ツバサ
テレ東ドラマチューズで放映中の「ウイングマン」が面白い。
ティザー動画を初めて観たとき、「なんで今更『ウイングマン』なんだろう?」と思った。主人公の年齢設定が中学生から高校生に変わったことで、「特撮ヒーローに憧れる高校生って、なんか痛くね?」とも思っていた。
中学生なら小学校からの延長もあって、特撮ヒーローになりたいと思うこともあるだろうけど、高校生でそれは…とも。
まあ、中学生っぽい体型のスーツアクターもそうそういないだろうし、変身前と変身後の体型の変化をできるだけ少なく抑えたいと思えば、主人公を高校生に変更するのも仕方ないかな、と。
だが、主要キャストが発表され、次々と配信サイトにアップされる予告動画のカッコ良さにすっかり魅了されていまい、いつしかムクムクと視聴意欲が湧き上がってきたのだった。
しかし、放映はテレビ東京。自分の住んでいる地域は地上波での視聴は不可能…
諦めかけていたところ、なんとTVerで無料見逃し配信があるというではないか!文明の利器様々である…インターネット万歳(笑)
かくして毎週の配信を楽しみに待つ自分がいる。
ちなみにDMM TVでは独占見放題らしい。深夜枠なので低予算での映像化だと聞いていたのだけど、とてもそれを感じさせない出来栄えである。どうやらDMM TVからも出資があったようで、このあたりも地上波でのリアルタイム視聴よりも、インターネットでの配信や、その後のコンテンツビジネスの展開を見据えた昨今の映像制作の事情が伺える。
主演の藤岡 真威人さんは、仮面ライダー1号で有名な藤岡 弘、氏の子息であり、本人も若き日の「本郷 猛」役で映画デビューも果たしている。これがまた主人公の特撮ヒーローオタク「広野 健太」にしか見えなくなってきた 。どこまでも真っすぐで正義感溢れる純粋な特撮バカ(誉め言葉です)である。
さて、「ウイングマン」は1983年から1985年にかけて、週刊少年ジャンプ誌に掲載された、桂 正和先生の連載デビュー作品である。今から40年も前のデザインが、多少のアップデートがあるとはいえ、令和のこの時代でも古さを感じないところが凄いと思う。
しかも、このウイングマンのデザインの原型は桂先生が10代の頃に考えたものらしい。特撮ヒーローのカッコ良さを再認識した桂先生が、「ウイングマン」という名前とともに頭に浮かんできたイメージをスケッチブックに描いたものだという(桂 正和先生の公式X(旧Twitter)の書き込みから)。
それを主人公にヒーローものを一本描こうと思っていたのだけど、デザインだけ流用して手塚賞に応募した作品が「ツバサ」だったらしい。
この本人の書き込みを読むまで、「ツバサ」のデザインが先で「ウイングマン」は後だと思っていたのだけど、実際は逆だったようだ。
この「ツバサ」という作品、桂先生の初期短編集には収録されているが、ジャンプ誌面では未掲載である。
主人公はアンドロイドで、「依頼人の思い」を記録したカセットを腰に装着することで変身した姿としてウイングマンの初期デザインが登場している。
手塚賞で「ツバサ」は佳作入選し、かの鳥山明先生をも見出した編集者 鳥嶋氏から電話を受け、本格的に漫画家を目指すようになったのだという。
今回の実写化を誰よりも待ち望み、誰よりも喜んでいるのは桂先生自身なのではないかと思う。10代の頃に思い描いたオリジナルヒーローが、40年以上の時を経て実写化を果たす…まさに「夢の現実化」だ。
今回のドラマ版「ウイングマン」、全10話ということで、これを書いている時点で第8話までが終了。少々駆け足な気もするけど、原作で拾い上げられるエピソードは拾い上げ、現代社会の世相に合わせた改変をし、原作ファンも概ね納得できる仕上がりとなっていると思う。そもそも桂先生がキャラクター設定以外、原作のストーリー展開をすっかり忘れていて、原作の再現に拘ってはいないらしい。逆にスタッフのほうから原作について教えてもらってるあたりが面白い。スタッフに指摘されて、改めて読み返してみて、20代の自分の青臭さに赤面してしまう…といった談話もネットには掲載されていた。
ただ、桂先生自身もインタビューで答えているように、もう少し尺の長さが欲しかったところだと思う。
仮面ライダーや戦隊シリーズは1年間通じて全50話が放映されるのが常となった。また、それ以外の多くのドラマは1クール10話から13話程度で制作される。「ウイングマン」は深夜枠ドラマということで後者のカテゴリーでの映像化である。玩具の販促番組としての面が色濃くなってしまった特撮ヒーローものと比較して、シンプルなデザインの変身ヒーローのカッコ良さを私自身再認識させられた。
来週からはオリジナル展開となりそうで、ドラマ版のラストはどのようになるのか…楽しみでもあり、終わってしまう寂しさもある。
原作未読の方もいるだろうから、少々ネタバレになるが、原作では主人公の少年の夢から現実となったウイングマンは、夢以上にかけがえのないものと引き換えに夢へと帰る。
小さい頃から思い描いていたヒーローになることが現実となった主人公が、その全てを失ってでも救いたかったものは何なのか?
今なら電子書籍でも読めるので、原作未読の方はぜひ読んでもらいたいと思う。
そして、可能であるならドラマ版の第二期を期待したい。
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