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幼少期エスカレーターで転けて

幼少期、スーパーのエスカレーターで転けたことがある。

それだけならまぁよくある話だと思うのだが、理由は忘れたが倒れてしまって背中を打ち付けてしまった。

中程での出来事だったが、どれだけ隣に立つ母親を呼んでも母は聞いてないのか無視しているのか前だけ見ていた。こちらを振り向くこともなかった。

立ち上がろうにも下は段差。階段は動いている。もし失敗したら下まで転がり落ちるのだろうか。上に付けば巻き込まれて事故になってぐちゃぐちゃなのだろうか。

怖くて泣き叫んでいたのに母は相変わらずこちらを向かない。

ああ、母は私のことなどどうでもいいのだ。

子供ながらにそう思った。

母は私が遊んでいるか構ってほしくて呼んでいるとでも思っているのだろう。

そういうときはこっちを見ないから。

悲しいけど、呼び続けた。手を伸ばしてもらえればなんとか立てると思ったから。でも無理そうだ。

そんなとき、下から物凄い音でエスカレーターを駆け上がってくる音が聞こえた。

上階に着く間際、お兄さんが抱き上げてくれて助けてくれた。

お兄さんは何も言わなかった。

表情は見えなかった。

母はなんてことなかったかのように「ああ、すいません」とだけ。

悲しんでくれることも、謝ってくれることもなかった。

「あんなに呼んだのに聞こえなかったの!?」
怒りを混じらせて聞くと「聞こえなかった」

私の声は親には雑音にすらならなかったらしい。
そう思ってから親に本当に相談したいことは相談しなくなった。


子供が小さいうちは、大丈夫だろうと思っても、手をつないでくださいね。

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