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VKetReal三題噺
前置き
バーチャルマーケットリアル2023Winter シブハラで行った、リアルタイム三題噺執筆イベントです。こちらでは二編書きました。
遅れてきたクリスマス
お題
ひとりぼっちのクリスマス(@KGHT_2 さん)
食事(@E_M_mcpe さん)
遅刻(@zumiandzumi さん)
本文
私のスマホが鳴る。
彼からの、電話。彼のお仕事は、今忙しいって。今日も、残業だって……。
今日は、クリスマスなのに。しかも、一緒に食事って、レストランを予約していたのに……。だけど、残業が終わる時間は読めないって……。
予約の時間まで、あと30分しかない。このままだと、遅刻してしまう……。
「ごめんなさい、ちょっと予約の時間に遅れそうで……」
お店に、電話を入れる。このままだと、クリスマスに、ひとりぼっち……。予約の時間には、間に合いそうもない……。でも、彼は、多分来られない……。私、どうしたらいいんだろう……?
気分は、暗くなる。せっかくの、クリスマス。彼のいない、クリスマス。ただ、そのことが、悲しかった。ここがいいなって、彼と一緒に選んだお店だったのに。予約もなかなか取れない、評判のお店だったのに……。私より、仕事が大事なの?
そんな時に、またスマホが鳴る。彼からの、電話だ。予想以上に仕事が早く片付いて、もう、すぐそばに……。
「待たせたね、萌……、これは、僕からの、プレゼント!」
蓋を開けると、ダイヤモンドの指輪だ……。これって、まさか……。
「萌さん、僕と結婚してください!」
あまりのうれしさに、涙がこぼれ出る。教会の鐘が、高らかに鳴り響く。私は無言で、頷いていた。彼に抱きしめられると、そのぬくもりは、あまりにも温かくて……。
突然の、プロポーズ。幸せが、遅刻して、やってきた。それだけで、私は嬉しかった。
心地よい眠りを
お題
夜景(@Mu_Alexius000 さん)
剣(@shake_ba2 さん)
V睡(@citron3169 さん)
本文
窓の外に、広がる夜景。
光り輝く街の灯りが、剣のように天に突き刺さっている。
こんなにきれいな空なのに、なぜかこの景色を見ても落ち着かない。私は、自然の中で眠りたいのだ。
そんな世界に背中を向けて、私はヘッドマウントディスプレイを被る。電源を入れると、周りの視界は瞬く間に変わっていく。
私が立っているのは、森の中の小さな家。自然溢れる安らぎの世界は、いつものタワーマンションとは全く違う。鳥のささやきに、川のせせらぎ。全てが、心地よい。こんな自然の中で暮らせたらと思うけど、そうはいかない。だから、私はVR機器を被って、大自然の中にダイブする。
こんな素敵なところで眠れたら素敵なのだ。鳥の声も水の音も、私にとっては良い子守歌。睡魔に身を委ねて、私は目を閉じる。
目覚ましのベルが鳴れば、もう朝だ。朝日輝くこの世界はなんと美しいことか。周りには友人の残した書き置きが。大自然の一軒家にいながら、メタバースで人と繋がれるのだ。
でも、名残惜しいけど、「現実」に戻らなければ。
おはようのメッセージに背を向け、私は元の世界に歩み始める。また、今夜、戻ってこよう。でも、それまでは日々の勤めをこなさなければ。
ヘッドセットを外し窓の外を見ると、無機質な剣が空に突き刺さっている。あの愛おしい世界に、しばしの別れを。夜が来たら、あの世界に行ける。それまでは……ほんのちょっとの我慢だ。
……夜が、待ち遠しい。