戦火の中で子供を守る
11月3日 ウクライナプラウダ:(6,608 文字)
子供用の防弾ベスト ウクライナの新しい現実
2月24日以前なら「子供用防弾ベスト」という言葉に衝撃を受ける人も多かったでしょう
しかし、LOK(リヴィウ・防護・クラスター)では、今や当然のことになっています
LOK は、ウクライナでのボディ アーマー製造のメイン・コーディネーターです
LOKはボディーアーマーを作成し、軍人、国境警備隊、救助隊員、医師、ジャーナリストに無料で提供しています
そして最新のユニークなラインナップが「避難用」の子供用防弾ベストです
LOKの共同創設者と従業員は、すでに8万5000着以上の高品質の防弾ベストを生産しており、「プロのボランティア」と自認しています
アーマーを裁断する工房と、テストされたアーマーの「墓場」がある研究所を訪れました
会長マクシム・ プレホフと通信部門責任者アントン・フェドチェンコが、LOKの設立の経緯、勝利の物語、子供と医師のための防弾チョッキ、そして仕事の最も困難な側面について語った
簡単に防弾ベストが作れると思ってる人は大間違い
LOKの研究室には数十枚の失敗作のプレートがあります 自作された装甲鋼、セラミック、ポリエチレン、テープで包まれた金属粒子
「防弾ベストを作るのはとても簡単だと考える人もいます 金属片を切り取り、布を追加し、テープで包むだけだと
しかし、ペットボトルに水を注ぎ、シャンプーを加えて消火器だと言う事もできますが、それは機能しますか?」 とLOKの品質責任者は言います
LOKが見つけた最も珍しい自作アーマーはスプリングを使ったものでした
車のパーツを外し、溶接し、前線の兵士に送るか売るかしようとした人もいました
「ガレージでばねを切断したり、溶接したりして、『我々のアーマーは絶対に撃ち抜かれない』と言うのです」
こういう物への対処は、LOKのミッションの一つになりました
LOKは、自家製プレートの防弾ベストは恐ろしく危険なアプローチであると強調します
「戦争が始まって以来、防弾チョッキは何もないよりはましだという意見が非常に広く行き渡りましたが、そうではありません
ボディアーマーの品質が悪いと、弾丸だけでなく、破片が体内に入ります
そうなると200(死体)になるのが保証されたようなものです」
と マクシム・ プレホフは言います
まとめて購入した防弾ベストには、品質が悪い場合があります
使用する前に壊れてしまうプレートキャリア(防弾ベスト)もありました
「ある、不良品は、最初は中国国内市場で販売されたものが、ウクライナ人に転売されたものでした
サバゲ―プレーヤーや映画撮影で使うことはできますが、前線では使えないものでした」
とマクシム・ プレホフは回想します
LOKはボランティアの要請に応え、ヘルメット、ボディ アーマー、プレート キャリアなど、さまざまな個人防護具のテストをします
オフィスにはアーマーの「墓地」があり、LOKは何千もの低品質の防弾チョッキが軍に送られるのを防ぎました
戦争が始まると、LOKのおかげで、リヴィウはボディ アーマーを生産する最大のボランティア センターになりました
LOKのスタート
LOKは、特に弾道学と戦術的装備の専門家を雇用しています
2014年以来、防弾チョッキ、戦術的装備、軍服を製造する防護具のハルキウ工場があります
以前はハルキウに本社があったのです
ロシアの攻撃により、施設を移転しなければならなくなりました
「ハルキウ近郊に大きな工場がありました
当初、多くの一般従業員は避難を希望しませんでしたが、経営陣が一部の従業員を説得して、移動させることができました」
「戦いに行かないからと言って、地下室で座っているわけにはいかない
戦争は明日終わるわけではない
働いて、生産をしなければいけない」
とLOK会長マクシム・プレホフは言います
まず人を避難させ、次に機器を避難させました
