S先生とテレビ。
高校時代、英語を教わったS先生は、定年間際のおじいちゃん先生が多い我が校では、断然若い感じでした。とはいえ、多分、当時で30代後半。既婚でお子さんもいるようでした。
他の教科より、英語は好きだったので、割とマジメに授業は受けていました。教え方も上手でしたが、雑談が面白くて、結構それも楽しみだったり。
前回の話で書いたように、学校にテレビ番組が来ると、自分のところに来なくて残念がっていたS先生。
そのことが私の頭の片隅に残りまして。
数カ月後。放送局の顧問の先生が持ってきた話。
『明石·洋二のん?!』という番組が取材に来るのだけど、どこかのクラスにカメラを入れたいが、どこがいい? お前たちで決めておいてくれ。
職員室で決めそうなものだけど、顧問の先生、私たちに丸投げしたのですよ。そこで、S先生のことをみんなに話して、そのクラスにカメラを入れることに決定しました。
ちなみに、明石·洋二のん?! とは?
北海道ローカルで、月〜金の夕方に5分ほどやっていた番組。でも、あなどれないのがこの二人。当時、ラジオで若者たちに絶大な人気を誇っていて、この番組の成功ありきで、『どさんこワイド』が始まった、という見方をする人もいるとかいないとか。
話がそれましたが。その番組がやってきたのです。私も、授業風景ぐらいを撮るのかなぁ、なんて思っていたのですが、実際は違って。
クラスの生徒達には「授業の様子を撮らせて下さい」ということにしておき、校内放送でいきなり『ん?!音頭』(彼らが歌ってた曲)を流したら、どんな反応をするのかを撮らせてほしいと。今でいう『モニタリング』みたいなやつですね。(校内放送を使うので、放送局の先生のところに話がきて、私たち局員のところに丸投げされたようです)
S先生は、一応、その内容を教えられていたようですが、なんとなくその日は落ち着きがなくて、どこかの授業でしゃべっちゃうんじゃないかと心配でした。それぐらい、雑談大好きな先生なので。
帰りのHRの時間に、その撮影は行われました。
放送室から、明石·洋二の両名がリアルタイムでラジオのように呼びかけて、いつもと違うことに生徒が気がついたところで、ネタバラシに教室ヘ走る、という仕組み。
私たち放送局員は、収録のお手伝い、という名目のもと、帰りのHRをとばして放送室にいてもいいと言われていました。技術担当の男子たちは、ミキサー卓の前に座って、明石·洋二と会えたりしたようですが、私は、好きだったけど敢えて会わないようにしたというか。女子高生の面倒くさい感じ丸出しでした(苦笑)。
収録は無事終わり、次の日、授業後にS先生に話しかけてみました。
「先生、昨日、先生のクラスにテレビ来てたしょ?」
「おう。先生もおかっちょみたいにテレビデビューしたぞ。」
そう言うS先生の表情が嬉しそうで、よかったなぁと思いました。
後日、放送された『明石·洋二のん?!スペシャル』では。
S先生のクラスのみんなのポカンとした様子と、S先生の、二人にのせられて、ん?!音頭を踊らされている様子が放送されていました。
S先生、今ごろどうしてるかしら?
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