パトリック・ランカスター
4月18日 GRID:(5,570文字)
ロシアお気に入りの戦争プロパガンダはミズーリ州出身の海軍退役軍人
プーチンの侵攻によって、独立系ジャーナリストを自称するパトリック・ランカスターは、ようやく脚光を浴びるようになった
3月下旬、プーチンによるウクライナ侵攻はうまくいっていなかった
クレムリンは、西側諸国によるロシア内での戦争報道や、ロシアの失敗した進撃や広範な残虐行為に関する報道を極力封じ込めた
そして、ロシアが占領したウクライナ地域で、ウクライナの過激派がウクライナ人女性を残虐にレイプして殺害し、その死体に傷をつけたとする「独占」報道がなされた
映像では、特派員が親露分離主義者の兵士に続いてマリウポリの学校の地下に入り、女性の遺体を見つける
遺体の両手は縛られ、頭上にはビニール袋が被せられているように見える
遺体の一部はウクライナの軍服とされるもので覆われ、鉤十字が遺体の皮膚に焼かれているか刻まれているように見える
このビデオは、凶悪犯罪の犯人を特定する証拠はなく、ウクライナ当局は、ロシア軍による犯行だとし、他のロシア支配地域で同様の残虐行為の証拠が表面化していることを指摘している
しかし、ロシア初報道となるこの記事に、それは関係ない
彼らにとっては、ウクライナの残虐行為であり、プーチンが主張するウクライナの「非ナチ化」の使命を強調するものであった
現場にいた記者はロシア人ではなく、ミズーリ州生まれのパトリック・ランカスター(39)
米海軍情報部の退役軍人で、自称「独立系、クラウドファンディング・ジャーナリスト」である
長年、彼はクレムリンのシナリオに有利な演出された証拠に見えるものを用意するために、現場に最初に立ち会うコツを示してきた
また、2020年大統領選挙をバイデンが盗むといったデマを流すアレックス・ジョーンズのラジオ番組に出演し、米国陰謀論愛好家の聴衆を口説いたこともある
ランカスターの作品は、ロシア国営メディアの定番となっている
彼の映像や解説は、ロシア国営英語チャンネルRT(旧称Russia Today)、ロシア国営ロシア語チャンネルの代表格「Russia-1」と「Russia-24」、露国防省が所有するチャンネル「Zvezda」に登場する
ウクライナの露支配地域に出入りし、唯一の英語記者として活躍している
動画では、ロシア軍に帯同しているように見えることもある
テレグラムチャンネルの最近の動画では、ロシア軍兵士がお互いを認識するために使う白い目印を腕と足に巻いている
これをしなければ、ウクライナ兵と間違われて撃たれる可能性があるとカメラに伝えている
テレグラムでは、親ロシア派のトロールがランカスターの活動を支援するようユーザーに呼びかけている
ロシアが侵攻する直前、ランカスターは、ウクライナが行ったという3人の民間人への「テロ攻撃」をいち早く報道した
その報道では、ロシア軍の主張を無批判に繰り返している
ウクライナの破壊工作員が道路脇で即席爆弾を爆発させたというものだ
この場合、現場はあまりにも適当に作られたようでランカスター自身の映像が明らかにFakeである証拠を捉えている
車内にある遺体の画像の中の、ある「犠牲者」の頭蓋骨の前側に、検視されたものでなければあり得ないほどの綺麗な切り傷があることが判明したのだ
(注:つまり、検視の終わった遺体を車に乗せて撮影したのである)
本誌は当時、専門家にそうであることを確認し、その後の報道で、これは簡易爆弾による攻撃の証拠ではなく、死体安置所から持ち出された遺体のようだ、という真実が証明された
2014年、ランカスターはロシアの対空ミサイルによって撃墜された民間旅客機の調査の信憑性に異議を唱えることを主張する怪しげな作品などを、この地域からビデオを撮影し、投稿してきた
ランカスターは、プーチンとその仲間が、ロシア国民とそれ以外の人々に対し、プーチン支持を維持するために長年利用してきた宣伝者の緻密なネットワークの一つの拡散点である
ウクライナ侵攻(2014)以来、クレムリンは強力なメディアキャンペーンで、ウクライナをナチスに蹂躙される、ロシア軍の解放を必要とする国として描いてきた
この戦略により、経済が悪化し、報道機関が放送を停止し、軍が莫大な損失を被る中でも、プーチンは支持率を高めている
ハートランドから
ランカスターはセントルイスで育ち、カトリック系私立高校に通った
