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映画「ドリーム・シナリオ」と雑感
ニコラス・ケイジ主演の映画「ドリーム・シナリオ」を、Amazonプライムで観た。
ごく普通の暮らしをしている大学教授の
ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。
ある日、何百万という人々の夢の中に
一斉にポールが現れ、一躍有名人に。
━中略━
しかし、そんな夢のような日々は
突然終わりを告げる。
夢の中のポールが様々な悪事を働くようになり、現実世界で大炎上。
その人気は一転、ポールは一気に嫌われ者になり、悪夢のような日常が始まる。
何もしていないのに人気絶頂を迎え、何もしていないのに大炎上したポールの運命はー!?
ジャンル的にはサスペンスになるのだろうか。何だかとてもゾワゾワする内容なのだ。ゾワゾワするのは、リアリティと奇妙な違和感や人間関係の噛み合わなさが、観ている側をも何だか落ち着かない気分にさせるからだろうか。不条理劇と言われるのも、なるほどと思う。
だいたい何故、見ず知らずの人の夢にまでポールが出てくるのか謎だ。
理由不明のまま、ニコラス・ケイジ演ずるポールがとことん翻弄される。ポールは何ひとつ悪くないのに、そもそも何もしていないのにだ。
知人が夢に出てきて、夢の中で不快な言動をすると、なんかモヤモヤした気分になることがある。その知人には全く何の責任もなく、こちらが勝手に夢を見ただけだというのに。「本当はあの人、私のこと嫌っているのかな。そんな素振りを無意識が読み取って、夢を見せたのでは」あるいは「気づかないうちに、あの人に対して苦手意識があったかなぁ」なんて、自分勝手なこじつけや妄想も、ちょっとは浮かんだりするかもしれない。
とはいえ実際にあったことではないから、すぐに忘れてしまうものだし、夢の中の出来事が強いわだかまりとなって残ることはないだろう。通常は。
しかし、ポールの場合は違う。
社会の嫌われ者にまでなってしまうのだから。
ポールに「謝罪したらどうか」と提案する人もいたが、何もしていないのに、何に誰に謝罪を?謝罪とは何ぞや?という気持ちにしかならない。
頭で理解できていても、感情が受け入れられないってことは間々ある。でもポールは全く何も悪くないってことは、いくらなんでも理性としては誰もが理解できていたはず。
…なのだろうか??
昨今のニュースのあれやこれやを思い浮かべると、人間の理性ってヤツもそうそう当てにできないのでは…という気になる。集団心理だったり、自分は正義の側に立っていると確信しているとき等、簡単に吹っ飛んでしまったりしないのか。
自分自身はどうなのか。
そんなこんなを突きつけられて、いろいろ不安にさせられてしまう映画だった。
世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ。