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王子、ロシア人、アルミ箔の王冠:陰謀論が導くもの(2)

12月26日 モスクワタイムズ:(3,773 文字)

加速するグローバル化

コロナ大流行とそれに関連した連邦・州当局による厳しい規制は、社会の過激化に好条件をもたらした
あからさまな人権侵害という共通の惨劇によって、「コロナ反体制派」、反ワクチン派、ライヒスビュルガーなどの右翼過激派、極左過激派、反ユダヤ主義(ソロスとロスチャイルドが主導するというユダヤ陰謀論)、その他の馬鹿げた陰謀論の支持者たちが結集した

これらの思想の担い手は、シュトゥットガルトに出現した「クエルデンカー」(Querdenker)という新しいグループを形成し、その後全国でデモを行った
過激な陰謀論や極右思想がデモ隊の間で盛んに流布され、その中でライヒスビュルガーは特に影響力を持ち、パンデミックの時期にその支持者は劇的に増えた
2020年8月29日、数十人(主にライヒスビュルガー)が議会議事堂の階段を占拠し、警察に阻止されたデモは、最近の事件と関連して記憶されることが多い

そしてこの事件は、明らかに2021年1月6日にトランプ支持者によるもっと注目された国会議事堂の襲撃事件と類似性がある
米国民主党の政治家や映画スターからなる小児性愛者の悪魔崇拝者による秘密政府が世界を支配し、ドナルド・トランプがそれと戦っているという、米国で最も人気のある陰謀論--Qアノンの信奉者たちが関与しているのだ

彼らは、コロナのパンデミックは秘密政府の産物であるか、全く存在しないと確信しており、ワクチン接種やマスクの着用に反対していた
 そう、ドイツの陰謀論者は、アメリカの同志たちからインスピレーションを得ていたのである

今年4月、ドイツは、ライヒスビュルガーや反コロナ規制・反体制派によるカール・ラウターバッハ保健大臣(ドイツ社会民主党)誘拐計画を阻止している
彼はパンデミックの最中、最も厳しい規制を求める運動を行っていた
共謀者のチャットグループには約70人が参加しており、捜索の結果、22丁の銃器、現金、金塊、電話、偽造ワクチン接種証明書を押収した
また、彼らはエネルギー・インフラを攻撃し、住民を混乱させ、国の権力を掌握することを計画していた
このように、最新のライヒスビュルガーの陰謀論は決して目新しいものでも、独創的なものでもない

陰の軍団

警察や独連邦軍内に極右グループが存在していたことは、その都度懸念を呼んできたが、独当局は軍や警察の過激化は組織的なものではないと主張し続けている
2017年、ハンニバル・ネットワーク事件では、ドイツ、オーストリア、スイスの多数のチャットグループが摘発されたが、そのメンバーは武装クーデターの準備をしていた

ハンニバル・ネットワークには、独連邦軍の精鋭部隊に所属する多くの兵士、警察・軍事団体「Uniter」のメンバー、警察官、予備役、そして憲法秩序保護局のメンバーまでもが含まれていた
さらに、このネットワークに参加していたメクレンブルク・フォアポンメルン州の右翼過激派グループ「北欧十字軍」は、「Xデー」における政敵の大量殺人を計画し、約25000人の名前と住所を敵としてリストアップしていた

治安部隊のメンバーであるこのネットワークは、武器や弾薬を容易に入手でき(注:実際に必要な弾薬を準備していた)、射撃場で訓練を受けていた
さらに、彼らの多くは「サバイバリスト」と呼ばれ、食料、燃料、発電機を備えたバンカーを自宅に設置し、弾薬、水、燃料のための特別倉庫を設けていた

近年、ドイツの警察官が関与するスキャンダルは最早珍しくはない
彼らは陰謀を企てるのではなく、WhatsAppグループを通じ、外国人嫌悪や右翼的な過激派資料を交換するのである

ライヒスビュルガー・グループに警察官と軍人が加わっていたことで、ドイツの治安部隊が社会を守るどころか、社会に危険をもたらしているとして、それを信頼できるのかという議論が起こっている
ナンシー・フェザー内務大臣は、武器にアクセスできるすべての組織に対し、「よく観察」する必要があり、「クーデターを夢見て民主的な秩序を破壊しようとする者たちに、公務員の居場所はない」と述べた

ナンシー・フェザー内務大臣は、刑法の改正に取り組んでおり、武器の販売を規制する法律を強化したいとも付け加えた
彼女の同僚であるニーダーザクセン州内務大臣のボリス・ピストリウスは、警察内の「文化的変革」を要求している
連立与党も、法執行官の採用について追加チェックを導入し、職員全般の審査要件を強化する可能性を議論している

ロシアが関与しているのか?

