青天の霹靂39(日向の家族殺される1)
それは、廉と冬眞、廉夏が日向の家で飲んだ朝に、電話ががかかって来た。この時、廉はもう、仕事に行っている。
その情報が入ったのは、まだ寝ている明け方の時間だった。殺人それも聞いたことのある住所。一家惨殺だつた。
「嘘だろう」
日向の頭は理解を拒否する。
「どうしたの?」
「惨殺された」
廉夏の思考も理解を拒否る。
「えっ、誰が?」
「俺の家族だ」
「嘘だよ。だって、昨日会ったばかりだよ。そして、私達の結婚を祝ってくれたんだよ。ねぇ、冬眞?」
「ええ、そうですね。楽しかった」
「とにかく、兄貴たちの家に行こう」
日向がそう言うと、冬眞は言う。
「僕は警察の発表される見解を京極家で見ています」
「そうか、頼んだ」
廉夏たちはすぐ向かう。
家の周りにロープが巻かれ報道陣もいる。
中に入るとみんなの遺体があった。
「兄貴、姉さん、おやじにおふくろ。何で?」
「やっぱりお前の家族か?」
村瀬がわかっていたのか言った。
村瀬は日向が、新人の頃の教育係だった。
「はい」
「今回の捜査からは、お前は外れろ」
村瀬が言った。
「大丈夫です」
「落ち着いて捜査なんか出来ないだろう?」
「出来ます」
「そう言ってるが、お前、靴違うぞ。そんなお前に冷静な判断は出来ないだろ?」
「えっ」
そう言われて、慌てて見て、オデコを押さえる。
「そうですね」
日向も苦笑いになり否定はしなかった。
「その代わり俺たちが草1本残さずやるから。信じろ」
村瀬は力強く言った。
「お願いします」
頭を下げる。
「任せておけ」
「あれ? 観月(みずき)ちゃんの遺体だけがないよ?」
廉夏のその言葉でちょっとだけ絶望の中で、希望が湧く。
「どこだ? 観月」
「観月ちゃん」
名前を呼ぶと押入れが開き中からちょこんと顔を出す。
「良かった無事だったのね」
廉夏がそう言うと、廉夏に飛び付いて来る。
「大丈夫?」
首だけコクンと頷く。
廉夏からは、離れない。
いや、離される恐怖かもしれない。
廉夏に大人しく抱っこされる観月
普段なら絶対ないことだ。
でも、今回は下ろされてなるものかと、ぴったり張り付いている。
廉夏は何も言わず、それを甘んじて受け入れる。
日向は、いや、あれは絶対喜んでいるなと一人正確に当てる。
廉夏が言う。
「たぶん、男の人が怖いんだよ。だから、近付かないであげて。いつもなら大好きな叔父さんでさえ、近付けないでいるんだから。犯人が男だったっていう証拠よ。だから、男の人みんな怖いの」
「男か?」
「うん。それは確かだと思うよ」
「そうか?」
「本来なら、日向と悲しみが共有できるはずなんだけど、悔しさとか悲しみ、それ以上に恐怖が表に出ちゃってる。この子自分の記憶を自分で消化する気でいる。強いわ」
ぎゅうっと、抱き締める。
家族が惨殺されるのを押入れで一部始終見ていた。黙って見ていたのは、声がでなかっただけだ。
強いね。本当は心いくまで泣きたいんだよね。でも、まだそんなときじゃないよね。泣くのは、犯人が捕まった時だよね。
抱き締め続ける。
その時に備えて、今はお休み。そう言うと、スーッと観月は眠りにはいった。
「今は、何も考えず寝て。日向も、家においでよ。家なら、京極の力も使えるし、警察の情報も入る」
「お言葉に甘えさせてもらうか?」
「日向も廉兄に弱音吐けるよね」
「バカ言うな。観月が泣いてないのに、俺が弱音を吐けるかよ」
「うん、そうだね。弱音は犯人が捕まってからだよね。じゃ、帰ろう」
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