瞳の奥に炎が閃く - 藤原季節
おそらく器用なタイプではないんだろうと思う
チンピラから幼稚園の保父さん、はたまた子持ちのゲイ(元サーファー)、役柄は幅広いのに
話すトーンはいつも"藤原季節"で
その特徴的な声はともすれば一本調子に聞こえてしまうはずなのに
なぜか彼が纏った役そのもの
そこに到るまでの人生すら想像できるくらいの説得力を持ってその人は目の前に現れる。
拗ねたように結ばれた唇、そして瞳の奥に閃く光。
人物の魂を決して掴んで離さない。
離れてしまわないように注意深く、それでいて圧倒的な意志。
そう、意志。
中途半端な"なりきり"ではない。
容赦なく彼は役への距離を詰めて行く。
考えて考えて、ひとつひとつ沢山の言葉を重ね一枚一枚衣を纏って。
それが溶けて…
ひとつの裸の軀になるまで。
そして命の光を私たちは見る。
それがどんな役でも、その魂に曇りがない。
生きているんだ、生きているんだ、生きてやるんだ。
有無を言わさない意志。
瞳の色は研ぎ澄まされ濾過され限りなく透明。
その目に宿る炎の光の色が毎回様々なので
驚きをもって相対するしかない。
だからこそ私たちは
その瞳の奥を覗き込むのを
やめることができないんだと思う。