ハートのキングと出逢う時
彼女を選んだのは彼。
彼を選んだのは彼女。
対の二人は全てを超えて引き合う。
「なぜ生まれてきたんだろう」
そう考えることが何度もあった。
考えすぎ、と周りの人からはその度に言われてきた。
だけど、
頭に浮かんでは消えて、また浮かんでくるその問いかけは
私を解放してはくれなかった。
朝目覚めて、家を出る支度をして
会社に向かい、仕事をこなし、帰宅する。
夕食を食べ、お風呂に入り、ベットに入って眠りにつく。
当たり前のように過ぎていく毎日に疑問を感じながらも
変化のない時間を過ごしていた。
何かが欠けている気がする。
どこかに置いてきた、そんな感覚。
どんなに楽しい時間を過ごしていても、
どんなに夢中になることがあっても、決して満たされはしない。
ある日ある人に仕事の電話をするという日常の何気ない瞬間で
私の人生が大きく変わることになる。
「初めまして」
落ち着いた少し低めの声は、安心感を纏っていた。
そのため、年齢は私よりだいぶ上だとなぜだか思った。
数週間後、その電話の向こう側の人と初めて会うことになる。
初めて彼を目にした時に衝撃を受けた。
その瞬間を忘れることはない。
体温が急上昇し、血流が全身に一瞬にして巡った。
そして、彼の存在を急激に意識し始める。
今まで彼を知らずに生きてきた私の世界は終わりを告げて、
彼という色を纏った世界へと変化していった。
決まっている最善のタイミングまで信じて進むだけ。
キングはクイーンを、クイーンはキングを知っている。
自分にとって“しっくりくる”人は、
いつだっていろんな条件やしがらみを超えてくる。