UUUMから学ぶ「個の時代」と「間に入る会社」の付き合い方
こんにちは、ラブグラフのこまげです。普段は「Lovegraph」というカメラマンが400名ほど所属する出張撮影の会社をしています。
年末に入り会社もお休み期間なので、2019年の振り返りや来年の考察でもやろうかと思ったのですが、それは僕よりも賢い人たちがしてくれてるので、普段はなかなか時間を取ることのできないテーマで自由研究をしてみようと思います。
今回はタイトルにもあるように「個の時代」と「間に入る会社」の付き合い方というテーマで、YouTuberマネジメント事務所のUUUMがどのように成長してきたのか、その裏にある狙いとは何だったのかを僕なりに考察してみたいと思います。
間に入る会社の価値が問われている
僕たちの会社もそうなのですが、どれだけ育成に時間をかけたり人との繋がりを濃くして人間関係を育んだとしても、SNSが生活に溶け込み個人が発信力を持つようになって自分の力でお金を稼ぐことが可能になった今、ただ仕事の管理をしたり紹介するだけでは、発信力を持った個人にとっては「自分で人を雇ったほうが経済合理性が合ってしまう」という状況になるので、相対的に会社の存在価値が低くなってしまうことは必然的な流れだとも言えます。
そんな時代の中、今でも多くの発信力あるクリエイターを引き寄せ続けるUUUMには何かこれからの会社のヒントがあるのではないかと過去のプレスリリースを遡ってみたところ、たくさんのヒントが隠されていたのでそれらを紐解いて他の会社にも活かせるように紐解いていきたいと思います。
UUUMの全体的な成長戦略まとめ
大きな流れは時系列が被っているところもあるものの大枠は以下のような感じです。
①YouTuber啓蒙
②タレント強化
③ビジネス展開
④クリエイター拡大
⑤守り体制整備
⑥新規事業開発
⑦ブランディング
⑧ロイヤリティ向上
⑨参入障壁確立
⑩新規プラットフォーム展開
①YouTuber啓蒙
初期まだ世の中に認知すらされていない「YouTuber」という名前を広げるためにHIKAKINさんが本を書いたり、ブロガーのイベントに登壇したり、ホリエモンさんとHIKAKINさんの対談などをしてYouTuberの啓蒙活動を積極的に行っている。
②タレント強化
同時期にHIKAKINさん以外のはじめしゃちょーさんのスカウトやHIKAKINさんとアリアナグランデとのコラボなど「YouTuberの仕事の幅」を拡大させる取り組みを行っている。
③ビジネス展開
ある程度YouTuberという名前が広がり、所属タレントたちの発信力がついてきたタイミングでYahoo!や広告エージェンシーとの業務提携でYouTuberの発信力をお金に変える動きを見せている。
企業からお金をもらえるくらいの発信力が個人についているので「UUUMを通す意味」をこの時期から作る投資を行い、クリエイター支援ツール「CREAS」のリリース、音源提供会社との提携などでクリエイターの動画編集を支援する動きをしている。新しい仕組みでお金を生み出そうとしたので「YouTuberって本当に売上貢献するの?」という疑問に対して定量的なアンケートなどを行うことで積極的に効果を示している。それは今もずっとあらゆる切り口で続けられている。
④クリエイター拡大
まだまだ発信する側が少なく、ハイエンドYouTuberだけではマーケットを広げることが難しいので、女性クリエイター創出プロジェクトや次世代クリエイター発掘プロジェクトを始動したり、スマホで誰でも簡単に動画が作れるアプリをリリースしたりしている。既に発信者を抱えている企業との提携やクリエイター向けの学校で動画編集のカリキュラムを作成したりなど「少しでも多くの人をYouTuberに」という動きが見られる。
⑤守り体制整備
企業からの広告案件などが安定して入るようになってからは世の中でステマに対する批判が上がってきたので、優良誤認防止のガイドライン作成や、由緒ある広告団体に加盟したりして、会社として守りを固めている。
⑥新規事業開発
新規事業というと言い過ぎかもだが、講談社とコラボして新しくメディアを立ち上げたり、自社開発ゲームをリリースしたり、HIKAKINとSEIKINが歌手デビューしたりと「UUUMとYouTuberができること」を増やしていってるように見える。
⑦ブランディング
目に見える実績が出始めたことが理由だと思うが、「すごい!」というリリースが多数行われる。月間再生が10億回を突破したこと、業界のすごい賞を取ったこと、HIKAKINさんの登録者が日本1位になったこと、U-FESというオフラインイベントを開催して人がたくさん集まる事実を作ったり、UUUMビデオアワードという賞をオフィシャル感のある感じで表彰したり、鎌田社長がデジハリの客員教授に就任したりして、箔をとにかくつける動きを見せている。※この時期から社内の人間のメディア露出も増えていて、会社の中の人もPRすることで会社の信頼感を醸成している。
⑧ロイヤリティ向上
