ID.me企業分析【後編】
こんにちは!Receptで代表をやってます中瀬です。
ID.meについてとても興味が湧いたので調べていると学びが多く、たくさん記事が生まれてしまいました。
ID.meがどうやって大きくなっていったのか
ID.meは2010年から退役軍人向けのクーポンシステムとして普及していたようです。
かなり前から事業を展開していたのですね。
これが医療従事者や教師、学生などに窓口が広がっていき、公的サービスや薬の購入にも使えるような政府公認のシステムとなったようです。
https://wired.jp/article/irs-us-government-wants-selfies/
どうやら会社の戦略としても、退役軍人、学生、高齢者に絞ってクレデンシャル情報を発行し、小売業界でクーポンを発行する事例を作るところに着目していたようです。
プレスリリースを見ると、2017年ごろから、NIST Identity Assurance Level (IAL) 2 および Authenticator Assurance Level (AAL) 2 などの要件を満たし、アメリカ国内でも有数の本人確認ソリューションとして認知を広げていっています。
さらにこのタイミングで、病院などでの機密文書へのアクセスや、本人確認の求められる薬物の処方箋などのデジタル化のソリューションとして採択され始めています。
ID.meではクレデンシャル情報(本人確認情報)が存在しない場合は、つまり、初回利用時は、ekycなどで本人確認が5分ほどで済むようになっていて、一度本人確認を済ませれば公的サービスや処方箋など様々なシーンで再利用可能なのだそうです。
toC向けのアプリから、kyc機能を充足させて公的サービスなど、より堅牢なシステム要件を満たし、大きな事例を作っていったのだなと大変勉強になりました。
日本で既存のekycソリューションが同じことをできるのか
例えば現在金融機関などと提携しているekycサービスがid.meのように再利用可能なIDを駆使して公的サービスから消費者サービスまでのマーケットを取れるかというとそう簡単でもないかなと思います。
彼らはekycソリューションベンダーのためユーザーとの接点を持っておらず、事業者と顧客を繋ぐプラットフォーマーの立ち位置にはなりづらいという点が挙げられるかと思います。
本質的な事例とマスマーケティングのバランス
DID/VCを用いた事例として、本質的なものをあげることに価値を感じています。
先ほどの公的サービスが利用できるなど、誰が見ても明白な事例を上げることが大事だと思います。
なぜならばそのほうがインパクトが大きいから。
ただ、どれだけエキセントリックなユースケースを創出しても、ユーザーがたくさん集まってこそ、社会に対して大きな有効性を出すのも事実です。
そうなってくると、クーポン発行のような、一見NFTや既存の技術でも実現可能に思えるような施策もうっていくべきでもあると考えています。
本質的な事例を出せば消費者が勝手についてくるだろうというものでもなく、単純に消費者が参加することの影響力だけで突破できるものでもないということをID.meから学びました。
本質的な事例とは何なのか
エンジニアとして、DID/VCの本質的な事例とは、発行者・保有者・検証者という3者の座組が完成した状態でのユースケースだと考えています。
一方で、先ほど申し上げた通り、DID/VCの普及や事業としての成功を見据えた上では上記の座組を一時的に劣後させてでも事例を生み出す必要もあると思っています。
VCとしてのスキーマは維持しながら自己申告でもいいのでVCを発行して運用したり、用途が限定的なVCを発行することもあると思います。
これらの事例の積み重ねの先に本質的な、上述したような座組の事例が創出されたときに、また拡張性が出てくるのかなと思っています。