ヨーロッパの極右の間でプーチンに人気があるのは、何も今に始まったことではない
裸で馬に乗り、国の秩序に強い影響力を持ち、侵略から主権を守る「カリスマ的指導者」という、ヨーロッパの官僚たちが切実に求めているものを、プーチンはすべて兼ね備えているのだ
彼らは、プーチンとロシアを反リベラルのオアシスとして、幻想を抱いている
クリミア併合後、アレクサンドル・ドゥーギンとそのユーラシア主義思想は、ドイツを含む右翼急進派のフォーラムや会議において頻繁に歓迎されるようになった

PEGIDAのデモには、「DNR(ドネツク・ルガンスク)」の旗や「Putin, hilf uns」(「プーチン、私たちを助けて」)というポスターがよく掲げられていた
反米主義、NATO批判とドイツの同盟離脱要求、EUを失敗した実験と否定するほどの反EU主義ドイツ右派の伝統的な立場は、クレムリンの政治主張にほとんど呼応しているのだ

右翼ポピュリストAdGとモスクワの関係は、長い間、精神的、イデオロギー的なだけでなく、かなり物質的、実利的なものでもあった
その党首やAdGの議員は、ロシア側からの見返りのあるロシアや併合されたクリミア(ドイツの政治家にとってはタブー)訪問を繰り返し、反ロシア制裁の解除を主張し、プロパガンダ・メディアであるSputnikやRTに協力している

「AdG(ドイツのための選択肢)」はライヒスビュルガーと関係があるのだろうか?
しかし、12月の捜索と逮捕の後、AdGはライヒスビュルガー運動と距離を置き、AdGとテロリスト集団の関わりを否定している

同時に、AdGの政治家たちは「老人一斉検挙」「美しい演出」「見世物」と揶揄し、「『右翼の脅威』を膨らませようとする試みはますます不条理になっている」と指摘している
いずれにせよ、社会民主党、緑の党、左翼党の代表は、すでにAdGを禁止する手続きを開始するよう要求している

ライヒスビュルガーはロシアとつながっていて、陰謀家たちは実際の援助を期待していたのだろうか?
ハインリッヒ13世がロシア総領事と計画を共有していたことは考えられるが、このような本家本元のグループで武装クーデターに参加するというアイデアを彼らが熱狂的に受け入れる可能性は極めて低い
クレムリンは情報、政治、その他のハイブリッドな手段で欧州情勢を不安定にしようとしているが、ライヒスビュルガーのような仲間は必要ないのだろう
陰謀論のプリズムを通しての独国内外の情勢認識は、この王子のパワーバランス評価を誤らせていた

この出来事に対するロシアメディアの反応が注目されている
一部では、起こったことを「見世物」であり、野党幹部の解任条件を作ろうとするフェザー大臣のPRであるとし、「共謀者対策という口実で反政府デモの主催者に対する弾圧措置が強化されるだろう」と指摘する声もある
また、弱体化したドイツ政府が、望まれないものに対して再び手を緩めるために行った「新たなライヒスターク放火事件」に例える人もいる

ライヒスターク放火事件:ナチスの権力掌握の後押しとなった1933年の国会議事堂焼き討ち事件。

「反ロシア政策を認めない親米派政権が、ゼレンスキー政権や移民のドイツ入植、その他非人道的なグローバリズムの流れに反対する反体制派に嫌がらせをしようとしている」という記述もある
このようなロシアメディアの評価は、AdGのメンバーだけでなく、ドイツの「クエルダンカー」たちにも歓迎されるかもしれない

では、結局クーデターが起こったと言えるのだろうか?
いや、いくらドイツ国内の社会不満の程度を誇張する人がいても、明らかに彼らの思想はドイツ社会では広く浸透しておらず、その行動が民衆の蜂起につながることもないだろう
しかも、国家機関を乗っ取るには戦力が不足し、軍隊の支援にもほとんど頼れなかった
とはいえ、武装した不十分な集団がテロ行為や暗殺未遂を組織し、人的被害を出した可能性は十分にある
不確実性と新たな脅威は、世界中の人々に恐怖を与え、過激なイデオロギーや攻撃的な陰謀を広める肥沃な土壌となっており、最近、過激なイデオロギーと陰謀論の人気は驚くほど高まっている

しかし、人々がビルゲイツとWHOが人々にチップを埋め込んでいるというアイデアに興味を失い、我々の哀れな星に5Gタワーから覚醒剤拮抗薬が注入されるまでは、この問題は依然として法執行機関によって対処されなければならないだろう

(終わり)

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じゅん
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