酸っぱいブドウ
久しぶりの休みだったけれど
いつも通りの時間に目が覚めた。
起き上がるつもりはなかったので
テレビをつけて、音声を聴きながら
電源OFFしていたスマホの電源を入れた。
週末だったからか、深夜まで通知が増えていた。
どれもバンドの連絡だけだったけど。
アイコンの変更通知がいくつかあって
その中に彼のものがあった。
子供が二人になっていた。
背景も長男が描いた家族の絵。
「○○家。4人かぞく」
これは母親の字か。それとも保育士の字か。
そうかぁ。4人家族になったのかぁ。
このところ、一人でいろんなことを背負っている気になっていたからか
なんだかとても悲しくなった。
何がどうなっていたら彼の横に並ぶことができていたのか。
正解は彼に聞くしかわからない。
もうそろそろ、忘れてしまいたいなと思った。
どうやったら忘れられるのかわからないけれど
何をしたら忘れられるのかわからないけれど
全部忘れたいなと思った。
きっとあの人と一緒にいても、私はいろんなことを我慢していたはず
きっとあの人と一緒にいても、自分の望む楽しいことはなかったはず
きっとあの人と一緒にいても
きっと、きっと、きっと。
きっと私は私を作って、自由に生きていられなかったはず。
「あのブドウはきっと酸っぱかったにちがいない」
とキツネが思って立ち去ったように
彼の価値を下げて、自分を正当化するしかないのかも。
今はそうするしか仕方がないのかも。