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ドライスタウト 引退に寄せて

2年連続で行っていたシルクチャレンジに失敗し、4月の追加募集も全落。今年は1頭も出資しない世代ということもあり得た中、2クラブ目も探していた中で出会った当馬。「そんな形でG1馬を獲れるとかありえないですよ」(後輩)。まだYGGも知名度は低く、2歳のGWでも出資が叶った馬が、多くの夢を与えてくれました。

各レース振り返り

それまでの経緯から順調さは垣間見えていましたが、さすがに2歳、まだ芯が出来ていなかったようで熱発による回避もありました。それでも9月の中京、それも中山を除外されて福永Jという恵まれた状況。

21/9/26 メイクデビュー中京 ダ1200m 1着

レースは喉鳴りの影響を考えて1200mから始動。それよりも大雨の泥んこ馬場のほうが気になる状態。
道中は前の馬の泥を被りながらなんとか追走し、直線ではきっちり末脚を伸ばして優勝。鞍上の2500勝というメモリアルな1勝だった。
そこから一息入れて、オキザリス賞に。福永Jは他場で騎乗ということで戸崎Jに乗り替わり。

21/11/13 オキザリス賞 東京ダ1400m 1着

雨も落ち着き、稍重での出走。内枠だったのである程度馬群で揉まれる、そこにカラ馬まで絡んでくるという中でも落ち着いて(1人気の馬などレースにならなかった馬も多かった)レースを運び、直線では余裕たっぷりに5馬身差。この時のハイパフォーマンスは特筆もので、この時点で種牡馬入りオファーが出ていたというのも納得。
ここからダートオープン馬はレースがない中、全日本2歳優駿に登録するも当初は除外1番手。そこから1頭回避で滑り込み出走が叶いました。


21/12/15 全日本2歳優駿 川崎ダ1600m 1着

単勝オッズは1.8倍と、除外が一番の試練だと言わんばかりの評価となったこのレース。またも雨残りの高速稍重馬場も味方。難なく2番手追走からあっさり抜け出しレコードでの快走。
晴れてG1馬になったドライスタウト。ここからは距離を延ばすという挑戦に。斤量も考えて、しっかり休ませて選んだのが兵庫チャンピオンシップ。

22/5/4 兵庫チャンピオンシップ 園田ダ1870m 4着

ここからJDDまでの試金石となるレースでしたが、1周半する独特のコース形態での大外枠に入り、痛恨の大出遅れ。道中は追走で手一杯になり、完敗の4着。距離適性もそうですし、仕上がりも甘く(2,3戦する前提で組んでいた)、難しさを感じさせるものでした。
この後、ユニコーンS、JDDへ向け調整していたのですが、いずれも動きが良化せず回避。3歳戦は諦め、北海道で時間をかけて立て直していくことに。結果的に半年の休養となり、11月の東京開催、霜月Sに。鞍上の戸崎Jは武蔵野Sとの両にらみでも対応してくれていて、期待の高さが伺えました。

22/11/20 霜月ステークス 東京ダ1400m 1着

状態はまだG1を勝てるほどではなく、2ヶ月乗り込んで間に合わせたというもの。それでもパドックで最高評価を得られるほどの馬体。レースは大外枠から楽に好位追走し、揉まれることもなく完勝。鮮やかに復活をアピールしました。
この勝利で当然狙うは翌年のフェブラリーS。しかしこのままでは賞金が足りなさそうというのもあり、一叩きして本番へ向かうことに。根岸Sが有力でしたが、中2週を嫌ってすばるSに。まあ、58を経験させたいというのもあるだろうし、戸崎Jのお手馬でもあるレモンポップと前哨戦からぶつけたくもないという意向もありそう。
このため、短期放牧を挟んですばるSへ。今回は中京開催でまた左回りでした。

23/1/7 すばるステークス 中京ダ1400m 2着

今回も引き当てたのは外枠。斤量が重いとはいえ人気通り力は上位。外を丁寧に回っていたのですが、そのさらに外、蓋をするように回っていったのが川田J騎乗のバトルクライ。とにかくドライスタウトを外に出させないことを徹底した騎乗に完全に出し抜かれて最後の追い込み及ばず2着。
後の重賞3着馬に2キロ差あってこの差なので、レース内容は悲観するものではなかったのですが、リステッド競走は1着のみ収得賞金加算ということでそのミッションは失敗。例年だと出走ギリギリという状態。
しかし、短期放牧から帰厩するころには皆回避していなくなり、有力候補だったギルデットミラーも骨折引退。有力候補は戸崎が「捨てた」レモンポップのみという事態に。

