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原油投資ハンドブック : ロールオーバー②

ロールオーバーで注意する点のもうひとつは「保有数の変化」です。

具体例を見てみましょう。例えば原油先物期近(仮に3月限とします)を100単位保有しているとします。3月限の価格が $50 だとすると保有する先物の時価は $5,000(=100単位 x $50)となります。
そして次の限月である4月限の価格が $51(つまりコンタンゴの状態)だと仮定します。この状況でロールオーバーを行う場合、3月限を売却し、その売却代金で4月限を購入します。(ここでは話を単純化するため「売値」「買値」は無視します)

  3月限売却:100単位 x $50 = $5,000
  4月限購入:$5,000 ÷ $51 ≒ 98単位

この様に当初原油先物のポジションとして 100単位 を保有していましたが、ロールオーバーする事によって保有数が 98単位 に減少してしまいます。
同様にこのままポジションを保有し続け再度ロールオーバーする事を考えます(4月限→5月限)。ロールオーバー時点で4月限の価格が変わらず $51、5月限の価格が $52 とすると(コンタンゴ)、保有単位は 96単位 に減少します。

  4月限売却:98単位 x $51 ≒ $5,000
  5月限購入:$5,000 ÷ $52 ≒ 96単位

つまりコンタンゴの状況下ではロールオーバーする度に保有数が減少していきます。その結果、価格が上昇した場合でも当初よりも保有数が減少しているので、その価格上昇メリット享受が小さくなるのです。
ちなみに限月間の差が大きくなればなるほど保有数の減少幅も大きくなります。(例として価格が3月限 $50、4月限 $55、5月限 $60 のケースだと保有するの変化が 100単位 → 91単位 → 83単位 となります)

  3月限売却:100単位 x $50 = $5,000
  4月限購入:$5,000 ÷ $55 ≒ 91単位

  4月限売却:91単位 x $55 ≒ $5,000
  5月限購入:$5,000 ÷ $60 ≒ 83単位

一方でバックワーデーションの場合を見てみましょう。価格の前提として、3月限 $50、4月限 $49、5月限 $48 とし、各ロールオーバー時点で価格の変化が無いとすると、以下の通り保有数が 100単位 → 102単位 → 104単位 と増加していきます。従ってバックワーデーションの状況下ではロールオーバーする度に保有数が増加し、価格変化に対する影響度が大きくなる事となります。

  3月限売却:100単位 x $50 = $5,000
  4月限購入:$5,000 ÷ $49 ≒ 102単位

  4月限売却:102単位 x $49 ≒ $5,000
  5月限購入:$5,000 ÷ $48 ≒ 104単位

原油ETF保有者の方からよく "原油価格が上昇しているのに(この場合原油先物期近を指しているケースが多い)思ったよりもETF価格は上昇していない" というコメントがありますが、それはコンタンゴ状況下でロールオーバーを何回か繰り返した事によって保有数が減少した事が原因である事が考えられます。

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