
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