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YOUR/MY Love letterの良さを3つのポイントで振り返る【シャニマスコミュ】

 シャニマスユーザーに衝撃と感動を与えたイベントコミュ ‘YOUR/MY Love letter’。その素晴らしさを今更ですが3つのポイントで自分なりにまとめてみました。
 本稿によって皆様がYOUR/MY Love letterに感じた感情の整理に繋がれば幸いです。

①作中のモブ(=現実の私たち )にスポットライトを当てる

■アイドルを軸に描かれるモブキャラの日常

 YOUR/MY Love letterでは、名も無き人たち、有り体に言ってしまえばモブキャラたちにスポットライトがあてれられています。高校生から大学生、教師にWebデザイナーから中年のサラリーマンと彼らの属性はさまざまです。

 それぞれのモブキャラたちのストーリーは、アルストロメリアという軸によって語られていきます。バラバラに語られる彼らの話ですが、アルストロメリアとどう日常で関わっているのかが縦軸となって展開していきます。

 ある人はアルストロメリアのファンとして彼女らの活動を楽しみにしており、ある人はテレビに映った彼女たちを「最近流行ってる娘たちだな……」とぼんやり眺める。コンビニバイトの彼に至っては、アルストロメリアの大崎甘奈だとすら気がつかず接していましたね。

■個々が抱える自らの存在価値の揺らぎ

コミュ内に登場したモブキャラたちは、みんな共通した悩みを抱えています。ざっくり言えば「自分ってこの世界にいる意味あるのかなぁ……?」という悩み。

 例えば。Webデザイナーの彼女。ようやく1人で仕事を任された。後輩に指導する立場にもなった。ここから頑張っていくぞ……!と思った矢先に体調不良を起こしてしまう。それでも体にむち打って、「これは私がやらなくてはいけない」となんとか仕事を終わらせた!……が、上司から言われた言葉は「代わりに別の人がやったから。休んでくれて良かったのに」。
…何だ、自分の代わりはいるじゃないか。それじゃあ私の存在価値って何……?そして、テレビに映るアルストロメリアを見て「彼女たちじゃなきゃいけないと言ってもらえていいな」と感じる。

 あるいは、年配のサラリーマンの彼。娘は成人して家を出て一人暮らしをしている。便りがないのは元気な証拠とは言うがそれでも心配な者は心配だ。親が必要ない年齢なのはわかるが、さびしいものがある。娘にもう父は、つまり俺は必要ないのだろうか……?

 他のモブキャラたちも詳細は違えど「自らの存在価値」に対する疑問や自信を失っている姿が描写されています。

■作中のモブキャラは現実の私たちのメタファー

 これまで述べてきた、

・さまざまな形でアルストロメリアというコンテンツに触れるモブたち
・自己の存在価値に疑問を持つモブたち

というYOUR/MY Love letter内のモブキャラたちの描写。実はそのまんま私たちシャニマスユーザーにもピッタリ当てはまるんですよ。繰り返し描写されるモブキャラたちの姿を私たちは自分に重ねているんです。

 私たちはシャニマス、そしてそのアイドルたちとさまざまな形で触れて楽しんでいます。ゲームをやり、楽曲を聴き、ライブに参加するといった具合に。
 また、YOUR/MY Love letterに登場したモブたち全員がそうではなかったように、現実にもシャニマスというコンテンツを知ったり出くわしたりしていても特に気にもとめないという人がいます。

 そして、「自らの存在価値に悩む」というのは現実に生きる私たちに普遍的な悩みではないでしょうか?身近なアイツと比べて「なんて自分はできないやつなんだ」「自分の代わりなんていくらでもいる」と思う。あるいは、華やかなステージやスクリーンで輝く著名人たちを見て「この人たちは特別でいいな」「それに比べて自分はone of themでしかない」といった気持ちになることは多いでしょう。
 こうした自らの存在意義が揺らぐ名も無き人たちに向けて、YOUR/MY Love letterはしっかりとした答えを出します。それは②で述べます。



②誰もがしている「思いを伝えること」の素晴らしさ

■みんなを構成するのは1人1人 

 後半部で件の中年サラリーマンがアルストロメリアのラジオにお便りを出します。彼女たちからの「想いは届かないこともあるから、何回も伝えてあげて」というメッセージに背中を押されて、彼は娘にメッセージを送ります。「いつまでたってもお前は自分の娘だ、みゆ」と。
 誕生日にかわされたやりとりに合わせて流れるアルストロメリアの「Anniversary」。この曲に合わせて今までは、モブとして年齢と社会的身分でしか扱われていなかった人物たちの名前が明かされていく。
 この一連のシークエンスの「その他大勢であるモブにも1人1人名前があるんだ」という優しい視点とそれを最大限にいかす演出。私はここで全身に鳥肌が立つような感動を覚えました。
 しかし、YOUR/MY Love letterが持つメッセージの素晴らしさはこれに留まりません。さらに一歩掘り下げたメッセージがあると私は考えています。

