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クリスマスイブ〜山下達郎
まだ学生だった遠い昔の話。
アキラの家でクリスマスパーティーをすることになった。
西宮の夙川駅のすぐ近くにあったアキラの家に愛車の117クーペで駆けつけた。
すると、ヨネムラとカスヤがいてそれぞれの彼女もいた。
お前の彼女も呼べばいいと言われ、彼女に電話した。
彼女からは行ってもいいとの返事。
待ち合わせ場所を阪急西宮北口のホームにした。
クリスマスの人混みの中、ホームでしばらく待ったがなかなか彼女は来ない。
携帯電話の無い時代のこと、あれこれ考え30分待ってもしかして三ノ宮と勘違いしたのかと考えた。
阪急電車の特急に乗って三ノ宮駅についたら、ホームの端で彼女は泣きそうな顔で一人待っていた。
ようやく会えたことを喜び、また電車に乗って夙川のアキラの家に戻った。
アキラの家に着くとバイトから帰ったアキラの従姉妹のくーちゃんも合流して、当時まだ珍しかったカラオケで歌って、遅くまで騒いだ。
電車が無くなるころになり、カスヤはスナックでバイトしてる彼女と帰っていった。
くーちゃんも自分の家に戻り、僕の彼女も最終電車で神戸の家に帰っていった。
残ったのは、僕とアキラとヨネムラ。
夜中の2時頃三人でオールナイトの茶店に車で行くことになった。
愛車の117クーペに乗って三人で苦楽園のフルムーンまで出かけた。
その時ヨネムラが、これをかけてくれと言ってカセットテープを差し出した。
すると、クリスマスにぴったりな曲が流れてきた。
きっと君は来ない、一人だけのクリスマスイブ〜.
そのフレーズが、三ノ宮駅で一人ポツンと待っていた彼女の姿と重なり、じーんとしみた。
その曲は、山下達郎のクリスマスイブだった。
いい曲だなと三人で何度も繰り返し聴いていた。
それから何年かしてJR東海のCMで山下達郎のクリスマスイブが流れてきた時、三ノ宮駅のホームの端っこで泣きそうな顔で待っていた彼女のことをまた思い出した。
あれから30年以上も経った今でも街には山下達郎のクリスマスイブが流れてる、その度にあの時の、震災前の阪急三ノ宮駅と彼女の泣き顔が蘇る。