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【マンガ業界Newsまとめ番外編】 IP市場調査の背景&IMART2024見どころ|イベント直前SP
マンガ業界ニュースの週1まとめですが、今週は番外編です。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるよう、普段はまとめています。
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第0回 MANGA総研「マンガ・アニメIP市場調査」
調査の背景
調査内容については上記リリースにおおよそ記載しているので、ここでは調査の背景や、私の考える意義、あとは具体的な課題にについてなど。
まず、とにかくエンタメの現場にいると「IP」ということばを良く聞くようになりました。これは、昔で言えば「作品」や、ときによって「キャラ」なども広義で指す言葉だと思います。世はIPビジネス花盛りです。
しかし、「鬼滅の刃」で世界中にどれくらいの市場があるのか?それが、マンガ(本)、アニメ、ゲーム、グッズ、音楽、ライブイベント、など各ジャンルでどれくらいの売上があるのか?誰も知りません。有体に言うと、集英社の人でも知りません。Aniplexの人も知りません。
これは別に、誰かが怠慢に仕事をしているということでは無く、複雑怪奇な様々な仕組みからなる、このマンガ・アニメを起点としたIPビジネス構造的な複雑さから、ホントにわからないのです。特に海外となると、もっとわからない!これが、マジでヤバいくらいわかりません。
また、マンガなら「出版科学研究所」「インプレス」、アニメなら「日本動画協会」ゲームなら「CESA」などなど、各業界にそれぞれ長年毎年市場を調査している団体・法人があるのですが、実際に調査する方にお話を聞くと、業界の垣根を飛び越えて調査するというのは、なかなかに難しいことなのです。というか、お立場的に難しいみたいなことがかなりありました。
今回はわからないながらも、先輩たちが調べてくれていたデータをもとに、私たちなりに試算を行いました。ただ、第0回とさせていただいたのは、実はまだ、この基本的な調査方法も確立していないのです。
今後、しっかりとした調査が行えるよう、体制をつくり、方法論を確立し、指標として毎年数字を出せるようにするのが当面の目標です。それだけでも結構大変でございまして、なんとか頑張ってまいりたいと思います。
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市場の数値は産業の地図
IPビジネスを行う方々は、数字が良くわからないまま、自分の守備範囲の数字をもとに「わからないなー」と思いながらビジネスをしています。ある種の、常時五里霧中です。
市場の数字は、ビジネスという航海をする際の海図です。地図があれば、現在地がわかり、目的地がわかります。ただ、地図なく旅に出れば、基本的には目的地には着きません。日々、自分の守備範囲の数字を昨日より大きくすることを目指すのみです。総合的に正しい方向に成長するかは全く予想がつきません。
民間のIPビジネスを行う立場の方にとっても数値は重要ですし、国は7年後までに「コンテンツ産業」を4倍にするとうたっているわけですが、実は指標にしている数値はごく粗い数値を、調査現場の人たちがなんとか試算して作っているものです。
まぁ本当に精細な数値をあまねく必要とするかというと、それも違うやもとも思うのですが、せめて、マンガやアニメ、ゲームなどのジャンル別、国や地域別といったデータがないことには、先も全く見えないなと。
ということで、これはからは、エンタメ業界の地図を数値的な意味で作ってまいりたいと思います。ただこれには、資金、人材、ノウハウ、業界や国を超えた連携が、全く足りません。
どうか関係各位のご支援を賜りたく、よろしくお願いいたします。
また、MANGA総研に調査や分析を発注いただくことで、私たちも助かりますし、その結果ついた体力で、全体の市場調査をするノウハウも溜まります。それは恐らく、業界の発展に資する恩返しに繋がると思います。
エンタメ関係の市場調査のご用命はMANGA総研に、何卒よろしくお願いいたします。
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IMART2024の見どころ
今年の新しいところ
■リアル会場:アニメイトシアター
IMARTは第2回の2021年開催時にコロナに見舞われまして、完全フルリモートイベントに当時はなりました。以来、交流会や基調講演など、少しずつリアルを増やしてまいりまして、今年はついに、池袋アニメイト本店地下の「アニメイトシアター」さんでイベントをします。アニメイトさんにも多大な協力をいただきました。
「つづきみ」というイベントをしたり、やろうと思えば映画でも2.5次元ステージもできる立派で綺麗な新しい会場です。ご来場される方はお楽しみに。
■国際商談会/国内商談会
これまでのIMARTは、ビジネスや文化のセッションを多数行い、交流会なども行う場でした。そこに足して、業界の方に実務でお役に立てるよう、国際商談会を開催することとしました。
この業界の国際ライツを担当する方の中では知る人ぞ知る、CultureWeaverの平柳竜樹さんを統括にお迎えし、1年目から海外企業約20社、国内企業約40社が集まる、本格的な商談会になりそうです。
