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アントン・ラエウスキー(2)
2016年3月4日 ラジオリバティー:(5,859 文字)
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ノボロシアのために戦ったプーチン嫌いのロシア人ファシスト
ロシア民族主義者アントン(彼は「ファシスト」と呼ばれることを気にしていない)はウクライナの戦闘に参加したことを後悔しており、分離主義者を監督したFSB士官とロシア軍について、スラビャンスクへのロシアの武器供給について、そして、なぜウラジミール・プーテンを信じていないのかについてラジオ・リバリティーに語った
ウクライナのATO(反テロ作戦地域)の兵士たちは、しばしばインタビューに応じ、ドンバスの最前線で何が起こっているのかを語っている
しかし、ロシア人兵士やロシア義勇兵の率直な証言は、比較的珍しい
2015年、「ノボロシア」のために戦場に行き、この戦争に幻滅したボンド・ロフスキフは、ラジオ・リバティのインタビューで「テレビでは、すでに大祖国戦争であるかのように映されているが、実際は非常にリアルな侵略である」
と語っている
「私たちがこの領土に入り、ロシア当局はテロを支援しているのだ
もし私たちがそこに行かなければ、もしロシアが民兵を支援しなければ、何千人も殺されることはなかっただろう、何も起こらなかっただろう
行ったその最初の瞬間から、もしここで誰かが私を殺すとすれば、それはウクライナ軍でも敵でもなく、民兵の誰かが酔っぱらって私を撃つときだけなのだと理解できた」と言っている
最近、もう一人の「民兵」であるオレル出身のアントン・ラエウスキーの証言が、SNSやオンライン出版物に掲載された
ストレルコフ・ガーキンと共にスロビャンスクにいた彼は、すぐに機動小銃小隊長に昇進し、負傷した
ウクライナのメディアでは、彼は殺されたとの報道もあった
アントンの評判が悪いのは、ネオナチの考えを隠さないからだ
左肩にヒトラーの大きな刺青、胸に鉤十字の鷲の刺青がある
バルカショフのRNE、ブラック・ハンドレッド、ボブロフ・シュルツのNSIなど、多くの右翼急進派組織のメンバーであった
アントンは、今は自分を国家社会主義者ではなく、正統派君主主義者だと思っているらしい
しかし、「ファシストと言われても、まったく腹が立たない」とも言う
では、なぜそのような考えを持つ人物が、ロシア・メディアが「反ファシスト」の戦いと呼ぶウクライナとの戦争に参加することを決めたのだろうか
アントンはドンバスに行く前から、サンクトペテルブルク(4年間住み、警備員として働いていた)でウクライナに同情的なウクライナ人のデータを集め、オデッサのアンチ・マイダンに参加していた
彼は、宗教の違い(彼はロシア正教会でウクライナ人はウクライナ正教派)と、ウクライナの民族主義者を反帝国主義者、アントン自身は帝国主義者ということでその選択を説明する
今、アントンはウクライナに戦いに行ったことを後悔しており、その経験をラジオ・リバティに話すことにしたのだ
ロシアの極右地下組織とロシア人の戦争参加についてアントンが語っていることは、間違いなく公共の利益となるので、このインタビューを編集することなくすべて掲載する
どこかの組織に属しているのですか、それとも一匹狼ですか?
最近まで、いわゆる全ロシア連合軍という、1924年にヴランゲル男爵が亡命して設立した最古の白衛団組織に所属していた
しかし、リーダーであるイワノフと共通項を見いだせなかったので、この組織を辞めた
最近、オレールのロシア連邦調査委員会から呼び出され、282条と意図的扇動の刑事事件の証人として尋問された
すぐに上司(注:イワノフ)に情報支援を依頼したところ、ROVSの公式サイトに「調査委員会が私を証人として召喚した」という情報が掲載された
イワノフは、「そんなことは関係ない、何年も前のことだ、その時お前はまだ組織の一員ではなかったのだから、話し合いで解決すればいい」といって、拒否した
支援を断られたので、大声でドアを叩いて組織を去ることになった
どんな事件ですか?
街角の落書きについて質問されたんだ
「オレールはロシアの街だ」
「チェチェン人を全員追い出せ」
「プガチョフ、オレールは共にいる」
それらの落書きは、チェチェン人がロシア人の若者を殺害したプガチョフの民族間紛争に関連している
数年前、オレールには、プガチョフの住民を支援し、すべてのチェチェン人の立ち退きを要求する看板があったんだ
私はこの刑事事件の目撃者でしかなかったが、警察当局が何をどうやるかは知っている
私が主犯格にされるかもしれないと思った
つまり、あなたが書いたと思われているが、他に容疑者がいるということですか?
