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経験と継続

ピアノを継続することで、いろいろなものが見えてきます。
ピアノを習い事として途中でやめてしまうと、それまで弾けていた曲が弾けなくなります。
ただし、動作としての記憶は脳に残っているようです。
つまり、完全に弾けなくなるわけではありません。
ピアノに限らず、意識的に取り組んだ結果、無意識にできるようになるのです。
「できるようになったこと」を「維持」するのが練習であり、その経験が自信につながっていきます。



お子さんによって、一人ひとり、得意なところや苦手なところが異なります。
よく「習い事は楽しければいい」と考える方がいらっしゃいますが、私は異なる意見を持っています。
誰も最初からピアノを弾けるわけではありません。
ボールを蹴って楽しかったというのは、単に偶然うまくいっただけのことです。
大切なのは、一度うまくいっただけなのか、それとも継続的に取り組んで身に着けるのかということです。


「練習しないからやめさせる」と言われる方が時々いらっしゃいますが、やり方を知らなければ練習できません。
親の声掛けで、しぶしぶでも取り組むお子さんは、実はとても優秀なのです。


そして最も大切なことは、継続することです。
50年間ピアノを弾いてきた経験から言えば、ピアノが弾けることで人生がより豊かになります。自己表現の手段を一つ持つことができるのです。これに尽きるでしょう。


ピアノを習得した人にしか見えない景色があります。
子どもたちは、それぞれの方法でピアノを楽しめるようになっていきます。
そして、各々の「ピアノとの付き合い方」が形成されていくのです。
この段階に到達するまでが、まさに「習い事の過程」なのです。


しかし多くのお子さんが、「忙しくなる」などの理由で、小学生のうちに「習い事の域」のうちにやめてしまうと、そこを乗り越えるやり方を見つけられないことになります。
極端なところ、仮に習い事を、楽しさだけで渡り歩いていったところで、そのパターンを身に着けてしまったら・・・
お子さんが、つらいことやつまらないことに遭遇した時、どう対処すればいいのでしょう?

楽しさだけで何でもやってきたお子さんは、自分のやる気がない時、気持ちを持ち上げる術(すべ)を知りません。


ピアノを継続することで、「飽きた」「つまらなくなった」という感情を乗り越え、どうすれば続けられるか、楽しくなるかを学ぶことができます。むしろ、常に順調に進むほうが稀なのです。

長期的に同じことを続けると、自分の行き詰まりの原因や傾向が見えてくることもあります。モチベーションが低くても取り組まなければならない時、どう乗り越えるかを学ぶ機会にもなります。
もちろん、解決策はすぐには見つかりません。試行錯誤の時間が必要で、時に苦しむこともあるでしょう。


しかし、必ず困難を乗り越えることができます。本人に目標がある限り、時間はかかりますが、指導者との対話や内省を通じて成長できるのです。お子さんの個性に応じて、アプローチは様々です。
継続することで、失敗経験からも貴重な学びを得られます。
継続によって、ピアノの真の喜びを深く理解できるようになります。
その真の喜びとは、努力そのものにあるのです。


長く人生を生きていると、本当に大切なものが見えてきます。それは
自分のために、コツコツと努力を重ねられること
です。
自分との約束を守ること。
これこそが自信につながるのです。

私自身、意識的にコツコツとやってきたわけではありませんが、結果としてピアノは私の人生に残りました。
繰り返しになりますが、私の場合は単に、ピアノをやめる理由がなかっただけなのです。

「自分にとってのこれだ」というものを見つけるために、ピアノを継続することに大きな意味があります。
何より、音楽には人を和ませる力があります。
ピアノとの関わり方は人それぞれでいいのです。
練習時間が少なくても構いません。

たとえ1年に1曲しか仕上がらなくても、本人が一生懸命取り組めれば、それで十分ではないでしょうか。
お子さん自身が「私がピアノを続けることはこういうこと」と言える人生を、お子さんと保護者の皆さまと共に創っていきたいと思います。

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