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韓国大統領の弾劾訴追案

2024年12月5日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が国会で発議されました。この弾劾訴追案は、尹大統領が非常戒厳を宣布したことを受けて提出されました。非常戒厳は、北朝鮮の共産主義勢力が韓国内で権力を握ることを懸念したためとされていますが、野党はこれを「内乱行為」と非難し、弾劾を求めています


弾劾訴追案の背景

尹大統領は12月3日夜、突如として非常戒厳を宣布しました。これは、北朝鮮の共産主義勢力が韓国国内で権力を握ることを防ぐためと説明されていますが、野党はこれを「内乱行為」として非難しました1。非常戒厳は約6時間後に解除されましたが、この間に国会は尹大統領の行動を問題視し、弾劾訴追案を提出することを決定しました

弾劾訴追案の手続き

弾劾訴追案は、国会で報告されてから72時間以内に採決にかけられます。定数300人のうち3分の2(200人)以上の賛成で可決となります1。現在の国会の構成では、与党議員108人のうち少なくとも8人が賛成に回る必要があります1。弾劾訴追案が可決されると、大統領は直ちに職務停止となり、首相が大統領代行となります。その後、憲法裁判所が最長180日をかけて弾劾の妥当性を審理します

非常戒厳の理由と影響

尹大統領は非常戒厳を宣布した際、北朝鮮の共産主義勢力が韓国国内で権力を握ることが懸念されると説明しました1。大統領府は戒厳について、「厳密に憲法の枠内に収まるものだ」と正当性を主張しています1。また、宣布のタイミングについては、経済と国民生活への「悪影響を最小限に抑える」よう配慮したと説明しています

国際的な反応

この事態に対して、国際社会も反応しています。アメリカのカート・キャンベル国務副長官は「重大な懸念」を表明し、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は、非常戒厳が解除されたことは法の支配が尊重されていることを示すものであり、韓国との「鉄壁の」関係は変わらないと述べました1。日本の石破茂首相も、韓国の状況を「特段の、かつ重大な関心を持って注視している」と述べました

過去の弾劾事例

韓国では過去に複数の大統領が弾劾されています。2016年には、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案が可決されました。朴大統領は収賄、国家権力乱用、国家機密漏洩に関わったとされ、のちに憲法裁判所によって罷免されました1。2004年には、当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が弾劾され、2カ月間、職務停止となりましたが、その後、憲法裁判所の判断で大統領に復帰しました

今後の展開

今回、尹大統領が辞任するか弾劾されれば、政府は60日以内に大統領選挙を実施することになります1。新大統領は新たに5年の任期をスタートさせることになります。弾劾訴追案の採決は12月7日に予定されており、与党「国民の力」から8人以上の造反が出るかが焦点となっています

このように、韓国の政治情勢は非常に緊迫しており、今後の展開が注目されています。弾劾訴追案が可決されるかどうか、そして憲法裁判所の判断がどのようになるかが、韓国の未来を大きく左右することになるでしょう。

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