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笑うイエスとSさん

今年もあっという間にクリスマスがやって来た。
お世辞になったカトリックの修道士Sさんは、この季節になると毎年クリスマスのメッセージを作成していた。それをいろいろな人に手渡したり、送付したりしていた。押しつけがましさは一切なく、Sさんの人柄が伝わるユーモアたっぷりのエピソードや、友愛と優しさに満ちたメッセージだった。「今年のクリスマスのメッセージができましたよ」と渡してもらえるのは、毎年の楽しみだった。

ずいぶん前になるが、そんなSさんがいたずらっ子のような目をして手招きし、見せてくれたのがイエス・キリストの笑い顔のスケッチ画だった。それも微笑みではなく、大きく口を開けて笑うイエス。誰が描いた絵なのかわからないが印刷されたもので、長く大切にされてきたことは見てとれた。
イエスというとどうしても苦悩する姿が強調されがちだが、Sさんいわく「あれだけ弟子に愛され慕われた人は、きっと明るく温かい笑顔を見せることも多かったはず。険しい顔ばかりじゃないよ」と。
私もそう思う。

母国を遠く離れて、この日本で何十年も働き続けたSさんは、90歳を過ぎて昨年帰天された。もう新しいクリスマスのメッセージはもらえない。でもクリスマスの季節になるとSさんを思い出すし、Sさんのユーモアのある温かさや茶目っ気のある笑顔を懐かしく思う。 きっとこれからもずっと。

メリークリスマス。

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