2002年、卒業と同時に海軍に入隊し、バージニア州ダムネックの海軍・海兵隊情報訓練センターで学んだ後、空母USSキティホークでペルシャ湾、オーストラリア、韓国に派遣された
海軍の資料によると、彼は暗号技術者として働き、機密情報の取り扱い資格を持っていたようだ
海軍はランカスターの勤務を確認し、それ以上のコメントは控えた
本誌は、この記事のためにランカスター本人に取材依頼し、彼は同意したが、その後メッセージに返信が途絶えた
本誌はランカスターの友人や家族にも連絡を取ったが、ほとんどの人が彼について話すことを拒否するか、返事をしなかった
Linkedinでは、2006年に海軍除隊後、数年間、不動産業に就いている
2008年に米国の不動産市場が崩壊し、世界的な金融危機が発生したため、その後、サウスダコタ州の建設会社で短期間働いたことを、その会社のオーナーが証言した
その後、ヨーロッパに渡り、ベルリンでビデオ撮影に携わるようになった
2014年、初めて彼はウクライナを訪れ、クリミア住民投票を視察した
ロシア・メディアのインタビューで、現地で見たものは西側メディアで描かれたものと一致せず、それがきっかけで現地の様子を記録し始めたと語っている
初期のビデオでは、ランカスターは(現在とは)反対の意見に関心があるようで、この地域はウクライナの一部であり続けるべきだと考える複数の人々にインタビューしている
その間、ウクライナ軍とロシアが支援する分離主義者との紛争を撮影したビデオを、ロシア国営メディアRT(旧称Russia Today)に寄稿している
ランカスターのLinkedInのプロフィールには、スカイ・ニュースやトムソン・ロイターでフリーランスとして働いていたと書かれている
しかし、ロイターの広報担当者は本誌に対し、
「パトリック・ジョン・ランカスターは、いかなる時もロイターの社員、フリーランサー、ストリンガーではなかった」と証言した
ロイターは2010年代半ばの短い期間に、ウクライナにいるランカスターから少数のビデオクリップを購入している
しかし、これらのビデオクリップはロイターが依頼したものではないという
Sky Newsはコメントの依頼に返事が無かった
「パトリックは最初から妥協していたことを覚えている」
米国人映画監督兼作家であるデヴィッド・フェリスは、2014年にウクライナのドネツクにあるレッドキャットホステルを拠点とするフリーランサー・グループの一員として、ランカスターと出会った
無所属の若い無一文のジャーナリストたちは、街の反対側にある本物のホテルに滞在する歴史あるニュース出版社に所属する資金潤沢なジャーナリストたちから一歩離れていることで絆を深めたという
グループは一緒に仕事をすることはなかったが、気楽さと安全性のために、しばしば一緒に現場へ向かったとフェリスは言う
グループには他に、仏のフォトジャーナリスト、アントワーヌ・ドゥローネや、米国のジャーナリスト、クリストファー・アレンがいた
アレンは2017年に南スーダンで殺害されている
ドゥローネは、水曜日に電話の連絡で、彼が友人グループの一員であることを証言し、フェリスの説明のどの部分にも異議を唱えなかった
「私は(パトリックが)最初から妥協していたようなものだと覚えています 」とフェリスは言う
「彼は定期的にロシア・トゥデイに売り込んでいました。」
イデオロギーや職業上の違いはあっても、戦時下の民間人に対する共感と、個人的な危険の共有体験によって、グループは親密な関係にあったとフェリスは言う
「正直に言えば、私たちは皆、この戦争(2014からのドンバス紛争)で人生を狂わされ、ウクライナの銃弾や砲弾を浴びる側になった人々の苦境に同情していたのです」と彼は説明した
しかし、その仲間意識は、アレン、フェリス、ランカスターが、ドネツク人民共和国(DPR)と呼ばれる親露派の分離主義者が支配する地域とウクライナの間の非公式国境で拘束された後、終焉を迎えたとフェリスは言う
翻訳者、フィクサー、警備員、そして本物の記者証もないまま、ウクライナの情報機関は記者たちを移動中の公共バスから引き出し、旧ソ連のホテルで一晩拘束したのだ
米国大使館が翌日、記者たちを脱出させたとフェリスは言う
しかし、ランカスターが「陰謀論者」「反帝国主義者」のポッドキャスターのインタビューを受けることに同意したことで、アレンが怒り出し、ホステルのキッチンで殴り合いの喧嘩になった、とフェリスは回想する
