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兄の宿命、妹の宿命

再び帰省したときの話である。最後の夜、夕食の後、旦那は食べ終わった息子の相手を、母は眠くてグズる娘を抱っこしたりあやしていた。


そんな中、最後まで飲み食いしていた私と父。お酒の力もあって、なんとなく昔話をした。

話は幼少期のことから、大学時代のことまで、色々。

私が赤ん坊の頃、離乳食はトマトばかり食べていたとか、8つ年の離れた兄がよくおんぶしてくれていたとか。
他愛のない話が満載だが、今回心にじんわりきた話を少し紹介したいと思う。

いくつかあるので、今回はそのうちの一つを。


兄が大学入学と共に上京するとき、両親は私を祖母の家に預けて引っ越しの手伝いについていった。兄は第一志望の大学には受からず、浮かない心持ちで入学を決めた上に、田舎から上京して初めての土地で初めての一人暮らし。兄も両親もとても不安だったという。

しかし兄は、当時まだ小さかった私(私はいわゆる「おばあちゃん子」ではなかったため、預けられていた祖母の家も慣れず、我慢して過ごしていた)を思って、両親を早々に帰らせたらしい。
兄はとても不安だったと思う、せめて一泊してあげればよかったと、両親は何年経ってもこの話をする。


私も18で上京したクチなので、親元を離れる寂しさや不安は今でこそよく分かるが、この時の兄はやはり兄だったのだ。親が100%ベストな状態でサポートしてくれた私とは違う。それが上の子と下の子(特に年が離れている場合)の違いであろう。

我が息子も、6歳離れた小さな妹を思って、我慢したり強がったりする日が来るのだろう。いや今だって既に、小さな我慢はしている。娘が生まれる前の時のように、自由にオモチャを広げて遊べない(娘が何でも口に入れるので)、親を独り占めできない、など。

いつの時代も、兄には兄の宿命があり、妹には妹の宿命がある(これが姉だったり、弟だったりするとまた少し違ってくるのかもしれない)。

家族愛があるタイプでもなく、普段は連絡も全くといってない。年が離れているせいか一緒に遊んだ記憶もあまりない。
幼くてまだ手のかかる私がいたので、早々に大人びてしまったと母が言っていた。

だけど。

兄には兄なりの覚悟があったのだろう。まだ18そこそこで、絶対に不安だったに決まっている。死ぬほど心細かったに決まっている。でも、表には決して出さないものの年の離れた妹を心配していたのだろう。そして、ぐっとこらえて、両親を日帰りで帰らせたのだろう。

きょうだいって不思議だ。兄の気持ちは全てはわからない。逆も然りだろう。
でも、目には見えない透明な細い糸で、ゆるやかに繋がっているような気がする。親子とはまた違う、不思議な糸で。

そんなことを思いながら、夢中で遊ぶ息子と娘を眺めていた。お座りできるようになった娘が、ふとこちらを向いて、ニヤっと笑った。

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