原油投資ハンドブック : コンタンゴ / バックワーデーション
2021年1月27日現在の原油先物(WTI)の価格を見てみると、グラフの通り、決済日が間近なもの(=期近)から遠く(=期先)になるにつれて価格が低くなっています。
この様な状態を「バックワーデーション」と呼びます。
一方で、昨年春先の価格大暴落時に見られたのが以下のような形状(期近から期先にかけて価格が上昇する形)で、このような状態を「コンタンゴ」と呼びます。
原油の場合、株式や為替などと異なり、商品の特性上「保管コスト」を考慮する必要があるので、一般的には「コンタンゴ」のように期先になればなるほど価格が高くなっていく状態に落ち着きます。
特に WTI(*) 原油先物の場合だと受渡しを「現物」で行う必要があるので、他の原油先物(ブレント等)に比べて、より保管コストを考慮した価格形成になります。
(*) WTI はWest Texas Intermediate(ウエスト・テキサス・インターミディエイト。アメリカ合衆国南部のテキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油の総称)の略称です。 WTI原油はガソリンや灯油が多く含まれ、硫黄分も0.2%ほどと少なく、高品質の原油であることから「軽質スイート原油」とも呼ばれています。
昨年4月に史上初のマイナス価格となりましたが、その要因としては最大原油ETFである United States Oil Fund(ticker:USO)がかなり大きな先物ポジション(期近)を保有しており、限月交代時点でそのポジションを次の限月にロールオーバーしようと試みたものの、市場にダブついた原油の保管コストが大きくなったため、限月間スプレッドが過去見られない程急拡大した事が挙げられます。
上記「保管コスト」を考慮した上でも、今後の原油価格が下がっていくという見方が強まると「バックワーデーション」になります。この様な状態になるのは、現在は需給バランスが一時的にタイトである場合や何らかの突発的な事象が起きてスポット価格が跳ね上がった場合等によく見られます。
原油のようにリアルアセットの場合、中長期的にはある一定の価格に収斂していくと考えられており、先物を見る場合期先の価格はその収斂した水準に近づいていくと考えられます。
従って、一般的には、原油価格が低いケースでは「コンタンゴ」、高いケースで「バックワーデーション」となる傾向が見られます。
その意味では、現在の原油先物の形状は、中長期的な価格(つまり収斂していく価格水準)としては $50 を下回る水準(大体$46前後)が適正で、現状のスポット価格は少し高めに位置するという事を示唆しているとも言えます。
この様な「先物が織り込んでいる価格動向」と「実際の価格動向」の違い(Perception Gap)を取りに行くのが、まさに先物で投資する面白さではないでしょうか。