第4回 関根史織ファンクラブ
関根嬢が参加している新しいグループ【内田万里+クレイジーピッグ】が発足したので、その情報とアーカイブス期間中の配信ライヴの感想など。
メンバーは元【ふくろうず】の内田万里(ピアノ/ヴォーカル)、関根嬢(ベース/コーラス)、【奮酉】の河西愛紗(ドラムス/コーラス※配信ライヴ中では、アコースティックギターを弾く場面も)。
去る2021年10月17日(日)に配信限定で行われたライヴ「電波なギフト。」、筆者はリアルタイムの視聴は叶わなかったけれど、後日チケット購入しアーカイブス視聴。(ちなみに、内田さんにとっては配信ライヴ自体が初めてだそう。)
シンプルな3ピース編成かつ、スタジオライヴであるため、本人たちが現場で聴いている/作っている音楽に、かなり近い音楽が電波に乗って届けられていると考えられます。
過去に開催され、関根嬢も参加している【JETHRO TULL】のコピーバンド【Tull Tull Sources】のライヴくらい、フィジカルなバンド演奏じゃないかと。
基本的には技巧的な演奏はあまりしておらず(超絶技巧はないというくらいの意味)、ピアノロック/ポップなスタイルの曲中心。
とはいえ、そのシンプルな中でも、特にピアノ伴奏と歌のメロディーには【ふくろうず】では全曲の作詞・作曲を担当していたという、内田さんのセンスが随所に光る、良曲だらけのライヴでした。
そして音源「離脱」の商品解説に記載されていましたが、まさに「この3人だからこの仕上がり」と感じるディテール。中心の内田さんだけでなく、メンバー全員が既にキャリアのあるミュージシャンなので、演奏が自然で気持ち良いです。
もちろん、そもそもこの3人のメンバーの相性が良いということあってのバンド発足なのでしょうが、それ以前に、それぞれが自然体でありつつ、きちんとした演奏ができる人たちだから、この良い仕上がりになってるのだろうなと思いました。
以下、メモ程度ですが、各曲の印象、感想。(※曲名は、わかるもの以外は仮称として勝手につけてます。悪しからず。もし、きちんと公開されてる正式な曲名やセトリ情報などあれば突っ込んでください。)
1.PRELUDE ライヴのオープニングとして短めのピアノ弾き語りから、関根嬢と河西さんは、コーラスから参加し、ベース&ドラムスのリズム隊は音量は抑えぎみで参加していくというもの。
改めてカウントがとられて、堰を切ったように、リズムが高鳴り、推進力が与えられ、音も大きく、明るく視界が開ける演出。
1曲目から、ミニマルであることを活かした音の強弱や、距離が近いダイレクトな意志疎通で、豊かなバンドアンサンブルに溢れてます。
ローディーさんやPAさんといった、いわゆる裏方のスタッフによるリモートコントロールやサポートはほとんどない、本人たちの決めた出音なのでは(実際のところは筆者には不明)。
たとえば、サビ後に一瞬、エフェクトを強めるベース、ドラムスのフィルなどにも即興的/フィジカルな表現が散らされてる。
全編に渡って、「スタジオライブだからできる」バランスや、ダイナミズム、細かいニュアンスを実演してますが、この1曲目は象徴的な始まり。
2.TONIGHT ストレートにポップな曲。個人的には、1曲目とこの曲では、YUKIみたいなセンスの楽曲だなと思った。あと、部分的にはパスピエや中村佳穂さんとか。
「TONIGHT TONIGHT~♪」の繰り返しがキャッチーで、ピアノソロ後では、ハンズクラップ(電子ドラム)での伴奏に変わったり、最後は歌われ方(リズムと音程)に変化がつけられていたりと、その展開も含めてライヴ映え確実曲。
3.橙 典型的なフレーズながら、ややダウナーな趣のある関根嬢の8ビート(スタッカート/マルカートぎみ)のリフはじまり。そこにピアノの綺麗な旋律があり、続いて抑制された歌い出し。コード感が充実して、曲のキャラがより明らかになるところが洒落てる。
サビでは、序盤のメロからある「橙色(だいだいいろ)」と似た韻律のメロディー(歌詞)がリフレインされます。ピアノソロを経て、歌のニュアンスや伴奏のフレージングは冒頭とは違う姿のサビへと発展してエンディングという構成。
その展開は、2.TONIGHTと似ているとも言えますが、むしろ対照的にシリアスさや緊張感もあり、「死にたいとかナンセンス」という歌詞も聞き取れる。
イントロではマルカート(音価を3/4程度に切って弾く)8ビートの刻み(リズムパート)だったベースが、終わりにはナチュラルな音価でむしろ旋律寄りになっています。ドラムスも含めて、音数が変化していき、充実していく様が見事。
(この曲は、10/22付でYouTubeにアップされています。)
MC(Girl's Talk「関根さん、チョロくない!?」)
4.STARLIGHT この曲では河西さんがアコースティックギター(エレアコ)を演奏。スロウテンポでムードの違う世界観へと。