23/2/19 フェブラリーステークス 東京ダ1600m 4着

正直、出資者でも「実績考えると過剰人気だけど、他の馬も不安要素があって安心して買えると言ったらまあそうか・・・」という2番人気。枠は2枠4番で、戦前からの懸念の通り外にレモンポップが居て出せず、前は捌けずという苦しい展開。4着とはいえ、不完全燃焼感の強いレースでした。
それでも、来年以降に向けて大きな糧になったであろう1戦と捉えるしかない。
レース後はすぐに立て直せたものの、賞金が足りずかしわ記念は除外。小回りハンデ戦のかきつばた記念にこちらもギリギリで出走することに。

23/5/2 かきつばた記念 名古屋ダ1500m 2着

ハンデは58.5も、他の馬が61キロ等になっていて、全員「???」となる設定だっただけに文句はなかったです。実際、後続は千切っていました。それでも勝てませんでした。大外枠から外前を意識して乗られたドライスタウトを完全マークした勝ち馬、2.5キロ軽い上に鬼神川田、何より後にJBCクラシックを勝つウィルソンテソーロ(ちなみに戸崎Jで4連勝したことがある)にレコードタイムでのハナ差負け。
川田Jもインタビューで「ドライスタウトも素晴らしい馬」とほめていただきましたが、すばるS同様横綱競馬をせざるを得ない立場だっただけに、負けるイメージとして思い描いていた中の一つで負けました。
交流重賞2着でさきたま杯への選出も叶ったのですが、ここで入厩直前に負った外傷が悪化。この辺りから牧場との連携に疑問符が付くことになります。
結局さきたま杯、プロキオンSと回避し、コリアカップは選出外、9月のオーバルスプリントで復帰することに。

23/9/20 テレ玉杯オーバルスプリント 浦和ダ1400m 1着

とにかく状態面が心配されるようになったこのレース。格下に遅れ、最終追いをパス。正直、次以降も狙えるレースがあっただけに無理使いするのも疑問でした。
それでもレースは直前の雨もあり得意の高速馬場に。小回りでも力を発揮できるだけに後は早め早めに踏み込んでいって完勝。2着馬も地方馬とはいえさきたま杯2着などの実績馬、共に54キロで出られては他の馬は手出しできないでしょう。
そこから南部杯に登録、選出されるも1週前に回避。武蔵野Sを目指していきます。

23/11/11 武蔵野ステークス 東京ダ1600m 1着

前走時よりも明らかに調整は順調。さらに戸崎Jがまたお手馬が被り、今度はこちらを捨てて選んだ馬が直前回避。そして1番人気ペリエールは鬼門の最内枠。新コンビ横山武史Jは追い切りであまりいい感触を得られなかったようですが、シニミニ産駒のウッドの動きなので。
レースはいつも通りの正攻法。前が初ダートのステラだったので心配しましたが、簡単にパスして追い込み2頭に影も踏ませぬ完勝。翌年の本番へも期待が高まるものでしたが。
この後は間隔の短いチャンピオンズCを回避。実績をさらに積んだ当馬にとって、使えるステップは根岸しかなく、当然そこを目指していきました。
しかし、2週前の追い切りで騎手騎乗で負担がかかったか、屈腱炎を発症。全治は9カ月との診断でした。ここからはとにかくチャンピオンズヒルズで養生。なんとか25年の根岸ステークスで復帰できるめどが立ったので、12月に入厩して調整を開始するも、2週間でまたも屈腱炎に。正直、56秒程度で症状として出るようでは今後の復帰は難しいという判断も妥当ですね。もともとあったであろうブリーダーズスタリオンへの種牡馬入りオファーを受け、引退となりました。

感想

まずは牧浦調教師、騎乗してくれた皆様、ありがとうございました。そしてドライスタウト、お疲れ様でした。
福永J、戸崎Jという歴戦の名手が、返し馬の段階で能力の高さを評価していた通り、特に2歳での完成度は群を抜いていたと思います。それだけに、順調に使えていれば、海外G1挑戦も出来たでしょうし、もしかしたら国内無敗で引退した1つ上の名馬、レモンポップとも戦えていたのではないか、そう思ってしまいます。去年か今年の南部杯で見たかった。一番適条件であろう「ワンターン、大箱、左回り、高速馬場、ダートスタート」のG1で使えなかったのはあまりにももったいなかった。
それでもJpn1を勝って、グレード競走も勝てて、YGGとしてはブルーコンコルド以来の悲願となる種牡馬入りを出来たのは喜ばしいこと。地方リーディングサイアーシニスターミニスターはもう20歳を超えていて後継種牡馬が求められる中ですが、特にほぼ同世代の産駒(テーオーケインズ、ミックファイア、キングズソード)は中距離に寄っている傾向があるため、マイル前後のスピードの特長があるドライスタウトにも需要はありそうですね。いい産駒を出して、また巡り合いたいものです。





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