弁護士もいないし、事件のこともよく知らないし、他に関係者がいるのかどうかもわからない
どうやら、私が主犯にされているようだ
警察当局が私を黙らせ、締め上げたいと思うのは当然だから
特に、ドンバスから帰国後、SNSのVKontakteに投稿し、インタビューに答えてドンバスの実情を語るようになったことを考えれば、なおさらだろう
だから、警察は私を黙らせることに興味があるのだと思う
つまり、この古い事件を口実に?
そうです
アントン、あなたはずっと、確信犯的なナチスでしたね?
なぜ、そのような信念を持つようになったの?
初めて国家社会主義に触れたのは、高校生の頃だ
当時はスキンヘッド運動がとても流行ったが、今では衰退してしまった
その時初めて頭を剃り、サッと手を挙げてアーリア人の敬礼をするようになり、「黒人」というスラングが嫌いになった
(注:ソ連崩壊後、露の若者たちの間でネオナチが盛んになり、スキンヘッドの集団がいくつもできた。当時、日本のニュースでも時々紹介されていた)
それが、最初の民族間闘争の始まりだった
ビラや雑誌、そして人気のオーディオカセット「スキンヘッズがやってくる」など、いろいろなものがあった
でも、それは全部学生時代の話だ
それから、人を殴っても政治的な目的は達成できないことを理解し、イワノフ・スハレフスキー人民国民党やロシア・ターゲット青年支部など、国家愛国的な政党組織を巡りながら大人になっていった
そして見つけたのが、バルカショフのロシア民族統一の組織だ
兵役前にそこにいた
この組織はキリスト正教の思想を模倣していて、実際には全体主義の一派であり、そこには正統派など存在しなかった
異端の上にあるものは異端であると確信したので、その組織から去るしかなかった
バルカショフは、支配下に組織を作り、それを利用して、ロシア人の若者の民族感情をあおり、事実、彼は政党を作り上げた
ロシア国民統一党:アレクサンドル・バルカショフが創ったロシアのネオナチの民兵組織
-デムシュキンの「スラブ連合」には参加した?
スラブ連合:ドミトリー・デムシュキンの創設したロシアのネオナチ組織(2010年に解散)
スラブ連合はない
デムシュキンのPRキャンペーンのための組織だと聞いている
森の中に、いろんな子どもたちを集めて、みんなに同じ服を着せて、ナイフを持たせてビデオを撮らせ、ポーズを取らせる
それがその過激派と呼ばれるもの全てだ
ロシア行進曲に参加したこととか、それ以上のことは何とも言えない
あなたはとても注文の多い人ですね
あなたに合う民族派団体は一つもないのではないですか?
そう、以前から、多くの人に「アントン、自分で組織をつくれ」と言われてきた
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貴方はヒトラーや鉤十字の鷲のタトゥーなどで有名ですね。もうヒトラーのタトゥーを消したそうですね?
そう、ヒトラーは消した
残ってるのは胸の第三帝国のシンボルだけだ
ヒトラーを別の人物に変更したんですね?
ローマの戦士、軍団兵に変えました
あのようなタトゥーを入れるのは難しいかって?
刺青屋に行って、「肩にヒトラーを彫りたい」と言うだけです
多分、タトゥーアーティストなら誰でもやってくれるだろう
タトゥーパーラーは商売だから、客の希望は神聖なんだ
金のためなら何でもするだろう
価格は?
2011年は約2万ルーブルだった
ロシア人の主な敵は「外国人」、特にユダヤ人であると、今でも確信しているの?
正直なところ、そうです
貴方は働いていますか?
それとも政治闘争だけをやってる?
私はどういうわけか生き残ったので、生きるために、食料のために、お金を稼がなければならない
そしてサンクトペテルブルクに住むには、アパートを借り、服を着て、靴を履かなければならない
仲間の国家社会主義者たちも警備会社で働いているのですか?
私が所属している、ディミトリー・ボブロフのNSI(人民社会運動)のような組織では、警備の仕事だけでなく、工場労働者もいるし、専門の弁護士もいます
国家社会主義者は労働者階級だけではありません
そう、労働者階級が中心だが、ホワイトカラーもいます
NSI(人民社会運動):ディミトリー・ボブロフ(通称、シュルツ)の組織。2015年にサンクトペテルブルグ検察庁に過激派団体として認定、活動禁止命令が出ている。
お金持ちもいれば、経営者や金融マンもいる
もちろんです
国家社会主義者の考えを共有するロシア人の数がどれくらいいると思っていますか?
例えばオレール(人口約30万人の小都市)では?
