この戦争は、どう始まったか -アレクサンダー・ウィルクル軍民行政長(2)
(5,511 文字)
- 南部や東部の人々も大事な意見を持つ一人一人の人間であると理解されているのですね
これまで、貴方は異なる判断を期待されていると何度も耳にしたのではないでしょうか
そして、多くの人にとって、貴方の明確な親ウクライナの立場は驚きでした
ウクライナとロシア、どちらにつくか悩んだことはないのですか?
- 一瞬たりとも迷ったことはありません
ウクライナは私の祖国であり、私が持てる立場はただ一つ、祖国のために戦うという立場だけです
そのためなら、ロシア人だろうがパプア人だろうが、誰が攻撃してこようが、私は戦います
彼らは私たちの祖国を侵略した敵なのです
だから、守って追い出す
勝つために何でもやらなければならないのです
それ以外の立場はありえません
- きっと、貴方に祖国を裏切り、クリヴィー・リフを裏切り、敵に有利な決定を下すよう持ちかけた人がいるはずです
それはどんな人たちですか?
どんな取引を持ち掛けられましたか?
- 開戦から2日目、一緒にヤヌコビッチ政権にいた閣僚の一人から電話がかかってきました
私が副首相だった(2012年12月24日~2014年2月27日)当時の同僚です
- 誰でしょう?
- 元内務相のザハルチェンコ氏です
2日目でした
地図上の旗がものすごいスピードで動いている頃でした
「アレクサンドル・ユーリエヴィッチ(ウィルクルのこと)、君は賢い男です
状況がすでに決まっていることを理解しているはずです
クリヴィー・リフを代表して、愛、友情、相互理解、相互扶助について、居住者と何らかの契約を結んでください
そうすれば、彼(プーチン)の『新しいウクライナ』の大物になれるでしょう」
非常に長く、口汚く、罵っていました
おそらく、もう一度同じことはできないでしょう
特に議論する余地もありませんでした
この事実については、警備や防諜担当の特別機関に、10秒後には知らせました
そして、何日目かは覚えていませんが、おそらく10日目...
- ツァーレフ?
(注:オレグ・ツァーレフはドニプロ出身の元ウクライナの政治家、2014年からドンバス勢力に加わり、ノボロシア代表を名乗っている)
- そう、ツァーレフの話は有名ですね
午前3時に寝て、6時に目覚ましで起きたら、彼のテレグラム・チャンネルから「ハンデ・ホッホ、降伏!(ナチスドイツ軍に使われた降伏勧告テンプレ)」風の降伏勧告文がきていました
「我が軍は現在、クリヴィー・リフの近くにいる
クリヴィー・リフの(注:オレクサンドルの父)ユーリイ・ウィルクル市長には一貫性を期待しています
ユーリイ・ウィルクルとオレクサンドル・ウィルクルは、かつて、私の政党仲間で、常に親ロシアのスタンスでした
ロシア軍に協力することは、クリヴィー・リフの街と住民の命を守ることです
クリヴィー・リフの市長が正しい決断をすることを期待します」
私は、あまり深く考えずに、寝おきにスクリーンショットにとって、Facebookにアップして、公開しました
(注:「飼い主たちと一緒に地獄に落ちろ、裏切り者!」とコメントが付いている)
上品な振る舞いでないことは理解していますが、そのようにして感情を表現しました
- 他に連絡はありましたか?脅しやメッセージ、電話とか?
- もちろん、メールもたくさんありました
「協力~降伏~あなたは死ぬだろう」みたいな文章です
私は「〇〇へ落ちろ!」と返事をします
〇〇が何かはご存じの通りです
最後は「あなたの立場は今後考慮します」と書いてあるのです
そうでしょう、まだ考慮してないから、こうなるんでしょうね
- ツァーレフやザハルチェンコは知人でしたよね
祖国を裏切ったサルドと面識があるそうですね
なぜ、彼らがあんなことをしたのか、貴方には分かっているのでしょうか?
- どう言えばいいんだろうか?
ツァーレフのことは知っていますが、特に親しいというわけではありません
実際にはあまりよく知らないんです
ザハルチェンコは、もちろん閣僚会議で見かけました
そして、彼らはロシアの協力者であり、協力者は敵よりもたちが悪い
彼らは裏切り者です
それ以外に表現のしようがない
- まだロシアにいる知人が、ロシアを支援し、貴方に何らかの影響を与えようとしている可能性はありませんか?
