青天の霹靂26(日向の歩む道)
どう言うことだ?
『誰かに昔、使われていたってことか?』
冬眞は悩む。
それに、日向は気付くと、また笑う。
「どうした青年?」
「いえ」
「聞きたいことは聞いとけ。後でとか思っていると、いざ聞きたいときに聞けなくなる。それは、簾が良い例だろ?」
その言葉で、彼が廉の素性を知っていることに気付く。
「そうですね。それでは、聞きます。日向さんは誰かに使われていたんですか?」
それに、クスリと笑うと日向は言う。
「分かんねぇか?」
「ええ」
と、冬眞は頷く。
「それも仕方ねぇか? あのときの記憶がねぇんだもんな」
「えっ? その時の記憶があれば、分かるんですか?」
「ああ」
「と言うことは、先ほどの話を踏まえると、廉さん」
「ご名答」
そう言って、笑う。
「なぜですか?」
「奴が俺に生きる道をくれたからだな。本来なら俺は警察には入れないからな」
「なぜ?」
「俺の父親は、殺人者だ。本来なら俺は警察になんか絶対に入れない」
それを、聞き冬眞は愕然とする。
「どうして?」
「妻、つまり俺の母だなを殺(ヤ)っちまったんだ」
「それこそ、何故?」
「父は真面目だった。それに、対して母は男と遊ぶのが好きだった。父が泣いて、頼んでも母は遊ぶのを止めなかった。まぁ、殺されても、自業自得だな。もともと、母が父と結婚したのも財産が目的だった。だから、俺を生んだ。俺の祖父母は金があったからな。で、祖父母が亡くなった後に、それが顕著(ケンチョ)に現れる。それで、とうとう、父は我慢出来なくなるんだよな。殺したあと、自分も死のうとしたのを、俺が止めたよ。その時、俺に泣いて謝ってた。それ見たら、もう俺は何も言えなかったよ。で、警察官になるには、身内、つまり、俺から三親等は犯罪者はいちゃいけないって決まりがあったから、俺には絶望的だろ。俺には小さい頃から警官への憧れがあったが無理だったのを、廉が戸籍を弄り両親とも、事故で亡くなったことにしてくれた。だから、この先何があっても、俺の一番は廉だ。そのせいで、廉は己の人生を京極何かに捧げることになってしまった」
そう日向は言い切った。
何か、かと冬眞は聞いていた。
俺は逆に継ぎたいのに継げない。
世の中なかなかうまくいかないなと、冬眞は思った。
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