ブランディングを推進するだけではリスナーとクリエイターの芸能人のような距離感に離れてしまうのでロイヤリティを上げるために人気YouTuberが地方を回るツアーを開催したり、小学生向けの特別授業をHIKAKINたちが開催したり、ファンサイトの開設などを行っている。熊本震災への募金なども行っており、「すごい」と思われるだけではなく、ちゃんと「好き」と思ってもらえるような取り組みが増えている。
⑨参入障壁確立
ここまでくれば後は業界で圧倒的な存在になるための取り組みを徹底的に行っており、海外の事務所8社と提携したり(自社で海外支社を作るのではなく大きいところとパートナーシップを組む方針)、ファン分析ツールの無償提携を自社クリエイター向けに開始したり、松竹芸能との提携などで芸能界との距離を近くしたり、任天堂や有名ゲーム会社のゲームをUUUM所属であれば配信していいといったような包括的な提携を結んだりして「YouTuberに頼むならUUUMだよね、YouTuberとして頑張るならUUUMだよね」という要素を大量に盛り込んでいる。
⑩プラットフォーム拡大
これが一番直近の動きになるが、YouTubeというプラットフォームは安定した成長フェイズに入ったので、非連続な成長を作るためにインスタグラマーの事務所を買収したり、noteとの資本業務提携などでnoteというプラットフォームにいるクリエイターの発信力も取り込もうとしたりして、さらなる拡大を目指している。
調べてみた感想
UUUMの戦略は非常にシンプルで「クリエイターが集まる会社にする」ということのように感じた。
クリエイターが集まれば発信力が増える。発信力が増えれば企業広告も取れ、何を作っても売れる状況が作れるので資本をすべて「クリエイターが喜ぶこと」に投資することでレバレッジを効かせることがUUUMの戦略なのだと思う。
UUUMが成功した大きな要因は「クリエイターにとってなくてはならない会社でいられたか」ということにあると思う。
UUUMはクリエイターに仕事を振るだけでなく、クリエイティブ作成の面倒なところをUUUMがサポートできるようなことに投資していた。
個人の発信力を集めるだけでは有力クリエイターが卒業すると、新しく入ってくるクリエイターにもメリットを出しづらくなる、という悪循環に入ってしまうのではないかと考えるので、会社は本当に必要なのか?ということは常に考え続けることが大切だと思います。
まとめ
①新しい文化を生み出すため愚直に啓蒙活動を行い、
②少しずつ仲間を集め、
③お金に変わるタイミングで会社の存在価値を高め、
④プロだけに頼らず初心者を巻き込みつつ、
⑤守り体制を整備することで会社を強くする。
⑥さらに大きくジャンプするため新規事業を仕込みながら、
⑦一気に認知度を上げて凄い会社にはなりつつ、
⑧今まで付いてきてくれた人との距離は離さず、
⑨唯一無二の会社になることでポジショニングを安定させ、
⑩新しいプラットフォームに展開し非連続な成長をすることが大切。
【UUUM基本情報】
└鎌田和樹CEO(35)
└光通信最年少執行役員→HIKAKINさんと出会う→2013年6月UUUM設立
└時価総額1000億円
└売上463億円 営業利益33億円(営業絵利益率7%)
①クリエイターサポート事業
└ここに資源を投下することで②③にレバレッジを効かせる
②インフルエンサーマーケティング事業
└YouTuberを用いたプロモーション
└売上比率90%(アドセンス57% 広告31%)
③ゲーム、メディア事業
└自社開発のゲームやアプリ運営
└売上比率10%
今回参照したプレスリリース
■YouTuber啓蒙期
└2013年7月:HIKAKIN著『僕の仕事はYouYube』発売
└2013年8月:ブロガーサミット2013に参加
└2013年8月:ホリエモン×HIKAKINの対談ライブ
└2013年10月:HIKAKINなどがゲームチャンネル開設
■タレント強化期
└2014年2月:HIKAKINがアリアナ・グランデとコラボ
└2014年2月:SEIKIN加入
└2014年3月:Masuo加入
└2014年4月:はじめしゃちょー加入
└2014年4月:HIKAKIN握手会開催
■ビジネス展開期
└2014年8月:Yahoo!との業務提携
└2014年9月:世界最大の広告エージェンシー『オムニコムグループ』と業務提携
└2014年12月:クリエイター支援ツール『CREAS』リリース
└2015年3月:YouTuberのプロモーション効果を検証
└2015年4月:アドウェイズとの業務提携
└2015年4月:デジタルハリウッド大学との業務提携
└2015年4月:SPACE SHOWER MUSICとの業務提携でクリエイターへの音源提供
■クリエイター拡大期
└2015年5月:女性クリエイター創出プロジェクト始動
└2015年5月:次世代映像クリエイター発掘プロジェクト開催
└2015年5月:スマホで簡単に動画編集投稿アプリ『MUUUVER』提供開始
└2015年7月:ガジェット通信との業務提携でクリエイター獲得
└2015年12月:大阪コミュニケーションアート専門学校でネット動画カリキュラムを共同開発
└2017年8月:クリエイターのための学びの場所「UUUMアカデミー」を開講!