いずれは、今回も行っている地域おこし系のプレーヤーを中心とした国内商談会とともに成長し、マンガ→IPへと広がる国際的な商談会に育てたいです。
セッションの見どころ
今年の基調講演は、マンガが林士平氏、アニメがCloverWorksの福島祐一氏と、「SPY×FAMILY」の、マンガ・アニメ制作コンビ、そこに司会はお馴染みニッポン放送の吉田尚記アナと、豪華布陣です。普通に私にとっても面白そうで、安定してます。
今年は、国際的な動きがイベント全体にあったため、かなり海外系のセッションが増えました。
なんと今年はMeta(facebook)が、ご協賛にも初参戦。
近年、急激に向上した北米におけるマンガ広告出稿の実情などのデータ、マーケティング情報をMeta独自による調査を中心に発表。これをエンタメ社会学者の中山淳雄さんが解説します。
MANGA Plus by SHUEISHAは、7年間編集長をつとめた細野修平氏を今年海外専任としてさらに注力していきます。ローカライズのオレンジ社に、そのジャンプの海外展開を、実際の紙本ビジネスで支える紀伊國屋米国担当の渡邉氏もお呼びし、ジャンプの取組と、実地でのその強さを語ります。
絶賛海外中のプラットフォーム「MANGA Plaza」と、版元「コミックルーム」作品の、北米におけるデジタルの売上、被害、復旧の様子を、グラフで示しながらお話します。ちょっとなかなか見れない内容になっていると思います。
文化庁のクリエイター育成プログラムのご紹介ですが、米国人の、エド、デイブ、クリスの3人が参加。ということで、実は米国のマンガ販売ではとんでもないキーマンである3人が同時に出るというレアなセッションになっております。
ーー海外系ここまで
長くくすぶり続けた都条例、行政との難しい交渉のなか、ついに都条例の中における「不健全図書」の名称改称が今年行われました……と、申しましてもなんのことかわからない人も多いですよね。ということろで、そのあたりを実務として携わった面々がしっかり解説するセッションです。
私の企画の中では、最も思い切った企画と言えましょう。
電子コミック時代の、新形態版元(CP)「コミックルーム石橋さん」、何世代目かのネット漫画家最新モデル「ぬこー様ちゃん」。
2024年の最新ハイエンドモデルの2人が語り合う記録です。必見です。
ここから、それぞれセッション選定メンバーの企画です。
まずは、モバイルブック・ジェーピー石井康子さん企画です。
長年電子書籍業界に関わってきた石井さんらしい企画で、viviON細山田さん、BOOK☆WALKER山本さん、honto小宮山さんと、知る人ぞ知る実務家の対談になります。テーマは「電子コミックは踊り場か?」、現場的にかなりエモいです。
企画サポートと進行に、文春Techの真柴さん。登壇に、アルファポリス柏木さん、DPNブックス坪内さんと、これはまたなかなか今まで表に情報が出て来なかった新興出版の方々のトークです。個人的に、登壇していただきびっくりしたセッションです。
Minto取締役中川さん、過去何度もIMARTに出ていただいた中川さんには新機軸系を企画していただきました。
話題のショートドラマを、日本の震源地となるBUMP澤村さんや、CLLENN石黒さんを迎えてのお話です。実はWebtoonやマンガと親和性の高いショートドラマの現状、海外の展開状況から国内の現状まで、個人的にも楽しみにしています。
IMART史上はじめて、広告テーマの中で広告クライアントが出るというセッションです。クライアント側はリクルート康さん、IP版元側は集英社の鬼原さん、それをまとめるMinto仙水さんと、リアルな大型広告案件のお話が聞けます。
エ☆ミリー吉元さんは、大御所漫画家バロン吉元さんのご令嬢でありながら、トーチ編集部の編集者でもあります。アートにも通暁する吉元さんの企画は異彩を放っています。
お父様の名前で言うと、ちばあきお先生、上村一夫先生、バロン吉元先生と、大御所作家さんたちの2代目さん達が苦悩を語る。原稿の保存や、相続など?リアルなお話がうかがえそうです。
一転してこちらは、アカデミックでアートなお話です。やはり、その価値や保存方法が見直されている「マンガ原稿」の現状と考察。
最後は、MANGA総研副理事長のレインボーバード山内さんです。さいとうたかを劇画文化財団理事長、東京工芸大学講師など、変わらず多彩に活躍しています。
西の雄、京都精華大学吉村さん、東の雄、東京工芸大学伊藤さん、新たな国立大学参画の熊本大学鈴木さんと、大学におけるマンガ教育について、教育面・研究面の両面で、ガチガチ硬派なお話が聞けると思います。
AC:スポンサーショートピッチ viviON「みんなで翻訳」
スポンサーピッチではありますが、このviviON社さん「みんなで翻訳」の説明ピッチは、3年目で売上15億円にも達したという、ファン翻訳の現在地と、今後の展開についてです。普通に面白いのです。
本来、IMARTはアニメセッションもあるのですが、マンガ業界Newsまとめというとことで、マンガのセッションを紹介させていただきました。
ご協賛企業様は、視聴・観覧が所属全社員さま見放題。
チケットお持ちの方も、現地観覧、当日生配信、12月以降のアーカイブ配信、様々な形で視聴可能です。一般チケットはこちら。
■ビジコン
なんとIMARTでは、東大のアニメ研究ゼミと共同でビジコンも開始!
こちらは、参加無料です!
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