教室で使っているレッスンノート(4)
ピアノの練習ができないという困難に直面した時、それは子ども自身が何を達成したいのかを見つめ直す機会だと思います。子どもと練習方法についての対話を続けることで、子ども自身が自分の目標を遂行しようという力を育てることができると信じています。
教室でのレッスンノートは現在、当たり前になりました。全員が練習に取り組んでいますが、導入からしばらく経って、一部の生徒や保護者が練習できないと感じ、ピアノをやめる傾向がありました。しかし、練習できないこと自体は子どもが成長するにしたがって自然なことです。
やめてしまうのは簡単ですが、練習がしにくくなった時に考えることは、子どもの目標を再確認することです。子どものピアノへの興味や目標を再確認すれば、おのずと何をサポートすればよいことかが分かります。子どもが練習するようになるのが目的ではなく、子どもが自分の問題に気づき、どう乗り越えるかを考えることが大切です。
渋々でも練習することに意味がある
確かに、練習は非常に重要です。
私自身も練習をしていますが、毎日ではありません。しかし人と違うのは、ピアノを弾くのを一度もやめたことがないというだけです。
続けていれば、できることもあり、できないこともあります。また、調子が良い時もあれば悪い時もあります。ピアノが練習できるのは、意欲があって、やりたい時だけと思ってはいませんか?
またはたくさん時間があって、意欲がある時だけだと思ってはいませんか?
実はそうではないのです。
私の場合は、自分のやりたいことがピアノだったため、ピアノを優先してやってきました。
そうすると苦手なことは後回しになってしまいます。
やりたくないけど、やらなければならないことを、渋々行うこともあります。しかし結局、それで帳尻を合わせているのです。
お子さんは私とは逆で、ピアノの練習を後回しすることがあります。
ただし、「後回しにするならやめてしまえ」という考え方は適切ではありません。なぜなら、そうすると永遠に上達しないからです。
後回しにしたとしても、必ずやればいいのです。渋々でも行うことには意味があります。
自分がしたいことにフォーカスする
練習できないからといってやめるのではなく「自分は何をしたいのか?」と問いかけることが大切だと思うのです。
やりたいことがあるので、練習が後回しになることがあります。
その結果、上達が停滞することがありますが、それは当然の結果です。
しかし、練習を続ければ必ず上達します。たとえレッスンを止めても、家でピアノを弾くことができればそれは良いのです。
問題は、ほとんどの子どもたちがレッスンを止めたらピアノを弾かなくなってしまうことです。
脳科学的に考えても、40年間ピアノを弾かなかったとしても、それまでに習得した技術は体の記憶として残ります。ただし、練習していない技術が得られるわけではありません。
少しずつでも続けていればいつかは弾ける
発表会で演奏した曲は、私が5年間かけて演奏したとアナウンスしました。毎日は演奏していなかったからです。
しかし、気が向いたときに弾くだけで、私は非常に楽しんでいました。演奏すると、やはり練習が必要だと感じるからです。
長い期間ピアノを学んでいると、上手に弾けるか弾けないかの両極端はもはや当然です。毎日6時間以上演奏していた時期もあれば、現在のように週に2~3回、1時間以下しか演奏しないこともあります。
頑張ることができるときに頑張る、それでいいとも思います。そうでなければ、50年間続けることはできません。
弾けなくなって自分が困った時に、意欲は生まれます
たとえば、ピアノの練習ができず、レッスンをやめることになったとします。ピアノを弾かなくなっても、誰も怒りません。本人以外の誰も困りません。
これで家族間の争いはなくなり、気分的には楽になります。ピアノは弾かなくなったら、弾けなくなる自分が困るだけです。弾けなくなってもいいと考えるならそれもありだと思います。
でも子どもは弾けなくなった自分が、どのようになるかを実際に体験してみないと分からないのです。今しか見えないからです。
親はどうしても、困るから…と叱咤激励して練習させようとします。そこで無理をしてこじらせてしまい、練習が嫌だとなってしまい、ピアノをやめてしまう。
練習ができない場合、子どもに「やめさせる」ことはもちろん簡単です。
しかし、そうすると自分が困難に直面した時、やめるか続けるかの二者択一になるでしょう。だからこそ、練習していない自分をどうやって練習できるようにするか、子ども自身が試行錯誤することが、私は大切だと思います。
そのためには「自分は何ができるようになりたいのか?」を思い出すことが重要です。そして、それを達成するためには行動が必要です。
自分が今したいことを優先しても、ピアノが弾けるようにはなりません。
それを子ども自身に認識してもらうことが大切です。私はお子さんに「練習していないね?」と言うだけではなく、責めるつもりもありません。
目指す状態を言葉にするのです。具体的なイメージを作ります。
この曲を弾けるようになりたいの?
どれくらい弾けるようになりたいの?
この曲が弾けるようになったら、何が変わると思う?
音符がスムーズに読めるようになったら、生活はどのように変わると思う?
そして、その目標を達成するために、今何をすべきかを一緒に考えていくのが私の仕事です。
そして、最後にもうひとつ。
それが私の大きな目標です。
自分の弱さを認める
大人の生徒さんのレッスンも担当していますが、大人の方はその点でとてもスムーズです。練習できていなくても、みんなが問題を言葉にすることでレッスンが進行します。「練習できなかったのが悪い」ではなく、「練習できなかった自分を打ち明ける」。
それが自分の弱さを見せても、ラクに生きられる秘訣。練習できていないという制約の中で、どのように自己開示できるかが重要だと思います。
学ぶということは、そういうことですよね。
指導者は最初から「できている」ことを求めているわけではないのです。
ゴールに到達するための道筋をどうつけるか、それが大切なのです。