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オリジナル短編小説 【探偵と快楽犯 夢はいずこに】
作:犬小屋
Twitter:https://twitter.com/wonry_house
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「今週の木曜日。永遠の夜が続きし場所で、夢のような時間をお届けしよう。透明な凶器が夢へと誘うことだろう」
それは長きにわたる因縁の相手、通称"快楽犯"からの俺へのメッセージだった。
快楽犯。こいつはその名の通り、事件を起こすことに喜びを覚える、所謂愉快犯であった。
しかし、その事件の規模が大きいが故に、何度も警察が取り逃がしているうちに俺が探偵として雇われた…ってワケだ。
快楽犯は普段は姿を見せず、大きな事件のみを起こして去っていく。人殺しは一切ない。まるで俺達をおちょくってるかのような、まさにショーを開くのを楽しんでいるかのような人物だ。退屈を嫌い、刺激を好む。その正体は不明…っと。
過去も重鎮の参加するイベントをかく乱したり、遊園地の開園記念パレードを中止に追い込んだり。はたまた人気映画監督の秘蔵フィルムをすり替えて、上映会を台無しにしたり。
そりゃあもう、迷惑極まりない奴だ。
俺は快楽犯から送られてきた手紙を片手に、ため息をつきながら考えた。
ただの目立ちたがり屋なのか、何か意図があってやっているのか。ソレは分からなかった。
ただ、いつも派手な大迷惑をしでかすのが好きで、こうやって挑戦状のようにしでかすことを宣言しては、俺はいつもどこで何をやるのか、街の地図とにらめっこを繰り返していた。
俺はしがない探偵だ。とある難事件の解決を機に、警察御用達の有名人になった。
別にそんなことを望んでいたわけではないが、仕事が多いに越したことはない。
ちなみに謎解きに関しては、警察に任されるもののとんだド素人だ。分析は得意だが、頭が硬くて閃きには欠けている。
「これが俗に言う謎解き、ってやつなのかねぇ」
オジサンこういうの苦手なんだよなぁ…なんて呟きつつ、しかして解決しなければ話にならないので今回の犯行予告と思わしきそれを見つめて、考えた。
「永遠の夜が続きし場所」
夜が終わらない場所、か。暗い場所、夜に関係する場所、永遠に夜が終わらない場所なんてそもそもあるのか?ホストクラブとかだろうか。
あいつらは昼も夜も関係ないだろうしなぁ。
「場所なのはわかるんだけどさぁ」
呆れたように俺はごろりとソファーに転がった。
夜に関連する場所をとにかく浮かべる。
天文台、博物館、映画館、星が綺麗に見えるデートスポット…。
「うーん、デートスポットとか漁ってみるかな」
時刻は木曜までそうして過ぎていった。
人が集まりそうな場所を中心に色々探りをかけてみたものの、結果ははずれ。
流石の俺にも焦燥感が募っていった。
加えてカップルに聞き込みしては冷たい目で見られる。あれはとんだダメージもんだ。
「ええっと、残りはなんかあるかな…」
時間もない。もはやしらみ潰しのような感覚で街の地図を眺めるが、貧相な脳みその俺には何も浮かんでこなかった。
と。カラン、ポストに郵便物が投函された音がする。くたびれた重い体を持ち上げて、ポストを開くと一枚のチラシがひらりと足下に落ちた。
「有名アーティスト、出身の街にて新作披露!宇宙をテーマにした映像をプラネタリウムにて公開!今夜18時より初回の公開開始」
カップル向けのチラシじゃねーか、ストレスのあまりぐしゃりと丸めてゴミ箱に捨てた。
「30代独身、女に縁のない男で悪かったな」
犯人との縁は溢れてるのにな。小さく舌打ちして、諦め半分に地図を眺めた。
…プラネタリウム?
ハッとして快楽犯からの手紙の文字を見直す。
永遠の夜が続く場所。そうか、あそこは常に星空を投影し続けているじゃないか!
後はあいつが何をしたのか、それが分からなかった。ただ推測はできた。
殺人はしない、だが被害規模自体は大きい。
作品自体を破壊することはしない。
本人は姿を現すことなく、隠れて手を下す。
そうなると目立つところには仕掛けられていないだろう。すると映写機か。あれが怪しい。
とはいえ、時間は差し迫っていた。俺はだらしないワイシャツ姿で必死に外へと駆けだした。
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