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時をかけ・る

関ヶ原の負け組と言われた歴史上の人物5人にフォーカスを当て、下記の短編作品を1公演に3つずつランダムに上演していく今作。
私は3/23㈯のソワレと3/24㈰のマチソワの
計3公演を観劇。控えめに言ってめちゃくちゃいい舞台だった。
大富豪なら全通したかったのが本音。笑


○作品について
それぞれの作品に主役の演者が置かれ、俳優5人が役を入れ替えながら公演していく珍しい形式の舞台。しかもその演者が安西慎太郎・木ノ本嶺浩・松田岳・前川優希・内藤大希・・・と年末るひま公演の常連達。そして演出平野良、脚本赤澤ムック・音楽オレノグラフティーと制作サイドも熱い。るひまのオタクとしては情報解禁の時点から、なんとしてでも観劇したい!と思える、胸が踊る演目であった。作品のラインナップと主な主人公は下記のとおり。


A・ストレートプレイ/安国寺恵瓊 『嗤う怪僧』
安国寺恵瓊(安西慎太郎)、毛利輝元(内藤大希)

B・裁判劇/小早川秀秋 『被告人 ヒデトシ』
小早川秀秋(木ノ本嶺浩)、奉行(安西慎太郎)

C・エンタメ活劇/大谷吉継 『莫逆の友』
大谷吉継(松田岳)、石田三成(安西慎太郎)

D・3.5次元ミュージカル/直江兼続 『ラブミュ☆北の関ケ原』
直江兼続(前川優希)、伊達政宗(松田岳)

E・グランドミュージカル/真田信之『ミュージカルNOBUYUKI!!』
真田信之(内藤大希)、真田幸村(前川優希)

ストプレから.5作品、そしてグランドミュージカルと作画の振り幅が大きい。私は内藤さんのファンなので、彼がるひまのグラミュ枠をしっかり確保していること、そして久しぶりに真田信之を演じる彼を見られることにすごくワクワクしていた。観劇前までは絶対にEにハマる!と自負してた。
が、しかし。意外にも1番刺さったのがAの安国寺恵瓊物語であった。

○安国寺恵瓊と毛利輝元

学生の頃から割りと日本史が好きであったし、観劇が趣味になってからも歴史ものに縁があったので、それなりに歴史上の人物は知っているつもりでいた。でも「安国寺恵瓊」という人物は今作を見るまで全く知らなかった。
「そうか、石田三成・小西行長らと一緒に斬首された人物なのか」
→観劇前に仕入れた情報もその程度。

それがたった一回の観劇で簡単に覆る。
忘れもしない3/23(土)の夜公演。
平野良が安国寺恵瓊の生い立ちを話し、「そんな恵瓊のはじまりは…闇」と言い去った後、突然やってくる闇。そして暗闇の中、
木魚の音ともに聞こえてくる読経。
暗闇×読経 という組み合わせは否応にも恐怖心や不安感を煽られる。
思い返せば、私はこの演出を見た時点で
既にこの物語の沼に片足を踏み入れていたように思う。

暗闇の中、一人現れる恵瓊。その手には赤子が抱かれ、奇声を上げながら彼は赤子に話しかける。
「毛利に一族を滅ぼされ、悔しいのか?」と。

この赤子は彼自身。ここがこの物語のミソであると思うのだが、彼は自分の一族を毛利に滅ぼされたにもかかわらず毛利家に仕えている。彼の胸中に毛利への恨みがあることがこの時点で伺える。
表面上は輝元に忠誠を誓っているように見える恵瓊。でも実際は?
生まれたばかりの輝元を腕に抱き、
右手で輝元の首を締めようとする場面もあったが、
やはり毛利を滅ぼす機会を虎視眈々と狙っているのではなかろうか。
憎しみは新たな悲劇の始まりであり、この物語の着地点は恵瓊の裏切り…と簡単に予想することができた。現に、安西の芝居が怪演すぎて、恵瓊のヒール感が凄まじい。

