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現場の自衛官が見た不思議体験(その2 心霊現象編)
目 次
まえがき
1 死体洗い場
2 ある休みの日
3 その日の夜
4 再 恐
おわりに
まえがき
これは私が陸上自衛隊化学科隊員だった頃の事実に基づく体験談であり、物語ではなく、ひとつの情報資料として読んで欲しい。
皆さんは、心霊現象や怪奇現象なるものを体験したことがあるだろうか。
多かれ少なかれ、何しらの経験はお有りではないでしょうか。
宗教では、死後の世界が有る。又は無(む)である。
人の魂は輪廻転生する。とか色々な説がとかれていますが、未だに謎です。
実際、量子力学でもパラレルワールドの存在や、光の波長により、霊やUFOが、見える人と見えない人がいる。などとても興味深い話もあります。
では、実際に私が自衛隊で体験した事をお話ししましょう。
1 死体洗い場
あれは今から20年以上前の話になる。
私は、埼玉県大宮市(現在のさいたま市)にある、大宮駐屯地で勤務していた。
当時の大宮駐屯地は、旧軍から続く古い建物も残っており、朝鮮戦争当時は米軍の野戦病院としても使われていた。
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建物は、南から北へ並び、本館、1号館〜4号館となる。
その4号館の地下に、コンクリートの床の一部が、プールの様に凹んでいる場所がある。
それは、幅約3m、奥行約5m、深さは50〜60cmくらいだろうか。そんなプールが、幾つも有るのだ。
朝鮮戦争当時、亡くなられた兵士の遺体を、このプールでホルマリン漬けにする。
そして、遺体を洗い、棺に入れ本国へ送り帰すのだ。
なぜ私がその場所を見る事になったのかと言うと。
陸上自衛隊の改変に伴い、駐屯地再配置計画によるもので。
老朽化した建物は取り壊され、新しい建物に作り変えるられる予定になっていたからだ。
そのため、取り壊される前に歴史のある建物を見せて頂く事となった。
2 ある休みの日
私が、先程話した建物を見学した時から、更に10年程前に逆上る。
当時、私は化学学校の課程学生として、古い建物を改修した学生隊舎と言う建物で、同期15〜16名と宿泊していた。
部屋はそれ程広くはなく、皆2段ベッドの上か下で寝る。
私もその中の1つのベッドの上で寝ていた。
ある休日、同期で友人のH隊員からドライブに誘われた。
車好きの彼の愛車は、1980年式ツーシータースポーツカーのシボレー・コルベット・スティングレー(4速マニュアル車)であった。
その車のルーフをオープンにして秩父、長瀞へとドライブへ行く。
しかし、運転があまり上手くない彼は、私に運転を頼む。
私も、運転は嫌いではなかったので、それを楽しんでいた。
車がそろそろ長瀞へ近づいた頃、彼は、こんな話を言い出した。
昨夜、彼は下のベッドで寝ていると、足元の方のベッドの右端が沈むのである。
彼は、2段ベッドの上の隊員が降りたのだと思った。
そして、また沈んだ。アッ、昇ったのだと思った。
すると今度は、左側が沈む。
「ん?何かおかしい?」左側は壁だ。
そうこうしているうちに、両端が沈むのである。
それは徐々に速度を増し、ドン、ドン、ドン、ドンとい感じでベッドを揺らすのだった。
彼は、ハッと起き上がり、それを目にする。
それは、小さな男の子がベッドの手すりに掴まり足でベッドを蹴っているではないか!
彼は恐ろしくなり、頭から布団を被り耐えた。
そして小さな男の子は、何時しか居なくなっていた。と彼は話す。
私は、「最近、訓練もキツイし、疲れていたんじゃないの」と彼に言った。
ドライブの途中、急な雨に降られ、慌てて車のルーフを付ける。
そうこうしている間に、その日の楽しいドライブは暮れて行った。
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3 その日の夜
その晩、私達が隊舎で寝ていると、窓際のベッドの上段で寝ていた隊員が「う〜〜ぅ、う〜〜ぅ」と、酷くうなされている。
皆、起きてしまったが、悪い夢でも見ているのだろうと思い。大丈夫か!と声をかける者はいなかった。
あくる朝、その隊員は皆に言う。
「何で助けてくれなかったんですか!」「あれ程、助けてくれと叫んだのに」
いや、私には、助けてくれとは聞こえなかった。
どうしたのかと、事情を聞くと、彼が言うにはこうだ。
彼が寝ていると、窓の外の通り(駐屯地内)から、子供達が遊んでいるような声が聞こえた。
彼は楽しそうだなと思い、窓の方を見た。
すると、窓際に置いてあるキャビネットロッカー(高さ約70cm程)の上に、上半身だけの軍人のような男が腕組みをして、不気味に彼を睨んでいた。
また、キャビネットロッカーの前に、膝から先の足だけがある。
睨まれた彼は、金縛りにあい、冷や汗をかきながら助けを呼んだが、恐怖で声にならなかった。
と言うのが事の真相だ。
皆は、にわかには信じ難い、と言った感じで聞いていたが。
私が一昨夜、H隊員に起きた事を話すと、みんな顔面蒼白になってしまった。
実際、化学学校庁舎では、使用されていない旧式のエレベーターに、白人の霊が乗っていたのを見た。と言う話も聞いたことがあった。
私は、この事を化学学校教育部の課程主任教官へ話した。
化学学校教務科は、これ以上続くようであれば、お祓いをしてもらう。
教務科は、私達の話を受け入れてくれた。
その日の夜は、皆中々眠れないようすだった。
しかし、それ以降不思議な事は起きなかった。
4 再 恐
それから月日が経ち、数年後、私は問題の隊舎の脇で演習後の整備をしていた。
するとそこへ、現在教育中で学生隊舎へ居住している、課程学生が来た。
その学生長が、私のところへ来てこう言った。
「この辺りは、夜中に子供達が遊ぶ場所があるのか?」
私は、ここは駐屯地だ、そんなところはあるわけないだろう。と言おうとして思い出した。
「もし、あまり酷い様でしたら、教務科へ相談してお祓いしてもらって下さい」と言った。
すると、その学生長は真っ青になり、何も聞かずにその場を立ち去った。
その後の改修工事で、学生隊舎も取り壊され、現在では、当時を想い起こさせるものは、なにひとつ残ってはいない。
おわりに
如何だったでしょうか。
現在は科学が発達したとは言え、まだまだ解明されない事は沢山あります。
なぜ現れるのが子供の霊なのか?この場所で何があったのか?過去の事を知るものはいなかった。
しかし、そこには何らかの意図があったのではないかと私は思う。
何れにせよ、その子供達が成仏してくれる事を祈らずにはいられない。
著 者 宮澤重夫
平成30年に陸上自衛隊化学学校化学教導隊副隊長を最後に退官
現役時代に体験した、地下鉄サリン事件や福島第1原発事故対処等の経験談を執筆中
主な資格等
防 災 士
第2種放射線取扱主任者
JKC愛犬検定最上級