創造と愛憎の行きつく先 「ポルノグラファー」から「インディゴの気分」へ
その夜は…かなり自分にとっては大きなライブをこなして帰宅、
肉体は疲労しているのに精神は研ぎ澄まされ、興奮状態にあって
とてもすぐには寝られそうもなかった。
ライブの後は大抵そうだ。
リビングのテーブルの上のMacbookを開いて
その日の写真とか音源とかをいじっていたんだろうと思う。
テーブルを挟んで向かいには家族もいて
その家族は家族でまた自分のパソコンで何やらやっていた。
見るともなくテレビがついたままで、それを時折眺めてはまたMacの画面に戻るという具合。
その時のテレビの画面には深夜ドラマ。
深く青い画面。
男の人がふたり、何やら言い争っている。
内容をちゃんと聞いていたわけではないけど
一人の嘘を片方が責めていて、やがて画面には信じられないような光景が。
「ちょっと、なに、えー!?こんな事テレビでやっていいの???💦」
びっくりしたけど内容はわからないし目の前に家族はいるしで
それはそのまま放置してまたMacに目を落としたのだった。
その時は。
それからなん十分か後、さて良い加減に寝なくてはと思ったのだけど
さっきテレビで見た光景がどうしても気になって。
ドラマのタイトルは「ポルノグラファー」。
確かにこのタイトルは見たことはあった。
しばらく前にドラマを紹介するサイトで見かけてて、インパクトあるタイトルだという認識はあり…
私はドラマをリアタイで見ることが最近殆どなくて、だいたい都合のいい時間にパソコンで見逃し配信、というのが常。
寝室のベッドにMacを持ち込んで早速、Tverで見たのです。
ポルノグラファー、5話。
私の初見がこの5話で、どれだけの衝撃を受けたか見た人なら充分わかると思う。
BLというもの自体、私はあんまり知らなかったんだけど、そういうくくりのドラマであるということもわからないくらいこのドラマに惹きつけられてしまった。
ポルノ小説家と普通の大学生がなぜか出会ってその先に何が…
このお話の全貌がどうしても知りたくて
その場で配信サイトに登録、1話から最後6話まで、一気に見たのです。
(配信で見ると、さっきTverで見た場面、地上波版よりさらにすごかった…💦)
通して観たら夜が明けてた。
「役者さんってすごい」
うまい役者さんはいくらでもいるだろうけど
ここに出てる人たちは…ほとんど無名と言っていい役者さんたちはその役を確かに生きていた。
とても現実感のないキャラクターでストーリーなのに。
ここのところ、普通の若い男女の恋愛ドラマに殆ど興味を失っていた私の
それは心臓の真ん中に打ち込まれた氷の銃弾のようだった。
実はこの日のライブ前、私は気功をやる友人に背術を受けていたのだ。
彼はおそらく私の
愛情や性を司るチャクラを開き、根底にあるパワーを整えてくれてた。
施術は体の芯を自覚させ
お腹のあたりは熱くなり、それはもうびっくりするような体験だった…
思えば受け取る準備はできていたんだ。
抗えるはずはなかった。
撃ち込まれた氷の弾丸は
溶けて私の中で沸騰して消えた。
そして私が引き寄せられた重要な理由は
主人公のポルノ小説家の"創造することの苦悩"。
行き詰まり全てがめちゃくちゃになり
どうにもならなくなった挙句
人を傷つけることによって自分を罰していく。
そしてそれが穏やかに救済されていく。
愛によって。
全てを肯定することによって。
無知はある時は人を傷つけるけれど、知らないことが安心感を与えることはある。
同級生の編集者は、書けないなら無理に書くことはないと言った。
もちろん彼のことを考えての、優しさから。
創造者のジレンマを何も知らない大学生は「書けます」と断言した。「大丈夫です」と。
創造する人が本当に死ぬ時はそれをやめる時なのだ。それを諦める時。
作家が生きるということは書くということ。
芸術そのものが生であり性なのだ。
大学生は知らず知らずのうちに作家の命を救った。愛によって。助けたいという意思によって。
そうして私はこの物語の虜になった。
もちろん美しい竹財輝之助という俳優がいなければここまで深みにはまることはなかっただろうけど…。
音楽を作る辛さと幸せを知っている私は作家の苦しみをひと事と思えなかった。
私も誰か、助けてくれないかしら(笑)
そしてドラマを見た後本屋さんに走り
ポルノグラファーの前日譚である「インディゴの気分」の原作コミックを読んだ私はもう
ここから逃れられないことを知った…。
愛と憎しみ。憧れと蔑み。
さらに深い深い沼がそこにありました。
すごい。本当にすごい。
丸木戸マキ先生はマジ天才。
長くなったのでまたそれは別の機会に。(笑)