『すじぼり』 色のない世界に鮮やかな赤
最初に『すじぼり』というタイトルを見たときは
おそらく刺青のアウトラインだけ入れて色を入れられないままの半人前の主人公というのを想像したのです。
ところが色を入れるどころではなく
そのまんまくっきりとした黒い筋のまま
狂い生き抜いた姿がありました。
彩るのはただ一色、鮮やかな血の色です。
藤原季節さん初めての主演。
とんでもない作品に出られたんだなと改めて…。
わめき、泣き、吐き、鼻水よだれ垂らし
人間こんな声出るんだって恐ろしかった。
見てて辛くて苦しくて
でもいっときも目をそらすことができない。
1話の完璧な薄っぺらさから最後のクライマックスまで
恐ろしいのが全く人間として成長することなく
ただ一回踏み外した階段から転げ落ちるのが止まらないだけで
どんどんどんどん、わめきながら落ちていく。
生きていたくない死にたいと言いながら
どんどんどんどん、生きてる実感が増していく。
大人たちは根本的に誰一人として彼を助けず
ロクでもないことばかりする。
父親にしても速水組の彼らにしても。
それでも縁(よすが)を求めて求めて…
一人で生きていくことができないのに
寄りかかれるものが次々と死んでいく。
1話でのバカップルのセックスシーンと
最後の方のそれでは全く違うし
順番に撮っていったのかどうかわからないけど
彼の顔つきがどんどん変わってくるのがわかる。
身体を絞りきった背骨の浮いたすじぼりの背中は
私のみぞおちあたりに重いショックを与える
そして否応無く衝撃的なクライマックスへ。
正直、8で終わらせず…9と10の日本統一とのコラボ…。賛否あると思う。
でも綺麗に終わらせない小林監督の
"止まらない狂気"が私を納得させてしまう。
生まれなおし人間らしさを捨て獣のような亮。
でもメイキングでの演出ぶりを見て
この現場で一番狂ってるのは監督なんだと確信した…
止まれなかった。
それにみんなついていくしかなかったんだと。
高橋和也さんの存在感たるやすごいものがあって
えーっと、男闘呼組でしたよねという私のイメージを完全に覆し
なにやら楽しそうな六平さん、格闘技プロたちのアクションの気持ちよさ
挙げたらきりがないけど
とにかく季節くん。
最初にして究極の現場を体験したんだと
おそらくこんな怖い現場はそうないと思うけど
すごくいい顔に撮ってもらえたよということは強く言いたいです。
素晴らしく最低で最高な亮でした!
配信発表会での季節くんが全く違う顔になってて驚いた…
多分いつもはこうなんだよね
端正な顔立ち、優しい雰囲気で。
実は私本当にダメだったんです
痛そうなのも怖いのも吐くのも(笑)
これからも多分避けるだろうジャンル!
最初で最後の任侠ものかも。
あーでも小林監督が気になりすぎてるのは事実なんで
わかんないよね、大好きになるかもノワールが(笑)
U-NEXTにて独占配信
公式HP
https://sujibori.com/