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青天の霹靂56(冬眞が良いの)

「冬眞がイイの。冬眞じゃなきゃイヤなの」
涙目になって、廉夏がそう言うと、冬眞が力強く廉夏を抱き締める。
「どうしたんですか? 急に、僕じゃないとダメなんて?」
「そんなこと、私にも分からないよ。でも、いつも冬眞が横にいてくれたから」
そう言って、冬眞の背に廉夏は手を回す。
それに、冬眞は驚く。
「それを言うなら、廉さんもでしょ?」
「廉兄は違う気がする」
「何が違うんですか?」
「何かあったら、冬眞は私を優先して、助けてくれるけど、廉兄の場合は違うと思うから」
「そうでしょうか? 廉さんが言ってました。家族を失うのは、もう嫌だと」
「そう。廉兄の中では、じい様も私も変わらない。どっちか選べと選択を迫られた時、冬眞は廉兄はどちらを選ぶと思う?」
「難しいところですね」
冬眞は、考え込む。
「でしょ? 廉兄の中では、どちらも守りたいんだよ。でも、必ずどちらか選択を迫られるときが来るわ。特に京極である限りね」
その時を廉夏は想像し、笑う。
「何を想像しているのですか?」
「そう迫られ、苦悩する廉兄の姿」
「それは悪どいですね」
「そんな私は嫌い?」
不安そうに廉夏は言う。
「そんなわけないでしょ。むしろ、好きですって何度言わせれば、この娘は気がすむのかね」
「何度も」
「本当にもうこの娘は?」
呆れたように、冬眞は頭を掻く。
「例えば、そう言うことになったとしますよね」
「うん」と廉夏は頷く。
「その時は、僕もその場にいると思うので、廉夏のことは僕が守ります。廉さんには、豪造さんを任せます。だから、廉さんが二人を守る必要は有りません」
そう言われ、廉夏は納得する。
「そっかぁ~」
「そうすれば、廉さんのことですから動けます」
「確かに」
「で、現役を退いたとは言え、豪造さんはバイタリティーありますしね」
冬眞がそう言うと、廉夏が寂しそうに笑う。
「やっぱり、お父さんとは思えない?」
「偉大過ぎてそう呼ぶのも、おこがましいです」
「ただのジジイなのに?」
「そう思ってるのは、廉夏だけですよ。会社の中でも、未だに豪造さんをトップだと支持している人達もいるぐらいだしね」
「ムムム。分からん」
だが、廉夏にすぐに分かるときが来る。
そう時間は掛からない?

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