アニメWOLF'S RAIN 感想

※この文章はネタバレを含みます。

WOLF'S RAINを観終わった
これは万人向けのアニメではない
まず、非常に残虐な描写が多い
悲劇的な物語と終幕を持ち、救済は殆どない
輪廻と転生
そして伝説

音楽はサントラ未収録曲が多い
Cowboy Bebopよりも親和性は高い

絵画は非常に精細で、核となる狼の描写はよく出来ている
動物を描くのはとても難しそうだ
それが出来るアニメーターが日本にもいたんだと思った

おそらく狼は神の化身として、人と犬はそこから生まれた子として捉えられている

トオボエは狼だが人に育てられたため、最も人と親和性の高い存在として、犬に近い立場で描写されている
疑いを捨てられない無知で哀れな人クエント
最期に自らの弱さと生き方を恥じ、赦し、狼を敬い死んでいく

疑念と迷いを抱き、自らを疑ったまま旅するヒゲ
そんな彼も旅の途中でブルーという大切な存在と出会い、絆が生まれる
その大切な絆を守ろうとして、彼も死を迎える

最も孤独で強い狼ツメ
彼は誰も信じない、群れを持たない狼として描かれるが、最後にその理由が明かされる
彼はヒゲと同じだった
卑怯で弱い自分を恥じ、信じられず、3匹の仲間と出会い旅することで強さを取り戻していったのだった
ヒゲとツメは最期に互いの傷を認め、補い合うことでわだかまりを解消した

人間代表として物語を進めるシェールとハブ
人は欲を捨てられず、好悪と愛の違いを知らず、彷徨って生きている
だが、真実のみを目指す狼と旅をするうち、彼らも心の声に耳を澄まし、信じることの力を知っていく
ただ、人である彼らには全てを統べる神の世界に到達することは無理な話だった

己の愛する存在を失い、その悲しみのあまり暗黒の闇に心を囚われたダルシア
心と引き換えに最も強力な力を手にした彼は楽園の間際まで狼とともに近づく
しかし、人の心を捨てられない彼に無情な運命の最期が待っていた

そして、ただ二人、楽園に辿り着いたキバとチェザ
彼らは神の創造した世界そのもの
個ではなく、そのシステムを信じ、生ある存在を統べる存在、神に仕えるものだった
狼の血と花の娘の血が全てを生み出す雫に変わり、彼らの命と引き換えに万物は再び創造された
同時に闇の遺伝子も世界に受け継がれ、全ては再生した

破壊と創造、その全ては世界を構成している
その輪廻は絶えず繰り返され、どの個も、先代から何か持ってくることも、次代に何か持っていくこともできない
だが、存在する絆を断つことも起こらず、無限に存在する絆を通して、個は全てと繋がっている
信じる心は最も尊重されるべき存在だが、それを成すことは容易ではない
心に内在する弱さ、疑い、恐れによって、それは虚無と絶望、破壊へとその姿を変えてしまう
しかし、確かに存在する確信によって、世界には生命と希望、愛が溢れ、創造されていく
この物語は全ての生命が辿る旅路
その旅路と旅の伴侶こそが楽園の存在する証であり、この世界の存在する意味なのだろう

最後に、人間でありながら狼はとても狼らしい言動と表情をしている
本来は人語を用いない狼の擬人化にあたって、極力違和感の無いよう作られている
これは制作者の巧みな部分であり、卓越した動物観察力と物語の構成に驚嘆した

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