鶏のモツ煮
一緒に入ってるゴボウと生姜の香りが食欲をそそります。
隠し味の梅酒が鶏もつの臭みを消しつつ、味に深みをだしてくれていて、出来たてより粗熱が冷めるくらい少し置いた方が、より梅酒が馴染んで円やかな味わいに❤
かれこれ約10年前に作ってから、今や我が家の定番なお惣菜。
これが特に好きなのは、長男君。
そして私は今でも作る度に、作り始めた当時を思い出します。
長男君が身体の不調を訴え始めたのが、中学2年の夏。
朝起きれない…
夕方になるまで、本当に生きてるのか心配になるくらい寝続ける…
目が覚めても気持ち悪くて、頭を起こしていられない…
昼間は立ち上がるのも困難…
食事もほとんど取れない…
結局発症から「起立性調節障害」の診断が出るまでの一年半、色々お医者さんを受診するも原因が分からず辛い日が続いた。
そしてこの病気の子の外観で一番の特徴が
「やたら顔が青白い」
という事。
おかしい位に顔が白いので、貧血?血が足りない?と、せめて栄養のあるものをと思って作ったのが、このもつ煮。
普段は夜に味噌汁を啜るのが精一杯な息子が、これはとても喜んで食べてくれた。
病名も分からず、ただただ横になって寝る事しか出来ない息子にしてあげられる事は、このもつ煮を作る事ぐらいしかないのが、母として本当に辛かった。
中学の時は結局皆と一緒の卒業式は叶わず
それでも先生方が会議室に紅白の幕を張ってお花も飾り、この子のためにだけに卒業式を開いて下さった。
先生方から温かい言葉を沢山頂いて、本当に素敵な卒業式だった。
でもいきなり振られた卒業生代表の言葉で
「おれ、中学何も出来なかった…」
と息子は顔をくしゃくしゃにして泣いた。
外は大雨。
打ち付ける雨で濡れる窓よりも、息子の顔はびしょびしょだった。
その後、息子は無事に通信制の高校を卒業。
高校生活も病気との戦いだったけれど、理解して支えてくれた友達や先生がいたから、乗り越える事が出来た。
そして現在。
そういえば最近作ってなかったと思い立ち、先日久しぶりに作ったもつ煮。
「やっぱこれ、好きだわー」
と言いながら、ぺろりと一人で殆どたいらげてしまった長男。
これを食べる姿を見る度に私は昔を思い出すけれど、今は(万全ではないけれど)元気になった息子の姿が目の前にある。
殆どの場合、起立性調節障害は大人になると治るそうなのだけれど、
うちの子は、完全には治らないかもしれない。
でも今、彼は自分の病気を「体質」として受け入れ、上手く付き合っていこうと頑張ってる。
コンビニでアルバイトしながら、大好きなベースで食べていけるよう
プロのベーシストの師匠に付いて学ぶ日々。
「俺、何も出来なかった」
と卒業式で顔をくちゃくちゃにして泣いていた息子の姿は、もうここには無く、
目の前にあるのは、なりたい自分を見つけ、精進に励んでいる、活き活きした息子の姿。
子供が心健やかである事は、本当にこの上ない幸せだなと、
当たり前の事だけれど、改めて幸せを噛みしめる。