悲劇の天才 BES③
2009年の逮捕から約3年。2012年にSCARSのライブで、久々に公の場に現れたBESのラップには、かつての勢いはみられなかった。薬物の影響か、体はむくみ、何よりも活舌が悪くなっていた。そして、1曲を終えるごとに、肩で息を切らし、体力が著しく低下していることを伺わせた。残念ながら“あのBES”はもう戻ってこない…その日のパフォーマンスを見て、そう感じざるを得なかった。ただ、誰よりも本人が、己の不出来に、忸怩たる思いがあったに違いない。
“いつからか空の逆を眺め歩いた 気付けば背中曲線描いた”
まさにそんな感じで、この頃のBESは自信を喪失していた。12年のBーBOY PARKでのパフォーマンスがそれを物語っていた。わずか1曲で、息を切らしながら「オレもうラップ辞めるぜ!もう限界限界」と吐き捨てるように言い放って、半ばヤケ気味でステージを降りた。思い通りに行かない自分自身に心底、嫌気が差していたのだろう。
ミックスCDのリリースもあったりしたが、復活したとは言い切れない内容であった。そして程なくして、2回目の逮捕が報じられる。この時、もうBESのラップは聞けないかもしれないと覚悟した。
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