ところが、その予想が
意外な人物によって覆される。
内藤演じる輝元だ。

純粋無垢に見える輝元。煙たがれることが多い恵瓊を慕い、彼を「2人目の父」のように思っていると第三者を介し恵瓊に伝える。
天涯孤独ゆえ、人に愛されたことがない恵瓊はその話を聞き、ころっと輝元に心を許してしまう。これこそが輝元のねらい。
自分が出陣しなくても済むよう、恵瓊を欺いたのだ。そうとは知らず、自分を愛してくれる輝元のために自分が戦場に赴くことを簡単に決める。その顔は実に晴れやか。

「私は愛されていただけでなく、
愛することのできる人生を与えてもらえた」

このセリフをこぼす恵瓊の姿が忘れられない。
傍から見れば、輝元に踊らされ惨めにも思える恵瓊だが、愛され愛する機会を得られた彼は戦場で死にゆくとしても、幸せを感じていたように思う。
安西くんの精細な心の機微がすごく好きだったし、
狂気や憎悪を含んだ芝居がこんなに上手だとは意外だった。

そして、この作品のキーマンであった内藤さん演じる輝元。冒頭の姿からは予想できない二面性のある役。まん丸な目をキラキラさせ、天真爛漫に輝元を演じていたかと思えば、ある場面をきっかけに瞳から光がスっと消える。
内藤さんのこういう役が大好きなのだが
(つくづくスリルミー向きな役者だなと思うので
ホリプロさんは早急にスリルミを再演し
彼をキャスティングしてください)
輝元はいつから恵瓊を身代わりにすることを考えていたのだろう。
恵瓊にむけた言葉や思いはすべて嘘だったのだろうか。どこからが本心で、どこからが虚心であったのか。こういう答えの無い深堀がやっぱり好き。

恵瓊はさ、僕のことが好きすぎるから」と
覚めた目で言い放つ内藤さんが今も忘れられない。


○その他の作品について


B.小早川秀秋について
まず、小早川の裏切りを裁判劇にしてしまう発想が好き。そして物語の確信、裏切りの決め手が「ねねへの恋心」だったなんてそんなIF、万人は思いつかないじゃん?
改めて赤澤ムックさんの脚本の秀逸さにうなったし
みねくんの独白じみた冷たい質感の演技がすごくよかった。

C.大谷吉継
外見にハンディをおった人の話が元々大好きな人間なのでこの作品に、はまらない訳がなかった。
(ex.ノートルダムの鐘、ウィキッド。ファントム・・・など) 安国寺恵瓊物語の次に好きだったかもしれない。

ハンセン病にかかった吉継のことをみんなが敬遠する中、お茶会で三成だけが吉継が口づけた碗に口を付けるシーンがたまらなく好きだったし、思うように動かせない体になっても主君のために戦う無骨ある姿もグッときて好きだった。あと、シンプルにがっくんの殺陣がよかった。

D.直江兼続×伊達政宗
直江に前川くん、伊達にがっくんをキャスティングした演出が大優勝過ぎてめちゃくちゃ楽しかった。年末公演だといつも孤立無縁状態な前川くんに初めて仲間が出来たのが嬉しかったし、その相手ががっくんて所に萌えた。2人ともビジュアルがめちゃくちゃ良かったし、お芝居の相性もばっちりで最高。ちょっとダサいのに.5音楽ぽく聞こえる音楽も良い。𝕏でも「ラブミュが」「ラブミュが」と騒がれるくらい人気だったラブミュ。公式に動画がすぐ上がったのはびっくりした。騒ぐのって大事だね笑。
前川くんの直江のビジュが好きだったしお芝居と刺さって、今プチ推し中。年末に座長で立つ姿が見たい。


E.真田信之
内藤×前川のグラミュ。前川くんのダミ声がちょっと苦手だったんだけど歌唱力めっちゃあがってて二人のハーモニーがすごく心地よかった。しいて言えば、衣装が洋装だったのがマイナスかな。グラミュにかけて洋装にしたらしいけど別に和装で良かったと思う。犬伏の分かれが何度見ても辛い。



時る、三日間しか公演しなかったのがもったいなかったのでシリーズ化して半年に1度くらいのペースで公演して欲しい。振かえ・る!とか今後あればいいなー。


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