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【短歌】さいごの恋

いつだってこれが最後の恋だって最後の意味も知らず言ってた

未来への約束探し目を凝らす秋の夜空のフォーマルハウト


秋になると思い出す人がいる。
もう30年も前に好きだった人だ。
2歳年上で綺麗な瞳をした聡明な人だった。
夏の間くるったように会い続けて、
お互い仕事が忙しいのに夜の11時とかに待ち合わせて、
朝まで一緒に過ごしてそのまま出勤した日々。
どこにあんなパワーがあったんだろう。
空気がひんやりしてきた頃一緒に行った鎌倉。
人が少なくなった由比ヶ浜、早朝の八幡宮。
なんでこんなに素敵な人が自分なんかのことを好きだと言うんだろうって思った秋。
これまでの人生で恋したぞ!って思えるのはこの時だけだったかもしれない。
大好きな人っていうのはその後も何人も現れたけれども、あのよく訳のわからない情熱みたいなものって、その後二度となかった気がする。
人生もとっくに半分過ぎたであろう今になって思えば、なのだけど。


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