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【種市篤暉のデータから見る】防御率の“落とし穴”とは!?


1.はじめに

プロ野球において、一般的に投手の能力を評価する上でよく用いられるのが「防御率」です。
しかし、セイバーメトリクス観点ではこの「防御率」は運によって左右されることもあるため、投手単体での能力を判断できないと言われています。
今回はそういった防御率の“落とし穴”に目を向け、種市投手のデータを用いて実例を示していきます。

2.今回使用する指標解説

ここでは、今回実例を示す上で使用するセイバーメトリクス指標の解説をしていきます。

①K%(strikeout rate)
意味:奪三振割合
計算方法:奪三振÷対戦打者
対戦打者に占める奪三振の割合である。
昨季リーグ平均は19.3%。

②BB%(walk rate)
意味:与四球割合
計算方法:与四球÷対戦打者
対戦打者に占める与四球の割合である。
昨季リーグ平均は8.0%。

③HR/9(home runs allowed per 9 IP)
意味:9イニング当たりの被本塁打
計算方法:9×被本塁打÷投球回
9イニング当たりの本塁打を打たれた頻度である。
昨季リーグ平均は0.69。

ここまでが、投手の独立した能力を表す指標です。

④FIP(fielding independent pitching)
意味:与四死球、奪三振、被本塁打による投手評価
計算方法:(13×被本塁打+3×(与四球-
故意四球+与死球)-2×奪三振)÷投球回+定数
※定数=リーグ全体の[失点率-{13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与死球)-2×奪三振}÷投球回]
守備の関与しない与四球・奪三振・被本塁打という3つの項目から、守備から独立した失点率を推定・評価した指標。
分かりやすく言うと、投手単体の力のみで求められる擬似防御率です。
昨季リーグ平均は3.50。

そして、以下の2つが投手単体ではコントロールできない「運」を表す指標。

⑤DER(defensive efficiency ratio)
意味:本塁打とファウルを除く打球のアウト割合
計算方法:(打席−安打−四球−死球−三振−失策)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振)
本塁打を除いてグラウンド上に飛んだ打球のうち、どれだけを野手がアウトにしたかを表す指標である。
数値が高いほど運に恵まれたということになる。
昨季リーグ平均は.707。

⑥LOB%(left on-base percentage)
意味:出塁させた走者の非帰還率
計算方法:(安打+四死球-得点)÷
(安打+四死球-1.4×本塁打)
出塁させた走者を生還させなかった割合である。
DER同様、数値が高いほど運に恵まれたということになる。
昨季リーグ平均は75.9%。

3.ホーム/ビジターの成績比較


ホーム/ビジターの防御率比較

これだけを見ると、防御率が3.00近く低いホームでの成績の方が断然優秀のように思えます。
しかしセイバーメトリクス指標を見ていくと、
以下のようになります。


ホーム/ビジターのセイバーメトリクス指標比較

K%、BB%はビジターでの方が優れており、全体的なFIPもビジターが低くなっています。
防御率ではホームよりも3.00ほど高かったビジターが、セイバーメトリクス的視点で見るとホームよりも優れているです。
どうやらDERやLOB%がホームの方がビジターよりも大きく高く、運に恵まれていたことがそのまま防御率に直結したようです。


4.さいごに


今回は、防御率だけでは投手単体での能力を示せないということを示しました。
皆さんもこれからは防御率などの表面的な数字だけでなく、FIPをはじめとするセイバーメトリクス指標にも目を向けてみてはどうでしょうか?
きっとプロ野球を観る上での視野が広がるはずです。

写真:日刊スポーツ
(X:https://x.com/nikkansports?s=21)

データ:DELTA社
(X:https://x.com/deltagraphs?s=21 )



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