「クリスはパトリックの報道がジャーナリズムの規範を守っていないと異議を申し立てていた」とフェリスは言う
喧嘩の後「和やかな関係は、ほとんど終わりを告げた」
本誌は、ウクライナ当局による拘束や、米国大使館の介入の裏付けをとることはできていない
その直後、ランカスターはDPRに移住した
2017年には、同地出身のドネツク女性と結婚し、2人の子供がいる
ランカスターの結婚式は、ロシア国防省が所有・管理するZvezdaを含む複数の露報道機関により報道された
結婚式には、悪名高いセルビアの傭兵スナイパーデヤン・ベリックが出席し、彼は露軍のために戦い、多くのウクライナ人を殺したと主張している
「ジャーナリストを装う」
2017年、ランカスターがロシアを擁護する怪しげで不気味な話に参加した初期の例がある その年の7月、ウクライナ上空でマレーシア航空MH17便が撃墜され、298人が死亡した
その後の調査で、同機はウクライナの親露派分離主義者が民間機を軍事目標と間違えて発射したロシアのミサイルにより撃墜されたと結論づけている
ロシアはこの事故の責任を否定し、オランダが主導する調査に疑念を掻き立てようと何度も試みた
ランカスターは、オランダの調査に疑問を投げかけるビデオを制作するなど、積極的な役割を果たした
あるビデオでは、ランカスターは墜落現場で人骨の破片を偶然発見している
彼のビデオは遺族を怒らせ、オランダの調査団をいらだたせた
遺体回収を主導したマイケル・ピステッキーは、2019年にこう語っている
「あの米国人、パトリック・ランカスターは、ジャーナリストを装っている、
...私は彼らを分離主義者とは呼ばず、反乱軍でもなく、むしろ盗賊と呼んでいる
今は、彼らがMH17の撃墜に関与していたことを知ったからだ」
「ランカスターは2017年に墜落現場で骨の遺体を発見したと主張し、その後、オランダの法医学専門家が適当に仕事をしたと言っているんです
このように、近親者の気持ちを迷惑な形で弄ぶのです
まるで、遺体を回収するためにあまり努力をしなかったかのように」
ランカスターのインターネット帝国
ランカスターはその後、多くのSNSプラットフォームを巧みに利用し、世界中にコンテンツを発信し、世界的な視聴者を獲得してきた
Twitter、YouTube、Telegram、VK(ロシアのFacebookクローン)などで、約50万人のフォロワーを持つ ほぼ毎日、新しい動画を発表している
YouTubeの再生回数は3,000万回を超え、最も多くの人に視聴されている
ランカスターは、米国の超陰謀論者ジョーンズによってさらに勢力を拡大され、ランカスターを彼の番組 "Infowars "のレギュラー・ゲストとして起用している
ジョーンズは2020年選挙のトランプ敗北を覆そうとする「Stop the Steal」運動の主要な推進者である
彼の番組では、メジャーなニュース事件は米国民を誤解させ混乱させるための空想上の「偽旗」情報操作であるとよく主張している
ジョーンズはコメントの要請に応じなかった
ある訴訟では、ジョーンズ氏の弁護士は、合理的な人は彼(ジョーンズ)の大げさなレトリックを信じないだろうと主張している
「ウクライナにいる米国人レポーターがグローバリストのWW3 -ロシア偽旗作戦をリアルタイムで暴露する」と題された、ランカスターの「インフォウォーズ」で、ジョーンズは、保存可能な食品と栄養補助食品のバケツを売る広告の間に、ランカスターへの賞賛の声を送った
ジョーンズはあるエピソードの中で「彼は西側メディアが見せないものを見せてくれる」と言った
ランカスターには、「あなたは素晴らしい仕事をしてきたので、まるであなたをずっと知っていたような気がします 」と言っている
最近の「インフォウォーズ」の出演で、ランカスターはジョーンズの視聴者に 「自分で調べろ」と呼び掛けた
その画面上では、ジョーンズがランカスターのパトロン(ポッドキャスターに人気の資金調達プラットフォーム)を宣伝している
「自分で考えろ」
「西側の主流メディアが与える物語に耳を貸してはいけない。調査して事実を知ることです」
とランカスターは言う
(終わり)
参考:
ロシア政府の傘下にあるメディアにランカスターは所属している
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