- ロシアには知人は一人も残っていません
侵攻初日に、ロシアの連絡先をすべてブロックして、誰からも電話が繋がらないようにしました
- たくさんいたのですか?
- いいや、指で数えられるくらいです
- 反対側を支持する人たちだったのでしょうか?
- いや、ダイビング関係で、プライベートな知人であるのに違いはないのですが......
まあ、私はダイバーでダイビング関係の知人もいるんです、政治じゃなくて
それでも、まあ、ロシアの番号は全部ブロックしたんです
- そういう人たちの中に、政治家はいたのでしょうか?
- マイダンの後、ロシアに逃げた人たちとは連絡を取っていません
マイダンの後、私は一日もウクライナ領から出ませんでした
みんなが逃げたとき、私は逃げませんでした
逃げ出した人たちの誰とも連絡をしていません
- この長い期間(8年間)、彼ら側からのコミュニケーションの試みはあったのでしょうか?
- そうでもないんです
- ロシアに対するあなたの態度は、第一に2014年の出来事の後、第二に2月24日の出来事の後で、何らかの変化があったと言えるでしょうか?
- それはそうでしょう
ロシア連邦の指導者がこのような事をやった以上、私たちにもはや共通の過去はなく、異なる未来があるだけです
住宅が爆撃され、国が攻撃され、子どもたちが殺された...
マリウポリ、ハルキフ、ブチャが思い出されます
彼らは第二次世界大戦中のナチスよりもひどい振る舞いをしています
そして、私たちはドイツのファシズムと戦争し、今はロシアのファシズムと戦争しています
- 1ヵ月以上軍政を担当されていますが、その覚悟はありますか?
- 残念ながら、戦争はすぐには終わらないと思います
停戦といっても、オーク側では次の段階への準備になるでしょう
だからこそ、私たちはより強くなり、準備を整え、自分たちの力を頼りに、そしてパートナーたちの助けを借りて、力の限りの反撃しなければならないのです
私は、制裁の効果をあまり信じていません
制裁は確かに効果的だが、ロシアはアジア的なメンタリティを持っているということです
彼らはおもちゃの粟を食べてでも「聖なるロシアのために」、つまりプロパガンダで頭に叩き込まれた何らかのイデオロギーのために、戦うはずです
私はウクライナ軍とその兵士の有効性だけを信じ、この土地で死んだ占領者の棺の数の分だけ戦争の真の終結に近づくと考えています
- あなたは、自分が信じていることが実現しない可能性を許容していますか?
マリウポルに起きたこと、今ハリコフに起きていることが、クリヴィー・リフにも起こるかもしれないと考えることはありますか?
- 私たちは生まれ育った土地の隅々まで、最後の最後まで戦い抜くと理解しています
ですから、私たちはどんなシナリオでも1メートル単位で戦います
- 提案、呼びかけ、アピールのテーマに戻りますが、ロシアはあなたを裏切り者とみなしていると思いますか?
この戦争におけるロシアにとっての成功は、軍事行動だけでなく、いわゆる政治的エリートの代表者にもかかっていたと考えています
貴方に歓迎され、支援されることを彼らは期待していたのでしょうか?
- 私はイデオロギー的にも敵視されているでしょう
なぜなら、社会を支えるそのような人々の声を私が聴いていることを、敵は理解しているからです
そして同時に、私の何らかの支援も期待していなかったと思います
私は2018年からロシアの制裁を受けていますから
2018年にメドベチュクがやってきて、彼が南東部政治の主役になったと言っていました
彼が中央から指示を受けているので、みんなその指示に従うように、とアナウンスしていました
- 「中央から」?
- まあ、もちろんモスクワからです
賛成する人もいれば、反対する人もいました
その時、彼は私にこう言ったのです
「南東部にお前の居場所は無い」
私も無礼で対応しました
それで、メドベチェクはどこかに電話をして、翌日、メドベージェフから私がロシアの制裁対象になったという法令が出てきたのです
それで、私はもう4年間もロシアの制裁を受けています
そんな経緯があったので、私のサポートをあてにしていたとは考えにくいのです
- OPZJのような政党の活動をどのように捉えていますか?
OPZJ:ウクライナ野党連合。裁判所の決定により2022年3月19日に活動禁止。
- 今、この国に政治はあってはならないと思っています
ゼレンスキー大統領を中心に、そしてウクライナ軍を助けるために、誰もが権力の垂直統合のために団結すべきです
クリヴィー・リフのOPZJについてはどうでしょうか
OPZJの州議員と市議員は党とOPZJを離れ、RNBO(ウクライナ国家安全保障・国防会議)の決定の4日前に「クリヴィー・リフのために」「ウクライナのために」という派閥を立ち上げました
まあ、彼らは結局のところ、クリヴィー・リフなのです......