国家社会主義の見解は、ロシアの過去の歴史的現実に照らして、右翼界隈では極めて不人気なイデオロギーです
しかし、不人気なイデオロギーだからこそ、信奉者の中には最も過激で、最も絶望的で、最も極端なな過激派がいます
そして、国家社会主義者は、その思想の過激さだけでなく、オレールをや他の場所でも、殺人やテロ行為などの活動の過激さによって区別されているからです
いわゆる「オルロフ・パルチザン」の事件、アルメニア人の殺人事件、アルメニア人のカフェの爆破未遂事件などがあります
小さな爆発で、みんなが助かっている
いずれにせよ、国家社会主義者は、その攻撃的な活動によって区別されています
だからこのイデオロギーはあまり人気がないのでしょう
国家社会主義者であることを貫くためには、多くのことを諦めなければならないからです
国家社会主義は過去のものとなったのでしょうか?
イデオロギーの面では軟化していますが、行動や手段という面では軟化していません
宗教上の理由で軟化しているのです
主な国家社会主義者のバックボーンは新異教徒的な考え方です
彼らは様々なスラブの神々を崇拝しています
しかし、私は今でもロシア正教徒であり、モスクワ総主教団の信奉者だと思っています
私は教会に通っているわけではないですが、信徒です
スラブの神々:東西スラブ民族、キーウ、ルーシなどいくつかの系統の神話と多数の神々が存在する
そして正統派の観点から、国家社会主義をやめ、ロシア右翼運動の中で最も受け入れられやすいイデオロギー、すなわち君主制の政治形態が、国家社会主義よりもロシア人の本質に近いと判断したのです
すでにロシアは君主制です
プーチンは皇帝であり、16年間支配しており、その座を譲るつもりはありません
しかし、プーチンもあまり好きではなさそうですね?
ああ、このプーチン様を、一体誰が好きなのだ?
86%、VCIOM調べ
誰でもこの選挙がどのように行われ、どのような「メリーゴーランド」があり、どのように票が操作されているかを知っている
だから、逆に、100%ではなく86%だというのが驚きです
プーチン皇帝に何か問題がある?
私はプーチン皇帝に投票したことがありません
私はいつも友人や知人に、全員反対か他の候補者に投票するように働きかけ、プーチンには投票していない
エリツィンの子分
それ以外、何か言う事があるだろうか?
全部筋書き通りだ
エリツィンの後継者
ロシア連邦の経済が回復したとか、権力の縦割りがきつくなったとか、軍需産業が発展したとか言われているが、全くナンセンスだ
全ロシア軍に関していえば、セルジューコフの一件くらいだ
注:2012年当時の国防大臣セルジューコフの汚職スキャンダルと、スキャンダルを理由とする解任。
正直、政治の素人である私が言うのもどうかと思いますが、私はプーチンを信じていないのです
ヴォルゴドンスクや他の都市で起きた、チェチェン共和国の武装勢力によるものとされているあらゆる種類の爆発は、実際、FSBの仕業であることは間違いない
ヴォルゴドンスクのテロ:1999年9月16日のテロ事件。19人死亡、89人入院。
潜水艦クルスク、モスクワでノルドオストの上演中にテロで過激派が侵入し人質を取った時、我々のFSBはどこにいたのか?
原子力潜水艦クルスクの演習中の事故:118人が死亡。ダゲスタンの自爆テロという情報が流れた(後に否定された)。
VKontakte(ロシア人がよく使うSNSアプリ)に何かを投稿した罪で16歳の少年を282条で投獄するくせに、モスクワで過激派に数十人の人質を取られていたとき、勇敢な我々のFSBはどこにいたのか?
明らかに全て仕組まれたことであり、実際、プーチンは人民の敵、ロシア国民の敵だ
国民に不利なことばかりしている、それは明らかだ
国民の敵だと考えているにもかかわらず、プーチンのための戦争で、プーチンのために貴方はドンバスに行きましたね
もしかしたら、命を捧げる覚悟すらできていたかもしれない、傷つきましたか?
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今回のウクライナ南東部での戦争について、私は自分の考えを改めた
(注:今では、アントンは「ウクライナ南東部での戦争」だと認識している)
この戦争は、ロシア連邦だけでなく、両国の治安当局と政治家が示し合わせて始めたものだと考えている
ガーキン=ストレルコフ(イゴール・ガーキン)は、モスクワの言いなりだった
スラビャンスクの混乱があったこと、美しいスローガン、ツァーリ独裁の復活、ロシア正教、その他全て、右翼のロシア愛国者を仲間に引き込み、ウクライナの南東部に誘い込み、この軋轢戦争で皆をすり潰すための餌でしかない
特務機関が仕組んだ純粋な罠だった
だから、この戦争に対する考え方がすっかり変わってしまった
ウクライナ寄りの立場になったわけではなく、どちらかというと中立的な立場で、今はどちらにも与しない
この戦争は止めなければならないし、平和でなければならないと思っている
私は平和に賛成なんだ
(つづく)
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