見出し画像

原油投資ハンドブック : ロールオーバー①

原油ETFや原油CFDを取引しているとよく「ロールオーバー」と言う言葉を聞く事が多いと思いますが、これは "先物取引において、期近のポジションを反対売買によって決済すると同時に、それまで保有していたポジションと同様のポジションを期先に新たに建てることによって、期近になったポジションを期先に移動する取引" を指します。限月の買い(売り)と他の限月の売り(買い)とをほぼ同時に行う事になるので、同一商品の限月間のスプレッド取引の一種とも言えます。

昨年4月にWTI原油価格が史上初のマイナス価格となりましたが、その大きな要因は最大原油ETFである United States Oil Fund(ティッカー:USO)のロールオーバーと言われています。当該ファンドは原油価格のパフォーマンスを反映するため、期近先物のロング(買い)ポジションを保有し、期限が近づくと期先先物に乗り換えるオペレーションをします。当時は5月限ロングポジションを1億バレル以上も保有しており、期限である4月21日までに反対取引をする必要(つまり売る必要)がありました。ところがコロナ危機で世界的に原油需要が急減したため在庫が増え、原油の貯蔵施設が満杯に近づいていたため買い手がなかなかつかず、結果としてほぼ投げ売り状態でマイナス価格に下落しました(つまりコストを払ってでも売りたかった)。

スクリーンショット 2021-02-04 8.31.15

この大失敗を受けて、その後当該ファンドは運用方針を変更し、それまでは期近先物のみのポジションにしていましたが、期先も含めた分散されたポジションとしています。ご参考まで昨年4月から直近までのUSOの先物保有ポジション推移を下記添付します。

スクリーンショット 2021-02-04 0.32.44


次にロールオーバーが行われる場合の注意点について話をしたいと思います。大きな注意点として2つあります。

まず注意するのが「ロールオーバーに伴うコスト」です。
原油先物でも他の商品と同様に「売値」と「買値」があり(為替でいう「TTS」「TTB」のようなもの)、取引を行う際この差によって間接的にコストを払います。
ロールオーバーでは期近先物「買い」ポジションを決済するため「買値」(→安い価格)で売却し、期先先物を「売値」(→高い価格)で購入する必要があります。
例えば、私が取引で使用している楽天証券の2021年2月4日時点の原油先物の取引条件を見てみると以下の通りとなっており、期近のもので「売値」と「買値」の差が$0.025(=$55.950ー$55.925。率換算で0.05%)、期先になればなるほどその差が大きくなり、4ヶ月先になると$0.450(=$54.825ー$54.375。率換算0.83%)まで拡大します。

スクリーンショット 2021-02-04 8.14.05

つまり仲値(「売値」と「買値」の平均値)からの乖離を "コスト" として認識すると、3月限から4月限にロールオーバーする時のコストは $0.0375(=$0.0125+$0.025。率換算0.07%)、3月限から7月限にロールオーバーする場合は $0.2375(=$0.0125+$0.225。率換算0.43%)となります。
期近同士でのロールオーバーであればさほど気にならないコストではありますが、より期先先物にロールオーバーする場合はそこそこのコストになるので注意が必要です。
従って例として挙げた USO の場合では、昨年4月以降行われるロールオーバーの際はETF保有者はそれなりのコストをその都度負担している事となるのです。

ちょっと長くなったので、もうひとつの注意点についてはまた次回にしましょう。

いいなと思ったら応援しよう!