ムティったらカラーフィルムを忘れてなかったのね。
きょうはドイツの話。個人的に驚いたことがあったので書き残しておく。
ムティとはアンゲラ・メルケル首相の愛称。
「あなたったら、カラーフィルムを忘れたのね」(意訳)とは、東ドイツの70年代の流行曲。ドイツ語のタイトルはDu hast den Farbfilm vergessen.
ベルリンで2日にGroßer Zapfenstreichという式典があった。これは要するに「観兵式」と理解して良い。ものものしい言葉だが、ドイツでは普通に実施されている行事。 Großer Zapfenstreichはドイツ首相が退任するときの恒例行事となっている。
ぼくは暇つぶしに仕事のBGMとしてZDF(ドイツ最大の報道局)のGroßer Zapfenstreichライブを見ていた。すると、知ってるメロディーが聞こえてきた。
「あれ。。。この曲は、どこかで聴いたことある。なんだったっけかな?」と記憶を巡らせる。ZDFアナウンサーがNina Hagenと言ったのを耳にしてやっと思い出した。そうだ、この曲はNina HagenのDu hast den Farbfilm vergessenだ!
たぶん、この驚きを伝えるのは難しいだろう。感覚的にはイギリスの軍楽隊が公式の式典でイギー・ポップを演奏する、というと近いだろう。 [1]
または日本で言うならば、自衛隊の音楽隊が公式行事でブルーハーツを演奏する・・・みたいなイメージ。
[1] イギー・ポップって知ってる人いるのかなぁ。。
Nina Hagenは東ドイツ出身で、パンク歌手と分類されている。Du hast den Farbfilm vergessenは70年代のNinaの代表曲、というか、東ドイツ発の世界的流行曲。
東ドイツ地域ではいまだにDu hast den Farbfilm vergessenの歌詞を言える人が多いのだとか。
ぼくたち外国人は、ドイツ語の授業で習うことが多い。ぼくは、西ドイツはNenaの99 Luftballonsで東ドイツはNinaのDu hast den Farbfilm vergessenと、東西ドイツと関連づけて授業で習った。どちらも2重の意味がある歌詞とされている [3]
Du hast den Farbfilm vergessenはとにかくメロディと歌詞が強烈に頭に残る。外国人のぼくでさえ、歌詞の半分くらいを未だに覚えている。
歌詞だけではない。Nina Hagenの容姿もまた強烈。たしか、ドイツ語の授業で見たビデオはこれだと思う。
シンディ・ローパーみたいな外観をしてNinaがしゃがれた声で、頭に残るメロディを歌うのだ。忘れられるわけがない。
[2] 日本人でも知ってる人はちらほら居る
[3] ぼくはDu hast den Farbfilm vergessenのダブルミーニングをいまだに理解してない。
Du hast den Farbfilm vergessenとはそういう曲である。
リアルタイムでこの曲に触れていたメルケル首相にとっては、きっと思い出に残る曲なのだろう。
Großer Zapfenstreichで曲を演奏しているビデオがYoutubeにあがっている。この曲が持つ強烈なパワーと背景を知った上で、ぜひ見て欲しい。
ちなみに、日本のメディアではテレビ東京が報道してた。さすがテレビ東だ。報道の中で「退任式」訳を使ってたのは、少し疑問に思うけど。日本人にGroßer ZapfenstreichやMilitary tattooの意味を伝えるのは困難なので、退任式にしたのかもしれない。そう考えると良い訳にも思える。
これについてはBBC Japanも同じ訳をしてるので、暗黙の了解でもあるのかもしれない。
で、そもそもGroßer ZapfenstreichでDu hast den Farbfilm vergessenが流れた背景だけど・・・Großer Zapfenstreichでは「退任者」が選曲できるのだそうだ。
一つ知識が増えた。ありがとう、ムティ。そしてお元気で。