防弾ベストをボランティアで作ることになり、リヴィウの企業、ボランティア、弾道学や戦術的装備の専門家が全国から集まり、LOKが形成されました
「防弾ベストの生産を始めて8年になります。
戦争が始まって間もないころ、企業の移転が始まったとき、何をすべきか考えました
企業を続けるか、売るか....」
「そして、ビジネスモデルを見直し、ボランティア活動に特化するという根本的な決断をしました
それで生まれたのがLOKです」とマクシム・ プレホフは言う
LOKは100,000個のボディアーマーを生産するという目標を立てました
生産のための資金調達のために、LOK、Run Ukraine、および ProBig ランニング・クラブはチャリティー・オンライン・ランを開始し、参加者にはオリジナル・メダルが贈られました
これまでにLOK は85,000を超えるボディアーマーを製造し、全て無料で提供されています
「LOK は慈善基金や商業組織ではありません
私たちはそれを『プロのボランティア活動』と呼んでいます
現在、国ができないところを私たちは支援しています」
とプレホフは説明します
「寄付金で、原材料を購入し、仕事の費用を負担します
つまり、ウクライナの生産施設は稼働しており、人々は支払いを受けています」
とフェドチェンコが付け加えます
子供のためのボディアーマー
子供のためのボディアーマーは私たちの新しい現実です
LOKは子供用防護キットの製造を開始しました
ソフトな「避難用」防弾ベストとヘルメットです
子供用セットは、西側では以前から生産されてきましたが、LOKがウクライナ初のメーカーになります
子供用防護具の開発ではLOKの多くの専門家、特に軍事装備の専門家であるカリン・ディミトロフの支援を受けました
「ロシア人が『子供たち』の目印にどのように反応するかはわかっています
(注:マリウポリの劇場の悲劇、クラマトロスク駅へのミサイルなど…)
...避難中の子供たちの主な脅威は、ガラス、コンクリートなどから敵の大砲の一次および二次破片です 警察の少年課から、紛争地域の子供たちの避難のための防弾ベストの要請がありました。
これが私たちの新しい現実です」とプレホフは言います
「子供の体は柔らかい布で完全に包み、カバーを置きます。実際、プレートは入っていません
破片から保護するための超高分子量ポリエチレンだけです」と経営責任者が説明します
明るいオレンジ色のボディアーマーとヘルメットのセットは、子供たちをがれきから保護し、迷子にならなることも防いでくれます
将来的には、防弾ベストを提供するだけでなく、GPS ビーコンと識別システムを装備して、すべての子供を追跡できるようにしたいと考えています
防弾ベストができるまで
LOKの主な活動は、軍用の個人用保護具の製造とテストです
本格的な侵攻が始まると、大量の個人防護具を短期間で生産することが必要になり、LOKはプレートキャリア(ベスト)の生産に集中したという
「まず、兵士のリーサルゾーン(最重要部位)を通常の防具で保護することが必要です
そのため、LOKでは開戦当初からプレートキャリアの生産を行ってきました
課題は第一に、兵士の高い機動性の実現、第二に、生産プロセスの加速化でした」とLOKは説明する
セキュリティ上の理由から、生産の全工程を十数社に分散させ、それぞれ別の場所に配置されている
ボディーアーマーの作り方は2段階に分けられます。1つは、プレートキャリアそのもの、つまりプレートを入れて人体に装着する役割を担う布製カバーの製造です
第2段階は、アーマーパッケージの製造です
ウクライナでは通常、装甲鋼板、プレスポリエチレン、セラミックの3種類の装甲板が使用されています
「アーマースチールは、通常、ヨーロッパの3〜4社が生産しているものを使います
化学組成はほぼ同じです
主な指標は、鎧鋼の硬度とその厚みです
厚みは6mmが最適です
5mmだと破られ、7mmだと重すぎるのです」と会長は言う
