引きこもりになった場合のお金の対策
長期間、自宅以外の生活の場が失われる「引きこもり」。全国では 15~39 歳の約 70 万人が、その状態にあるとされている。中高年に差し掛かり、社会復帰の可能性が低くなると、 親たちは「自分たちが死んだら、うちの子はどうなるのか」と不安が増す。働くことが難しい場合、どのような生活設計を立てればよいのかを、ファイナンシャルプランナーの
浜田裕也(はまだ ゆうや)さんに話を伺った。
1、 まずは「働けない」ということを前提で試算する
浜田さんは「子供が 40~50 代という親からの相談が目立つ。親は 60~70 代で、 両親のどちらかが亡くなっている場合も多い。引きこもりになったきっかけは人そ れぞれだが、主に学校でのいじめや不登校、後に発達障害やうつ病などの精神的な病 気を患っていたと分かることもある。結論から言うと、引きこもりが長くなり、子ど もが中高年の場合、今後も働くことが難しいという想定で生活設計するように」と勧めている。
まずは今ある親の預貯金、家などの不動産、死亡保険金などを洗い出して、残って いるローンなどの負債も一覧表にまとめるということが出発点となる。財産や収入 支出の見通しが一目瞭然でわかる「キャッシュフロー表」を作っておくとなおさらよい。
今の生活がいつまで続けられるかを把握し、途中でお金が底をつくようだったら 収入と支出の見直しや住み替えなどを検討する。預貯金額などに不安があれば、まず は親の財産の範囲内でやりくりして、できるだけ生活保護を受けずに済むような方法を考えることが重要となる。将来の不安をはっきりさせて、覚悟を決めて今からできる対策を知っておいてほしいと、浜田さんは語る。
可能なら、子どもにお金の話をしてみるのもよい。作成したキャッシュフロー表を見せると、子どもが障害年金や精神障害者手帳などを申請したり、求人雑誌を読み始めたという事例が上がっている。 さらには、母親が子の個人年金をコツコツと貯めていたことを知った息子が、暴言を吐いたり暴力をふるうことを抑えるようになったり、2 年後に貯金がなくなるとわかった子から小遣いの減額を申し出たりするなど、子どもの意識が変わったという家 庭もあるのだ。
2.日々の暮らし方の訓練を行うことも、必要となる
金銭面のほかにも気を付けておきたいのが、日常生活にまつわるごく一般的な決め 事である。たいていの引きこもりの子にはこのようなことをよく理解しておらず、親 の死亡後に電気、ガス、水道といったライフラインが止められてしまう事例が考えら れる。
親が生きているうちに電気やガス、インターネット、水道などの料金の口座振替先 は子ども名義にしておく。事前にまとまったお金を振り込んでおくと、滞納の心配も 少なくなる。そして最低限、ご飯の炊き方や洗濯の仕方、現金自動預払機・ATM の 使い方の訓練はしておきたい。 また、外出ができなくて買い物に行けない時は、インターネットスーパーでの注文 の仕方や、宅配便が届いた時の対応、そのような場面で話さなくてはいけない項目を メモにしておく。そしてキャッチセールスや訪問販売といった悪徳商法に引っかかった場合の対処法も学ばせておきたい。
自分一人で解決できない時は、自治体やボランティア団体などの相談窓口に相談 するように指導することも重要である。連絡先などを見えるところに貼っておいて、 「相談しても何も怒られない」ということを念入りに伝える。
肝心の生活資金は、信託財産が 3 千万円以上ある人には子が年金形式で定期的に お金を受け取る生命保険信託などがあるが、その他にも民間の個人年金保険や、自治体で相談する「心身障害者不要救済制度」なども検討対象となる。
今回のこの資料作成に携わってくれた、ファイナンシャルプランナーの浜田裕也さんは、引きこもりやニート、障害のある子供を持つ家庭の家計を考える「働けない 子どものお金を考える会」(TEL:03-6324-8999)を立ち上げており、有料で相談を承っているのだ。
3,キャッシュフロー表の作成例
最後に、一番最初の部分で述べた、キャッシュフロー表の作成例を紹介する。まずはこれを作ることから始まるので、是非とも目を通しておいてほしい。
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