■想いを伝えるという行為の‘力’と‘尊さ‘

 これまで登場してきたモブキャラたちの名前が明かされた後、この人とこの人が実はつながっていて、という関係性が明かされます。
 そのつながりの中で、彼らが人へと思いを伝えていく姿が描かれていきます。

  自分の代わりなんていくらでもいる、と気分が落ちていたWebデザイナー みゆさんを救ったのは父 の誕生祝いのメッセージ。伝えられた思いが彼女の心を癒したことでしょう。

 ライブ会場で出くわした高校生とその教師がお互いに自らの秘めた思いを伝えあったとき。それまで以上に2人は親密になったでしゃうし、秘めていた思いを口にしたことで自らの思考も整理できました。

 コンビニ店員の彼が甘柰にした気遣い。それは用意するのに時間がかからないホットスナックを提案した、という小さな気遣いかもしれません。しかし、その思いによって甘奈は少しの喜びを感じることができました。

 このように、YOUR/MY Love letter終盤では、思いを伝えることが人に影響を及ぼす様子が語られていきます。

  YOUR/MY Love letterが伝えたい一番のメッセージは、「思いを伝えることで世界は回っている」ということなのではないかと私は考えます。
 誰かが誰かに思いを伝える。その思いに影響を受けとった人がまたさらに誰かに思いを伝える。そしてまたその思いを受け取った人が……。といったサイクルで世界は動いているのです。

  アルストロメリアがラジオで言っていたように一つ一つの思いの力は小さいかもしれない。だけど、小さな思いが人から人へと波及していくにつれていずれ届く。誰かに届く。こうやって世界を動かしていく思いの力ってスゴいじゃないか!
  作中内のモブキャラたちと同じように、現実の私たちは特別なスターではないかもしれない。だけど、思いの波及で動くこの世界のプレイヤーであることは間違いないのです。この世界で生きている以上、絶対にこのサイクルに関わっているのだから。そういう意味で、名もなき人たちの中に無価値な人間など1人もいないんです。

  名もなき人たちをただ「生きているだけで素晴らしい」と全肯定するのではなく、「思いの波及で出来ているこの世界を動かす、「思いを伝える」力が全員にあるのだからみんなが素晴らしい」と納得のいく理由を提示するところまで踏み込んでいるからYOUR/MY Love letterは素晴らしいのです。



③推しがいることの素晴らしさ

■推しから始まる思いの波及

それぞれの人物が思いを伝えたその出発点は何だっただろうか。思い出して欲しい。

父が娘にメッセージを送ることを後押ししたのは何だったか、思い出してください。
高校生の彼女がなりたい自分になるため一歩踏み出せた原因は何だったのか、思い出してください。
高校生と教師の2人が思いを交わし合った場所はどこだったか、思い出してください。

 これらは全て、アルストロメリアが発信した思い(楽曲や言葉、ライブ、プロデュース商品…)がきっかけです。これらのコンテンツ、及びそれに込められた思いがファンたちの心を動かし、またそれを受け取ったファンたちが思いを伝える……。推しは人々が思いを波及させていく連鎖の出発点になっているのです。これこそ、この世に推しがいることの大きな意味なのではないでしょうか。

■推しが日々の活力を生む

 また、モブキャラたちがしんどい思いを抱えて日常を送る中で、楽しみにしていたのは推しの活動です。
 アルストロメリアのCDを思春期男子のようなマインドで買う中年サラリーマンやメールがラジオで紹介されて大喜びする教師、甘奈プロデュース商品を使って勇気をもらう高校生。
 完全にシャニマスというコンテンツを楽しむ現実のわたしたちそのものです。推しは日々の生活の活力になってくれているというということをYOUR/MY Love letterは再確認させてくれます。



UNKNOWNの存在

 最後にここまであえて触れてこなかったUNKNOWNについてまとめたいと思います。描写から察するに彼は非常につらく苦しい状況に置かれていることでしょう。
 YOUR/MY Love letterが伝えたい内容から距離を置いている存在であるUNKNOWNの描写を入れたのはなぜなのでしょうか。

 「YOUR/MY Love letterで語ったメッセージを信じられないよ」というところまで追い込まれている人を肯定しているのだと私は考えますUNKNOWNのようなつらい境遇にある人もオミットせずに描写することで、「自分に価値があるなんて考えられない」という心境にいる人がいることも忘れていないよ、と寄り添っているのではないでしょうか。



おわりに


YOUR/MY Love letterを3つのポイントで振り返って参りました。私はYOUR/MY Love letterが、シャニマスが伝えた思いを受け取り、文章で思いを伝えました。私の文章を誰かが受け取って次なる思いが発信されて……という思いの波及が生まれることを信じて本稿を締めくくりたいと思います。

 長文に付き合っていただきありがとうございました。想定よりどえらく長い分量になってしまったので、今後コミュ感想を書くときはポイントを3つではなく1つに絞ろうと決意を固めたことを添えておきます……。