装甲鋼を切断する工場では、作業が本格化している
装甲鋼板は1枚ずつオペレーターが操作するレーザーに移され、60枚の小板に切断される
「金属価格による原価は5,000UAH程度です
利益はありません
設備の減価償却もなく、電気代と人の給料だけです
みんなが私たちを助けてくれています」
当初は、国が電力を補償し、労働者の経済的負担はまったくないと考えていた
しかし、それは難しかったと企業の責任者は言う
完成後、製造された防弾チョッキはすべて社内と国の研究所で検査を受ける
アーマーは、すべてのルールに従って射撃場で試射されます
身体を模した特殊な弾道粘土を用いて、圏外変形(被弾後に装甲が身体側に膨らむこと)を確認するという
「各ステージでテストが実施されます
金属を受け取り、材料の受入検査を行い、装甲板を作り、内部検査を行い、国の研究所に送ります」
とマクシムは言う
"LOKの使命は、忘れられがちな人たちを助けることです"
LOKは、軍用防弾ベストのほか、東部で活動する救助隊員、公共事業、レスキュー隊員、医師、ジャーナリスト、子どもたちのためのプロテクションを製作しました
「多くの財団は軍隊の支援に力を入れていますが、LOKのもう一つの使命は、忘れられがちな人たちを助けることです」とマクシムは言います
軽量なボディーアーマーは、長時間それを着て作業し、二次的な破片(コンクリート、ガラス)から保護されなければならない人々のためにも必要です
マクシムは、国境警備隊からLOKに連絡があった最初の事件を教えてくれました
「3月、国境警備隊のある責任者が『みんなで軍隊を助けようと言って、ボランティアで防弾チョッキを20着提供してくれました
しかし、北の国境を守る5,000人の隊員を配置する必要があるのですが、十分な数の防弾ベストがないんです』と言ってきたのです」
「防弾チョッキは軍用に必要なので、国境警備隊は後回しにされていたんです」と、マクシムは振り返る
「国境警備隊が防弾チョッキ4,000着を必要としていて、LOKに助けを求めたのです
もちろん、『プロのボランティア』で応対しました
将軍の目が涙でいっぱいだったのを覚えています
私たちの財団に来たとき、彼は私たちが100枚か200枚の装甲板を持っているだろうと思ったそうです
しかし、2日間で国家国境警備隊のニーズを完全にカバーすることができたのです」
「来週には全員が防弾チョッキを着ることになると思うと、とても貴重な体験でした」
ハリコフのボランティアから、救急隊員用の防弾チョッキを求める手紙が来たこともあるという
「購入した鎧の写真を送ってくれたのですが、重すぎて医者には向かないというんです
写真を見て、『この鎧を外せ、救急車には違う物が必要だ』と言われました
救急車の乗員を守るためには、重い装甲ではなく、ケブラーや超高分子量ポリエチレンなどの柔らかい装甲が必要だと理解していますが、ウクライナでは手に入りませんでし た
でも、ハリコフの工場が移転して、在庫を整理しているときに、超高分子量ポリエチレンが2巻ほど残っていたんです」とマクシムは振り返る
LOKは技術者とともに、実際に2日間で「医療用」防弾ベストを作成し、1週間後に2人の救急隊員に引き渡しました
通常であれば、1カ月はかかるものだったという
兵士の防弾ベストのために、子どもたちからまで寄付が集まる
LOKには数百人の寄付者がいますが、組織は大企業だけでなく、小さなボランティアたちからも支えられています
例えば7月、リヴィウに住む9歳のソロミヤ・ハランちゃんの母親が、彼女自身もボランティアなのですが、LOKに連絡をしました
娘が絵をオークションで売り、6,000フリヴニャを得て、軍用の防弾チョッキを寄付したいと言い出したというのです
「今回ばかりは我慢できず、ソロミヤにLOKを案内しました
彼女は興味を示してくれ、20分ほど研究室でメディカルベストの説明も受けました
