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広報紙の表紙デザイン

皆さんは最近、雑誌を書店で購入されましたか。
プロが少なくない規模のお金と人員をかけて発行している紙媒体ですら、毎年その売り上げは右肩下がりになっています。

そんな世の中。仮に発行することが目的となってしまった町の「広報紙」が手に取られることは、果たしてあり得るのでしょうか。

ポストに入っている広報紙を手に取り、チラ見させ、次のページに誘導させるために、表紙は一層手を抜くことができません。

今回のテーマは「表紙デザイン」。私が表紙を整える際に考えているコトを共有します。



表紙配置例

〈おうじ議会だよりリニューアル号〉を例に、まずは表紙の要素を確認です。

  1. タイトルなどの共通デザインを配置する

  2. メインとなる素材(写真or画像)を配置する

  3. 特集の見出しやコピーを配置する。辺や角、メイン素材の余白部分が配置しやすい

  4. トンマナに合った書体や、文字サイズ、位置を調整。素材に文字が重なる際は、ドロップシャドウやフチを追加し、視認性と可読性を保つ

ガイドを活用する

画像のように、ガイドブロックで配置を考えるときもあります。

A4サイズの場合、8×5のコマで区分け。
タイトルを載せる白背景部分は10コマ分つかっています。
白背景の面積で印象は大きく変わります。

特集につなげる表紙

特集を掲載する際、表紙は特集に連動した素材をメインに取り扱っています。
一目みて、表紙→特集→定例記事の流れに読み手を引き込ませやすいので、1ページでも2ページでも特集がある際は、ぜひメインビジュアルに。研修資料からスライドをピックアップしています。

  • (左)異動後、後任の担当者(元デザイナー)がはじめて担当した給食特集。私の感性じゃ絶対つくれない表紙で、新しい色がついてワクワクしました。特集見出しをナナメに配置することで、アイキャッチを効果的にしています。また背景色もナナメ、カラフルにすることで、子ども向けのデザインに。

  • (右)ジュニアバンドが全国レベル。めっちゃ高い脚立から撮影しました。昔の表紙は思い返すと修正したい点がいくつも出てきますが、毎号毎号その時の環境で全力だったので、よきかな。

  • (左)まちの一大イベントも担当していたので、ガイド特集に。連携大学の学生さんに登場してもらい、企画や発信も一緒にやりました。右端の彼はのちに王寺町職員になりました。

  • (右)超広角レンズで訓練を撮影したい!の一心でめっちゃしゃがんで撮りました。仕上げる時間が足らず、コピーの数や配置に課題を覚えています。

意図を伝える表紙

表紙からその号に込めた思いを感じ取れる、そんな担当者の熱量を帯びた広報紙が大好きです。

  • (左)王寺町は毎年水害の不安にさらされており、増水時は職員たちが命をかけて水位対策を行っています。雨水期を前に、防災特集を組みました。川の氾濫を防ぐ、樋門(ひもん)ってご存じですか。知らない人のほうが多いですよね。なので表紙で解説しました。めちゃくちゃ反響あった号です。狙い通りだえっへん。

  • (右)町の広報紙を2017年にリニューアル&全ページフルカラー化した号の表紙。昭和36年の創刊号の下に、まちのコンテンツ名称をカラフルに配置。頭に思い描くものを実現する技術がともなっていなかったので、ジレンマをずーっと抱えていました。ちなみに私の手です。

  • (左)ワクチン。大変でしたよね。王寺町は月2回発行なので、ワクチン担当だった表紙の彼と二人三脚で、最新情報を校了ギリギリまで待って毎号仕上げていました。この表紙テーマは、「マジで大事な情報だから普段読んでない人もこの号だけはホント読んで・・・!」でした。この時期のきめ細やかな対応で、さらに読者が増えました。

  • (右)雨水期前の特集ふたたび。私が生まれる前の昭和57年に大規模な水害があったのですが、覚えている人も少なくなり、風化させたくないことから当時の写真自体を撮影し、表紙にしました。当時を思い起こす人、町の惨状をはじめて見る人。2018年のこの号で、町公式LINEを開設し、特集の最後に友だち登録を呼びかけました。ひと月で1000人登録、コロナ禍前には6000人、コロナ禍を経て11000人。人口24000人(スマホ所有18000人)ほどの町で、行動変容につながったはじめての号です。

【表紙配置例】の画像で説明しましたが、基本はメイン素材が主役です。しかし、テキスト(コピー)を一番目立たせたいときも。そんなときは組写真をよく使っていました。
特に(右)の組み写真は、コロナ発生の翌年。取材や特集も制限されており、この号は特集無し。
それでも町のみんなをつなぎたい思いから、コロナ後の町の様子を組み写真で配置。その中に、広報担当としての所信表明も明記しました。
読者アンケートではじめて、イチ公務員のコメントに反響があった大切な表紙です。

写真メインで季節や地域スポットも紹介できます。

  • (左)こいのぼりと電車を構図に入れたかったので、日中は10分に一回通る電車を見送り、4回目でようやく想定した写真が撮影できました。

  • (右)王寺駅前にあるベンチオブジェは、実は「OJI」と、王寺になっています。2階のペデストリアンデッキから見下ろした時だけ発見できるのですが、知る人ぞ知るスポットだったのでコロナ禍でネタがない時に紹介しました。


さいごに

冒頭。プロが取り扱う雑誌の売り上げ減少に触れました。
私自身も興味を持つ雑誌しか読みませんし、その雑誌もスミからスミまで一言一句読むことはないでしょう。

ハードルは高いぞと述べました。

けれどもご安心を。私たちが扱うコンテンツは、「地域」そのものです。ターゲットである読み手が暮らしている場所ですから、興味を引かせる素材は、町のそこかしこにあります。

近所のあの人が載っている。通勤路でよく見る景色の、見たことがない表情の写真がある。暮らしにかかわる大切な情報がわかりやすく掲載されている。すべてが町に対する「信頼」や「好き」を高めるものです。

広報を通して読み手のシビックプライドを高めれば高めるほど、町の解像度は向上し、毎号ポストに届くことが楽しみと思う住民さんが増えていきます。王寺町は住民の90%が広報紙を楽しみにしており、「広報の満足度」は町の施策で1位です。
結果、自走して町に関わる人たちが増え、町で新しい取り組みがいくつも生まれています。

今回共有したことは基本的なことですが、まずは手に取ってもらう最初の第一歩を目指して、改善のヒントになれば幸いです。

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