音の鳴る瞬間の、点のリズム感が薄められ、内田さんのヴォーカルもささやく/語りかけるようなニュアンス。より自由で、情緒ある印象に。
ピアノもベースも電気的なエフェクトが強調され、縦のリズムあるピアノロックから、むしろメロディーなど横の流れや、ギターコードも加わっての和音の膨らみを聞かせる空間的なアンサンブルとなっています。
MC(Girl's Talk「美味しいごはんを」)
5.嘘 ここで河西さんがドラムスへ戻る。こちらもスロウテンポでピアノ弾き語りが主の曲。この配信ライヴでは、特に弱音のニュアンスがほんとに素晴らしいです。
電気の力だけでなく、演奏者の肉体のコントロールから表現される音量のミニマム~マックスを聴けるものは、こういった小さい空間での、地力ある演奏者のパフォーマンスならでは。
MC(Girl's Talk「ほら、上手くいった。」)
6.NOSTALGIA いわゆるキラキラ感のあるシティポップソング。前ノリな感じが心地よいです。
とはいえ、その由来がピアノロックだからというより、ベース、ドラムスも込みの、この3者で浮遊感を絶妙に醸していて、単にシティポップ風、単にアッパーというだけでは言い表しきれない、独特な爽やかさがあります。
6.離脱 今回リリースされた作品のタイトルソング。聞こえてくる音楽と歌詞の印象から「別れ」の曲であると思われますが、デビュー曲で「別れ」というのもとても印象的。美しいメロディに満たされています。
途中からコーラスが添えられ、最後は三人での歌。終わりに向かって高まってゆく展開のエモいエンディング。
MC(「やろう!」)
ENCORE.SHINE MY LIFE 典型的なアッパーノリのベースリフはじまり。アンコールらしいにぎわい/幸福感のある曲。離脱との対比、これからの予感としても素晴らしい!
以上。
この記事を読んで下さる方であれば、既に配信ライヴを視聴している方であろうとも思いますが、もし未視聴でしたら是非とも!
(アーカイブス期限は10/24まで。購入手続きなども含め、詳しくはオフィシャルな情報でご確認下さい。)
おすすめです!
関根嬢はこの配信の2日前、10月15日(金)MUSIC STATIONで椎名林檎さんとの2度目の共演を果たしていて(東京事変の『群青日和』を新アレンジでユウ、アイナ・ジ・エンド、ほな・いこかと共に【Elopers】メンバーとして演奏。)、いわばその直後に、このような根源的なスタイルのバンド演奏もしているというのもアツいですね。
これまでの【関根史織ファンクラブ】でも触れてきましたが、Base Ball Bear、Sticoでのキャリアを通して、また、それ以外でも、ユーミンや中村一義、the pillows、山中さわお、といった大御所や先輩バンドとのベース演奏も経験してきた上で、今後は先輩として、あるいは近い(同)世代のメンバーとの、3ピースバンドとしても活動していくというのはとても楽しみです。
BaseBallBearの小出祐介さんは今年、後輩のバンドにあたる赤い公園のラストライブにサポートギターとして参加していましたが(BR映像作品がにリリースされている。)、後続のバンドとの共演という意味で、姿が重なる部分もあります。
これまで関根嬢は、基本的にはギターロックのバンドや、それに近い形式/世界観での音楽をやってきたという認識で見て良いかと思います。その一方で、BaseBallBear発足最初期では鍵盤での加入(ほんとに一瞬らしいけど)だったことや、Sticoでのチャップマンスティックは、その出音/プロットとしてはピアノ的な二声の旋律でもあること。コーラスだけでなく、時にはリードヴォーカルもこなすこと。
これらを踏まえると、ピアノ弾き語りのフロントマンである内田さんとのバンドをやるというのは、その経験・理解からして、今後もすごくハマるのでは!?などなど、想像しています。
ますます広がり、深まる、関根嬢の新世界に期待!
(【内田万里+クレイジーピッグ】デビュー作となる3曲入りの音源「離脱」は、現段階では[万里商店]でのネット通販のみらしく、配信や小売店舗での扱いはなされていない。※ちなみに、筆者は配信アーカイブスチケット共に注文しましたが、この記事執筆段階では手元に届いておりません。)
(タイトル曲である『離脱』はMVも公開されており、「電波なギフト。」と同じロケーションで撮影がなされている。)
(内田万里さんが2017年まで所属していた【ふくろうず】のラストアルバムPV)
(関根嬢が所属しているBaseBallBearは、3ピースの体制になって2枚目のオリジナルアルバム発売を10/27に控えており、Sticoでは、チャップマンスティック弾き語り曲「SPEAK EASY」のMVが公開されている。)
(河西愛紗が所属する【奮酉(FURUTORI)】のTwitterアカウントと過去リリース作品に伴う記事、アメリカ公演の動画。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?