新しい世代の子どもたちが育っていることを知ることができて、とても感動的な出来事でした
彼らは戦争の子どもたちですが、防衛の意味を理解し、国を再建してくれるでしょう」とマクシムさんは振り返る
ソロミヤに感謝を示すため、LOKの社員たちはフラッグを買い、少女への願いを込めてサインをした
また、LOKは、ウクライナのディアスポラ(海外移民)にも支えられている
かつて、LOK製の防弾ベストを受け取った国境警備員の米国に住む親族が訪問し、ピッツバーグのコミュニティから多額の寄付をしたことがある
「また、同僚の一人がポーランドに出張した際、LOKのTシャツを着て行ったんです
ウクライナ人のバリスタが、私たちのことを知っていて、チップをすべてLOKに渡してくれたそうです
とても嬉しかったよ」とアントンは付け加える
「誰に防弾ベストを渡すべきか」、これは、人生で最も恐ろしい選択かもしれません
最初の数カ月、防弾ベストのニーズが非常に高く、LOK創業者たちの電話は鳴り止まなかったという
「誰に防弾ベストを渡すかべきか」、これは、人生で最も恐ろしい選択かもしれません
ですから、防弾ベストを配布しないのが、ソロモンの判断だと思います
「縁故主義を採用しなかったことで、チームが助かりました」と、マクシム・プレホフは言う
防弾ベストは国防省の物流倉庫に運ばれ、そこで軍の部隊に配布された
「私には防弾ベストの処分権が無いといことで、大切な人たちの頼み断らなければならなかった
彼らの生死を決めるようなものだ」とLOKの責任者は言う。
「一番難しかったのは、縫製工場で働く人たちが、自分たちで縫製したケースです」とボランティアは振り返る
夫が前線に出ると言い、マクシムに防弾チョッキの支給や販売を求められたが、断ったという
"ユニットからの手紙 "の策定を手伝いましたが、残念ながら当時は問題が絶えませんでした。
名付け親であり、義理の父であり、兄弟である人たちを断らなければならない気持ちを理解してもらえないのは、非常につらい問題でした
コミュニケーション部門の責任者であるアントン・フェドチェンコは、「心がつながっている人たちで働いているので、仕事は全般的に難しかった」と語る
現在も、アーマーは検品の後、軍部隊の要請に従って移管されます
指揮官の要請に応じて、LOKが「穴」を塞ぐこともある
そのひとつが、空挺部隊のケースである
「ATGMs(対戦車ミサイル)を遂行する人たちです
最高のスペシャリストたちで、陸軍規格の着心地の悪いアーマーでは戦闘任務に適さないものなのです
彼らは1日おきに敵の戦車を燃やすので、司令部の要請に従って防具を支給しています」とアントンは言う
「ありがとう、あなたの防弾ベストで命拾いしました」というメッセージを受け取ったときが、最も価値ある瞬間です
現在、兵士のボディーアーマーの必要性は、侵攻当初の数カ月間ほど切実なものではありません
同時に、LOKは子供用の「避難用」防具の生産を継続しており、前線近くで活動する衛生兵用の防弾ベスト約3,000着を引き渡す予定です
この「医療用」防弾ベストは、東部と南部の救急隊員に提供する予定です
「『ニーズ』に応えています
子供用防弾ベスト30着を初めて納品しました
依頼を受けた500着をこれから約1カ月ですべて完成させなければいけません
今は医療用ベストに取り掛かり、縫製を始めました」とアントン・フェドチェンコは言う
LOKの仕事は1日たりとも止まらない
「戦後3カ月目にして初めて眠れるようになりました
3、4年経ったような気がします
製造し、トラックに載せ続けています..
チーム全体にとって最も価値があるのは、『ありがとう、あなたの防弾ベストで今日、命拾いしました』というメッセージを受け取る瞬間です
1人の命を救うだけでも価値があります」
(終わり)
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