私がそこにいなくてもいいと思いますか?
もちろん、そんなはずはありません
例えば、クリヴィー・リフで私がRNBOを無視したら、国家レベルではどのような意見になるでしょうか?
当然、これも同じことです
それに、彼らのリーダーであるアンドレイ・ユリスは、すでに2日目からマシンガンを持って防衛に当たっています
- ロシアとの和平を原則とする政治勢力に未来はあると思いますか
また、一般論として、ロシアとの平和は可能なのでしょうか?
- いいですか?私たちは皆、平和が必要だと考えているんです
一つ質問ですが、どのような条件なら平和なのでしょうか?
ウクライナの条件、我々の条件での平和、我々の国土の保全、我々が持つべき発展のベクトル
(我々が目指すべき発展のベクトルはヨーロッパです)
それはもちろん、当然です
すでに、ロシアとは共通の過去はない、彼らがそれを消したと私は言いました
彼らは、大量虐殺でそれを消したのです
今は、私たちには異なる未来があります
私たちは、共通のものを無くすために、非常に多くのことをしなければなりません
例えば、私たちにとって戦勝記念日はとても神聖な日です
- 祝杯をあげるのでしょうか?
- 戦勝記念日は聖なる日です
今でも聖なる祝日だと思っています
つまり、祖父はプラハに、2番目の祖父はベルリンに行ったのです
そして、忘れてはならないのは、前線が2度にわたってわが国を縦断したことです
一方向にも、反対方向にも
第二次世界大戦では、1,000万人、それ以上のウクライナ人が亡くなっています
しかし、今日のロシアのプロパガンダは、戦勝記念日や5月9日を宗教化したとも言えるものです
そして今年、5月8日の戦勝記念日をヨーロッパとともに祝うことを、私の話を聞いてくださる方々に提案したいと思います
(注:ドイツの無条件降伏宣言を基準として、時差の関係で、英仏では5月8日、ソ連では5月9日が戦勝記念日となった)
この「オーク達の国」との共通点を無くしたい
私たちは彼らとは違うはずです
彼らが教義として掲げるイデオロギーを押し付けられてはならないのです
5年、10年、20年と時は流れ、5月8日の戦勝記念日に、南東部を含むウクライナ全体が祝杯を挙げることでしょう
今日のロシアのナチズムと共通するものは不要なはずです
- ご自身では、戦争に対するこのような反応を予想されていたのでしょうか?
私はあなたを見ていて、この役割はあなたにとって意外なものなのです
オレクサンドル・ヴィルクルが、今のような役割を果たすとは想像もしていませんでした
- このような状況で、誰がどのような役割を担うことになるのかなんて、多分、誰も想像できなかったでしょう
誰かがサブマシンガンを拾い上げ、まさに今、塹壕の中にいるのです
それもまた、その人の意外な役割です
私は軍政のトップという非日常的な役割を担っています
マリウポリから避難する人々を運ぶ救急車やスクールバスのように、爆撃を受けた人々の避難に携わる人がいますが、それも意外な役割です
今の時代、誰もが自分のできることで戦っています
これまでどのような仕事が向いていたか、向いてないかは問題ではありません
今日は、全員ができるだけ効率よく、自分のできることをすべて出し切り、勝利に近づかなければならないと考えています
- あなたは何を信じていますか?
- ウクライナの勝利を信じています
そうでないわけがない
- 勝つためには何をすればいいんでしょう?
領土を解放して、モスクワに到達する必要があるのでしょうか?
あなたの理解における勝利とは何ですか?
- 私が考えるに、勝利とは、国際的に認められた国境内で祖国の自由と独立を守ることです
そして、それは誰かに言われてやることではないのです
ウクライナは必ずやEUに加盟し、文明社会の一員となり、ヨーロッパの文明国として発展していくと確信しています
(終わり)
オレクサンドル・ウィルクル(1974~)
工科大学・大学院で採掘を専攻
本格的な政治参加は2005年~。2006年~人民代表議員(国会議員)。2012~2014年、副首相。
2014年以降も、議会でウクライナ語を拒否し、ロシア語で答弁していた。
2019年大統領選に出馬するが、落選し、政界を去っていた。
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