青天の霹靂13(芸能人)
「芸能人もたくさんいますよ。女子高生と言えば、興味ないんですか?」
「あ~、私、芸能人に興味ない。確かに、凄いなって思うけど、それだけよ」
「廉夏ちゃんは誰か、この人のファンとかいないんですか?」
そう冬眞に聞かれ、廉夏は少し考えてから、面白そうに言う。
「いたわ。ファンと言うより、その人達がこれから先、どういう選択をするのか凄く興味がある人達がいる」
冬眞は不思議そうに聞く。
「誰ですか?」
「え~、分かんないの。冬眞と廉兄の今後の選択よ。私を退屈させないでね」
冬真は苦笑いしながら、頷く。
「廉夏ちゃんを退屈させませんよ。絶対に」
「そうなることを、期待しているわ。でも、だから彼らに興味はない」
「ですが、彼らは夢を与えていますよ。それだけで、尊敬に値すると、僕は思いますよ」
「確かにね。だからと言って、私は尊敬はしているけど、それだけよ。ファンとかにはならないわ」
それを聞いた1人の男性が格好つけながら、言って来る。
「残念だな。君のようなかわいい子にファンになって、もらえたらもっと頑張るのに」
それに、冷めた目差しで答えた。
「ありがとう。でも、私がファンになっただけで頑張るなら。頑張りが足りないんじゃなくて」
笑いながら、廉夏は言う。それに、男は怒ったように憤慨(フンガイ)する。
「君はバカにしているのか?」
男が振り上げた手を、廉が掴み、冬眞が廉夏と男の間に入る。
こうして、鉄壁の壁が出来る。
「何をする?」
男が手をとろうと、モガくが外れない。
廉は涼しい顔をしているだけで、力などまるで入れてないように見えた。
男は焦る。
「離せ」
その声に来ていた人は驚いて見る。
「廉兄、離してあげて」
廉夏は静かな口調で言う。
「申し訳ない」
それに、廉は社交的に謝罪し、その手を離した。
「これだから、野蛮人は」
「それぐらいで止めといたら、如何ですか? 己の品位を下げたいなら、止めませんが」
冬眞が言うと、その芸能人は、ぶつぶつ文句を言いなら消えて行った。
それを見て廉夏は、笑う。
「おかしな人ね」
「まぁ、自分から突っ掛かってきたから、引くにひけなかったんでしょうね。そう思うと、ちょっとかわいそうなことをしました」
「冬眞兄は、優しいね。でも、それは京極の名を継ごうとしている者にとっては、邪魔になるかもしれない」
「邪魔ですか?」
「うん、京極の名を継ごうと言うなら、その優しさは捨てなきゃ。ときには、非情にならざる終えないときもあるからね」
廉夏がそう言うと廉は笑う。否定はしない。
「廉さんも否定はなさならいんですね」
「そうだな。これに関しては、否定よりも私は肯定派だな」
「つまり、捨てろと」
「いや、お前が大事にしてるものを守れる強さを身に付ければ、捨てる必要はないんじゃないか? 俺は何をしても、結局それを守れなかった」
「えっ? 何を?」
「さぁな」
廉は涼しい顔をしてる。涼しい顔をしているが、それを捨てるのは、ずいぶん葛藤があったことだろう?
だけど、教えてはくれない。聞き出すことを諦めた冬眞は、自分に提示された課題を口にする。
「守れる強さか?」
簡単に聞こえるが、本当は凄く難しいことなのだろう。