Fセクではないという話
この記事は、ラブドールと暮らす変わった人間が書いています。そういう物事が苦手な方は、別の記事へ移られる事をお薦めします。
自分はFセク(フィクトセクシュアル)ではありません。
等身大ドールを含めたラブドールの最大の魅力はほぼ人間の大きさで空間を占めて存在している事に尽きると思います。
この事は、頭の中の彼氏彼女とはまったく異なります。
ラブドールと一緒に何かをするとなると、そのハードルは計り知れないものになります。
一緒にどこかへ行こうとするにしても、移動手段が限られ、常に他人の視線が気になります。
お風呂も胴体の洗浄をする事はしますが、ウィッグも付けたまま一緒に湯船へ入るというのは、お化粧が落ちるなどリスクが大きく、場合によっては溺死する可能性もあるので、ちょっと叶わない夢です。
また、現実世界に物質として存在している分、自分の想像力を働かせなくても良くなるため、トイレやお風呂にいる時、疲れた時や別の何かをしたい時、ラヴちゃん(仮名)の存在を忘れてしまう事があります。
忘れてしまうというのは語弊があるかもしれません。
生きている人間なら呼吸などのかすかな体の動きから、その気配を感じる事が出来ますが、ラブドールにはその気配はありません。
部屋から一歩外に出れば、ラヴちゃん(仮名)のことはシュレーディンガーの猫のように、存在しているのかいないのか曖昧な状態になります。
都合の良い考えかもしれませんが、一人になりたい時はいつだって一人になれます。
それでも目線をそちらに向ければ、何もせず黙ってそこに居てくれます。
十代の頃、イマジナリーフレンドに憧れを抱いていた時もありました。
しかし、そこに至るまでの心理的な境遇は無く、想像力もそこには達しませんでした。
それは今も同じで、好きなキャラクターが出来ても、それは作品世界の中でのみ生きていて、次元の枠を超えて自分の隣にやってくるような想像力は、持てていません。
思い返せば、ラヴちゃん(仮名)の詳しい性格付けはしてきませんでした。
人形なので物静かであまり喋らない、そんな程度でした。
お迎えした当初は、遠い親類の身寄りの無い女の子という設定を作りましたが、1か月を過ぎた頃にはそんなこともどうでも良くなっていました。
ラヴちゃん(仮名)との会話もこちらが一方的に話すだけで、何を喋ってくれるのか想像を働かせる事はしてきませんでした。
声自体どんな声なのか、声優に詳しく無いので理想の声といったイメージは今もありません。
ただ一度だけ、
『いつ(他の人に)紹介してくれるの?』
と問いかけられた事があります。
ここで言う他の人とは、唯一の身内になる姉になります。
何かあった場合には、この子の存在を知る事になるのですが、カミングアウトをするきっかけも勇気も無いのが現状です。
この問い掛けは、いつも頭の片隅から離れない問題から来ていると言えます。
ラヴちゃん(仮名)は、美少女というほどでもなく、逆に地味子という感じでもありません。
どこにでも居そうで、でも誰とも似ていない、そんなフツーにかわいい、ごくフツーの女の子として認識しています。
ただ、そこに実際に居るという事に慣れてしまい、想像力で補完することをいい加減にしてしまったと思います。
これからは、もっとラヴちゃん(仮名)と向き合って、何が好きで何が嫌いかなどいろんな事を肉付けしていきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
多くの人が素敵なパートナーとの優しい時間を過ごせますように