└2018年7月:超初心者向けサポートツール「SPAAAK」をリリース
■守り体制構築期
└2015年7月:ステマなどの優良誤認などを防止するガイドライン作成
└2015年8月:監査等委員会設置会社への移行および役員人事変更
└2015年12月:日本インタラクティブ広告協会に入会
■新規事業創出期
└2015年7月:講談社と新たなメディア「ボンボンTV」スタート
└2015年8月:スクロールアクションゲーム「TrapTrip」をリリース
└2015年8月:HIKAKIN&SEIKIN歌手デビュー
└2015年8月:マイクラプレイヤーと繋がれるアプリ『おしゃべりマルチ』リリース
└2016年1月:人気YouTuberのIPを活用したスマホゲームコラボ事業を開始
■ブランドPR期
└2015年9月:月間再生回数が10億回を突破
└2015年10月:UUUMネットワーク事業が単月動画再生回数1億回を突破
└2015年11月:『Job Creation 2015』をUUUMが受賞して企業価値をあげる
└2015年11月:HIKAKIN登録者257万人で日本1位
└2015年11月:U-FES開催してめっちゃ人集まりました
└2015年12月:紅白歌合戦とのタイアップ動画公開
└2015年12月:「UUUMビデオアワード2015」を発表でオフィシャル感醸成
└2016年4月:宣伝会議×UUUM「YouTuber活用マーケティングセミナー 導入編」を開催
└2016年7月:テレビ東京の番組に社長と水溜りボンドが出演
└2016年10月:デジタルハリウッド大学の特任教授にCEOが就任
└2016年12月:EY スピリット部門の大賞を受賞
└2016年12月:YouTube RewindにUUUM所属クリエイターがランクイン
※この時期に社長や働いてるメンバーPRも増えてる
■ロイヤリティ向上期
└2016年4月:全国のみんなに会いに行く!「U-FES.TOUR2016」開催
└2016年4月:平成28年熊本地震に対する復興支援のお知らせ
└2016年6月:UUUMが小学生向けに『夏休みの特別授業』を開講!!!
└2016年12月:はじめしゃちょーと瀬戸弘司を主人公にした冒険ストーリーと設定を大募集!
└2017年1月:クリエイターとファンを繋ぐ「UUUM FANS」提供開始
└2017年2月:はじめしゃちょーのファンサイトを開設
■参入障壁確立期
└2016年8月:海外クリエイターネットワーク8社と業務提携 10億人以上の視聴者へリーチ可能に
└2016年9月:ファン分析ツールを所属クリエイターに無償提供
└2017年3月:音源素材数55,000曲以上「Epidemic Sound」を全所属クリエイターに提供開始
└2017年3月:松竹芸能株式会社とUUUM株式会社、オンラインタレント育成で業務提携を発表
└2017年5月:任天堂の著作物取り扱いに関する包括的許諾合意
└2017年7月:東京証券取引所マザーズ市場への新規上場承認
└2018年6月:カプコン著作物に関する包括的使用許諾契約締結
└2018年6月:パラリンピックのPRパートナーとして提携
└2018年6月:レベルファイブの著作物に関する包括的使用許諾契約締結
└2018年7月:株式会社チョコレイトとの業務提携契約締結のお知らせ
※海外企業8社との提携から海外展開も加速
■プラットフォーム拡大期
└2018年9月:レモネードの吸収合併を発表 YouTubeだけでなく、インスタグラムへの拡大
└2019年3月:ソーシャルメディアマーケティング支援企業、株式会社ガーブーとの資本業務提携
└2019年7月:株式会社ピースオブケイクとの資本業務提携に関するお知らせ
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